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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
王都突入へ

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45 海辺の領主をもてなせ

 ニストニア家の当主、ソルティスは奥方と娘を連れてきていた。


 息子は所領に置いてきたというから、暗殺されて家が絶えることを恐れたのだろう。

 かといって、一家でどうぞと言われていて、自分しか来ないわけにも行かない。だから、女は連れてきたというわけだ。たしかに女は暗殺されない可能性が一般的に高い。


 俺はケララと共に、ソルティスとあいさつをした。奥方や娘はラヴィアラに案内を頼んでいる。


「遠方からわざわざお越しいただきありがとうございます。ニストニア家とは仲良くいたしたいと思っておりましたので。隣にいるのは家臣のケララです」

 ケララも一礼をした。


「いえ、こちらこそ、伯爵と皇太子殿下にお招きいただき光栄です……」

 ソルティスの表情は硬い。というより、むしろびくびくしているような印象さえあった。


「俺は隠し事が嫌いなタチなので思っていることを話しますが、命を狙われているのではと思われていたのではありませんか?」

「そ、そのようなことは……」

 あまりにも俺が率直に言ったので、向こうもあわてたようだ。


「それは無用な心配です。なぜなら我が身は皇太子殿下に仕えております。その殿下の顔に泥を塗るようなことは絶対にできません。もし、そんなことをすれば、周囲の領主たちはみんな、去ってゆかれるでしょうから」

「なるほど。それは、そうだ……」


「まずは殿下にお会いいただきたい。その後で、城をケララと一緒にご案内いたします」


 ハッセも皇太子としての態度がずいぶん板についてきたらしく、鷹揚としていた。

 対面の部屋の調度類も高価なものを取り揃えている。たんに皇太子と名乗っているだけではないということを感じさせるものだ。


 その場にはハッセの七歳になる娘もいて、堅苦しい場もなごんだ。


 さて、これで儀礼的な仕事は終わった。後はケララのエスコートに従うだけだ。


「ケララ・ヒララと申します。それでは、まずはこのマウストという街がよく見える城の最上階にご案内いたします」

 最上階の展望施設からは、水路が何本も通っているマウストの景色がよく見えた。


「まるで、王都のごとくご立派な城下ですな……」

 ソルティスはあらためてその景色を見て驚いているようだった。


「王都のようというのはおおげさですが、お褒めにあずかり光栄です。おそらく人口は一万は超えているかと思います」

「一万を……。それは、やはり大都市ですな……」


 俺の支配領域が広がるに連れて、人口も加速度的に増えていた。


「皇太子殿下をお迎えするには、それなりの格式が必要ですので。どうにかその体裁が整って、ほっとしております。では、ケララ、次の場所に案内してくれ」

「はい。承知いたしました。それでは武具の部屋に」


 ケララが向かったのは、今回のために作った武具のコレクションルームだ。

 領土が広がったことで、領内に大きな神殿がいくつも含まれることになった。そこには、戦勝祈願などで最高品質の武具が奉納されたりする。そういったものを集めてきたのだ。


 床も精緻な紋様の絨毯を敷いている。武具の装飾もあわせて、実に鮮やかな部屋だ。


「なんと……。こんなに大量のものを……」

「オレの本業は、所詮軍人ですので。家臣にも無骨者が多く、絵画や骨董品ばかり集めると、じゃくになったと文句を言われますので」


「王宮にもこのような部屋はないかと思います……」

「王宮には届かないまでも、殿下のために離宮と呼べる程度のものは揃えないといけませんからな」


 それから先も、ケララは丁重にソルティスをもてなした。

 とくに食事の席では山海の珍味を取り寄せて、様々な種類の酒を並べた。


 ケララが酒をソルティスに注ぐ。

「各地の酒をご用意いたしました。味の違いをお楽しみください」

「うむ、ありがたいことです」

 だんだんとソルティスの緊張も解けているようだった。


「それと、今から王都から来た踊り子の舞をご覧いただきます。前にご注目ください」

 カラフルで艶かしい衣装の女たちが、見事な舞踊を披露する。


「ケララ殿、それと伯爵、このような贅沢をしたことは、生まれてこの方ありません。これが王侯と肩を並べる者の力なのですな」

 ソルティスもだんだんと力の違いを理解してきただろう。


 しかし、肝心なものが一つ残っていた。


「明日ですが、兵の行進練習をご覧ください。皇太子殿下を王都にお送りするために、我が主アルスロッドは心を砕いております」

 ケララは王都のきれいな発音でそう言った。


 そして翌日。

 ソルティスは城の高みから、俺の親衛隊の行進と演武を見せつけられて、本当に足をふるわせていた――という。

 というのも、俺も間近で演武などを見ていたからだ。俺がいるほうが、兵のやる気も上がるからな。ソルティスの話していたことは、すべてケララから聞いた。


「ここまで軍隊というのは規律正しい動きをさせることができるのですか……?」

 そう、ソルティスは言ったという。

「これには秘訣がございます」


「秘訣?」

「我が主は幾度も戦場を駆け巡り、武功を挙げてきた人間です。数で劣りつつも敵を倒したことも一度や二度ではございません。そのような者に率いられ、戦うことは、戦士にとっては誇りそのものです。ですから、彼らは練習といえども、おろそかにはしないのです」


 ソルティスは息を呑んだらしい。


「それと、殿下をお送りする王都への道の途中に、シャーラ県があるそうです」

 まさにニストニア家がある県だ。

「もしも、ニストニア家の方々のご協力があれば、我が主も心安いかと思います」


 それが脅しであるということはソルティスにもわかったはずだ。

 だが、ケララのもてなしはそういった反感を買うようなものではない。


 そこで、ケララはしっかりと頭を下げた。俺が聞いた報告ではそうだ。

「臣下として身勝手なことを申しますが、どうか、アルスロッドに力をお貸しいただけないでしょうか?」


 ソルティスは俺に会いたいと言った。そして、俺と合流した際に、シャーラ県に入る時は道案内をすると約束したのだ。


「皇太子殿下のためのご決断、ありがとうございます」

 俺はソルティスの手をしっかりと握った。


 これで戦わずして、ニストニア家と海軍が手に入った。

 次は本格的にアントワーニ家を攻めるぞ。

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