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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
隣の県を攻略

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35 新しい側室と ナグーリ県攻め

 俺がフルールに感心していると、セラフィーナが地図をふさぐように立った。

「旦那様、ここはわたしの部屋よ。それはご存じかしら」

「ああ、気がきかなかったかな。悪い、悪い」


「そういうことじゃないの……。軍議ならば、フルールさんの部屋がいいかと思うんだけど」

 ちらっと、セラフィーナがラヴィアラのほうを見た。

「はい、ラヴィアラもそのようになさるのがよいかと……」

 ラヴィアラも伏し目がちにそう言った。


 二人の顔を見て、意図は察した。

 城内の女性の部屋に城主である俺が行くということは、つまり、そういうことだ。


「わたしもラヴィアラさんも身重で、あまり長々と語らうのも疲れてしまうし、今日はお休みさせていただきたいの。ナグーリ県のことはわたしもわからないし、フルールさんと話すべきでしょう?」

 口ではそう言っているけど、セラフィーナの顔は寂しそうだった。


 おそらく、セラフィーナ自身がフルールを俺の側室に選んだのだろう。俺もセラフィーナとラヴィアラのことを気づかって、追加の側室を置いていなかった。


「フルールさんのご迷惑でなければ、もう少し聞きたいことはあるな」

「何も異論はございません」


 貴族の姫の手本のようにフルールは静かに答えた。

「それでは、どこを攻めるのがよいか、もう少し話をさせてもらおう」


 部屋を移って、もう一つ質問をした。

「あなたの兄上はこのことをご存じということでよろしいのかな? あなたの兄上を怒らせるようなことになるのは避けたいのだが」

「伯爵家に嫁ぐことに反対する理由はないと別れる前に申しておりました。それから、伯爵の奥方様に夜伽のことはうかがっております」


「では、セラフィーナの策にはまってみようか」


 そのまま、俺はフルールを抱いた。

 フルールが献身的で健気であることがすぐにわかった。小領主のもとに産まれて、いかに一族の土地を守るべきか考え抜いてきたのだろう。


「フルール、ウージュ家は俺に従っている限りは安泰だ。それを約束しよう」

「はい、どうか、一族をよろしくお願いいたします」


 一族の命運がその小さな肩にかかっていると思って長年生きてきたのだろう。少し、フルールの表情は硬い。

 俺はその頬に手を当てた。

「もっと、楽しそうな顔をしたほうがいい。君は自分のことを亡国の姫とでも思っているかもしれないが、君が笑っていることを咎める人間はここにはいない」


「ありがとうございます。こんなにやさしい言葉をかけられたことは、もう何年もありませんでした……」

 これまでの不安な少しは解けたのか、フルールはぎこちなさが少し残る表情で笑った。

「そう、その顔のほうがかわいい」

 俺はフルールの髪を撫でながら、胸にかき抱いた。


 数日後、俺はフルールを正式な側室に定めた。



 ナグーリ県を攻める策は整った。

「まず、先遣隊で敵地の内奥にあるサウラ砦を落とす。山が迫っている谷あいの土地だ。その近くで決戦ということになる」

 俺は徴兵の命令を県全域に伝えると、兵が集まる前から親衛隊などの一部だけで北上した。

 途中、ノエンが治める北ヶ丘城に入った。ここが俺の県の最北端と言っていい。


「やけに少数でいらっしゃいましたね……。隣県を攻めるからには全軍で来るのかと……」

 ノエンは少々面食らっているようだった。


「どうせ、ここを拠点にして、兵が集まってくる。小さな砦を落としていくのに大軍は必要ない。むしろ、ゆっくりしていれば後詰の兵を出される」

 多くの兵がいるのはそこから先の話だ。まずは砦を落としていかないと話にならない。


 北ヶ丘城の副将のような立場のマイセル・ウージェもその場に参上した。

「妹に目をかけていただき、ありがとうございます」


 その気概に満ちた顔を見て、一族の再興を懸けていることがよくわかった。戦功を挙げるぞという気持ちが伝わってくる。


「妹さんのおかげで、背中を押された。この戦、必ず勝つ。そなたも先遣隊に加わってくれ。ここはノエン一人で充分だ」


 七百ほどの兵で俺たちはナグーリ県に侵入した。

 途中、いくつか敵の砦を攻略していった。

 どこもフォードネリア北部の小領主の侵入を防ぐ程度の意味しかなかった小型のもので、ほとんど開け放しに近かった。完全にもぬけの殻だったところもある。


 元の砦にこちらを止める機能がないのは当然だ。県一つを持っているような勢力は本来想定されていなかったのだから。

 問題は、砦の補修や改造がなされてないことだ。

 ということは、領土の隅でこちらを防ぐ意図を敵は持っていないらしい。


 進んでいるうちに遅れてきた兵などが俺のところに加わって、こちらの総数は千人ほどになった。

 そのうえで、ナグーリ県中央部の奥まったところあるにサウラ砦を落とした。小高い山の上にある砦だったが、ここもほとんど戦わずに敵兵は逃亡した。


 ここからが真剣勝負だ。

 俺は親衛隊たちと軍議を開いた。


「この先、峠をいくつか越えれば、ナグーリ県北部の平野部に入る。そうすれば、一気に敵の本拠モルカラ城にも突っ込める」

 モルカラ城は海に面した港町だ。ナグーリ県は北部が海と接しているから港が多い。


「ただ、この峠を抜けるまでに、いくつも砦がある。明らかに砦の密度も数もこれまでの比ではない。改修工事も大々的にやっているようだ。これの意味はわかるな」


 白鷲隊のレイオン、赤熊隊のオルクス以下がうなずいた。


「敵は我々をここで孤立させて滅ぼすつもりということですね。この砦の裏側に敵が回り込めば、挟み撃ちという格好になります」

「レイオンの言うとおりだ。過去にもこういった作戦がこの地で使われたことがある」


「もし、このまま無理に進もうとしても、砦でそれぞれこちらが消耗して、疲れて平野に出た頃に、向こうの本隊が叩くってことですな。それで後ろに逃げても、別働隊が回り込めばこちらを待ちかまえることができますな」

 オルクスが手で顔を押さえながら言った。


「そういうことだ。まあ、敵はもうちょっと多くの兵がこの砦に詰めてくると思ってただろうが」

 大軍が入ると逃げ場がなくなるような土地だ。なので、多くを意図的に後方支援に回した。これで、敵の別働隊を撃破させることができる。


 俺も考えて、行動している。一気に敵を滅ぼす。


 ――やけにはりきっているな。まあ、敵の居城が内陸部にあるわけでもないし、手は打てそうだ。美濃攻めより容易い。

 そうなのかもな。あんたがいるんだから、俺はあんたよりとっとと隣国を滅ぼしてやるさ。

 俺はオダノブナガに言った。

次回、本格的に敵を攻略します!

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