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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
「水の城」築城

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33 敗者の人材登用

 フォードネリア県での争いが終わったので、俺は宿舎に一日とどまって、重臣と会議をした。


「まず、今回の戦でのみんなの活躍をねぎらわせてくれ。華々しい成果の数々だった」


 一同も勝利の後だから、実に気持ちよさそうだ。戦勝後は酒を飲むことも認めているから、赤ら顔の者もいる。赤熊隊のオルクスなんかはもともと赤ら顔なので、酒のせいかどうかよくわからないが。


「とくにノエンは的確に初戦を勝利で飾ってくれた。あれで、そこからの戦争がずいぶんと楽になった。まともに立ち向かう敵もかなり減っただろう」


 ノエンもなかなか誇らしげな顔をしている。


「それで、投降した敵一族の処遇だが、主戦論者が誰だったか確認したうえで、領主ともども処刑するつもりでいる。残りの者はこちらの軍に編制する。女子と子供などはセラフィーナのところに移して、世話をさせる――つもりではいる」


 籠城を選んだということは徹底抗戦の意図があったということだから許さなくてもおかしくはないが、そこから先は家臣たちの反応を見て決めようと思っていた。

 最後に戦ったのはマイセル・ウージェという小領主だが、ほかの領主と比べれば、多少の骨はあった。将として使えそうなら、使ってもいい。


「意見がある者がいれば、何でも言っていいぞ」


 赤熊隊隊長のオルクスが「へい」と手を挙げた。

「何人か敵の中に動きがいいのがいました。赤熊隊に加えてくだせえ。そこそこ兵の練度も高かったですよ」

「わかった。補充はお前が好きにしていい」


 次にノエンが手を挙げた。

「恐れながら、マイセルという子爵はそれなりに気骨のある男。お許しいただければ、我が旗下に加えて、将として使いたいのですが」

「そうか、お前が申し出てくれて、ある意味ちょうどよかった」

 俺の計画と上手くリンクする。


「ノエン、お前マイセル・ウージェが立てこもっていた北ヶ丘城の城将とする」

 北ヶ丘城というのは、通称だ。まさにその城が県の北の端に近い丘に位置しているからだ。その丘から北を望むと、段丘の下にナグーリ県が見える。


 かなり重い役目だからか、少しノエンもたじろいだような顔をした。


「ここが俺たちの次の戦いで、最も大事な場所の一つであることは言わなくてもわかるだろう? ナグーリ県のレントラント家と戦うには、ここをしっかりと押さえておく必要がある。敵は必ず、近いうちに攻めてくる。こちらが想像以上に早く、県を統一したから、事態の深刻さにも気づいただろう」


 おそらく、これまでのスピード感なら、もっとゆっくりでも救援が間に合うと連中は考えたのだろう。あるいは、救援が無意味と思って、最初から見殺しにするつもりだったか。

 どちらにしろ、次はナグーリ県との戦いになる。


「なので、この北ヶ丘城には重臣を入れたい。だが、親衛隊である赤熊隊や城鷲隊を俺から離しておくのはおかしいし、ラヴィアラには腹に子がいる。シヴィークも――」

「私は歳とはいえ若い者にはまだ負けぬぐらい動きますぞ。ナグラード砦の日々と比べれば、この土地ぐらい天国みたいなものです」


 先に言われてしまって、俺は苦笑いした。

「それはわかっているが、まあ、俺も親がいないからな、年配者には孝行をしたいんだ。どうせ、また戦争に出ないといけなくなる。それまではマウストで休んでいろ」

「すべては、伯爵に従います」


 シヴィークは堅苦しくうなずいた。

 ちなみに、シヴィークの息子――小シヴィークと俺は呼んでいる――ももう三十代で、同じように俺に仕えているが、親父の堅苦しいところにはへきえきしているようだ。


「というわけでだな、ノエンにひとまずこの三郡の全権を任せる。アメとムチでしっかり統治してくれ。どうせ、そのうち鎧に身を包むことになるだろうが」

「伯爵の信頼にお応えできるように尽力いたします……」

 ノエンは深々と頭を下げた。

 重責なのは間違いないが、その分、気合いを入れてやってくれるだろう。


 シヴィークが老齢なのは事実だし、今後のことも考えて、使える将の数は増やしておきたいのだ。


「よし、では、せっかくだし、マイセル・ウージェ子爵も呼んでこようか」

 しばらくして、その場にマイセル・ウージェが引き出された。


 思った以上に若い男だ。まだ二十のなかばぐらいだろう。入ってきた時から神妙な表情をしていた。

「伯爵に逆らった責任を取って死ぬ覚悟はできています」 


「一つ質問したい。この勝負、最初からそちらに勝ち目などなかったはず。なぜ、降伏しなかった? あるいはほかの一部の領主がやったようにナグーリ県に逃亡するということもできた」


 領主の家臣まで含めればナグーリ県のレントラント家を頼みに落ちていった者はそれなりの数にのぼる。

「私は代々、この土地を治めてきました。それを合戦もせずに明け渡すということはできませんでした。領主というのは命を賭けてその土地を守るから、民よりも偉いのです。すぐに逃げ出すような者が民を支配していたというのは恥ずべきことです」


 なるほどな。骨のある人間であることは確かだ。

「気に入った。そなたはそこにいるノエン・ラウッドの下で将として働け。子爵の地位は一度、召し上げるが、働き次第ではこれまで以上の土地を手にすることもできるだろう」


 マイセルという男は意外な表情をしていた。

「逆らった者は当然、殺すと思っていたのですが……。この遠征では、そのような戦いをしていたはず」

「それは相手による。役に立つ者がいれば取り立てるし、無能であれば殺す。それだけのことだ」


 ――そうだ、そうだ。利用価値がある間は武将は使ったほうがいい。松永久秀が一度裏切っても覇王は許したぐらいだからな。まあ、久秀にはもう一度裏切られたのだが……。

 また、オダノブナガが何か言っていた。

 ――荒木村重も許すつもりだったのだが、かたくなに拒否したのだよな……。どうして、あんなに裏切るのだ……。

 おい、あんたの愚痴なんて興味ないぞ。


 ――と、とにかく使える者は使え。でなければ広くなってきた領土を治めることはできんからな。

 そこはそのとおりだな。


「このマイセル・ウージュ、ご温情に感謝して精一杯励みます」

「温情ではない」


 俺は笑って言った。そこまで甘くはない。

「使えると思ったから使うだけだ。だからこそ、ここからはお前が自分の価値を示す番だ。自分の存在理由をしっかりと作れよ」

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