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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
「水の城」築城

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26 町作りと吉報

2万5千点を超えました! 本当にありがとうございますっ!

 大規模土木工事だったが、マウスト城築城は順調に進んだ。

 といっても、城だけを作ろうとしたわけじゃない。城下も同時に改造する。


 富に関しては、同業者組合を停止して、誰でも市を出して、店を構えることを許した。

 過去に自分の領地だった三村やネイヴルでやったように、利益を上げた者から税をとるというシステムに大きく切り替えたのだ。


 組合があると、そこに所属しないと店を出せない(もちろん加入に審査や金がいる)。そのうえ、価格調整なども内部で行うから、もっと安く流通するものも高くつく。


 これは業者を保護するのにはいいし、その組合から結局は領主も金を取れた。

 けれど、これが役立つのは都市の規模が大きく変わらない時期までだ。


 もともとマウストを県都にするという布告はしていたし、人口はどっと増えていった。そうなれば、商売をしたい者も増えるし、店や市場の数も増やさないとやっていけない。そういう都市に発展を阻害する組合は必要ない。


 組合からの反発はあったが、「俺はいわばマウストの侵略者だ。前の領主のやり方は踏襲しない」と一蹴した。

 

「それにもともとこの地で営業をしていた連中は、その経験が必ず利益を持つ。組合に納める額が減った分、得をしたと思ってくれ。儲けた分は、税として払ってもらうけどな」


 組合に反発するだけの力はない。すごすごと引き下がっていった。


 税は貧しいものから取ろうとしても上手くいかないし、取れる額も知れている。それなら儲けさせて、そこから大きくいただく。


 入った金で、また労働者を雇う。

 ある程度は農民を徴発したりもしたが、従来より多目に賃金は支払った。

 これもマウストという都市だからできることだ。もともとの人口が多いから、本拠地にすれば、ネイヴルよりはるかに多くの富を吸い上げられる。


 労働者が増えると、その労働者目当てに商売をしようとする者がまた増える。上手い循環を作れているはずだ。

 そういったことを続けていると、一つ、また力を授かった。


 ――特殊能力【覇王の見通し】獲得。都市や交易に関する経済感覚がオダノブナガ並みになる。酩酊など意識混濁下でない限り、常時発動。


 なんだ、これ……? これって、能力なのか……?


 ――説明をしておいてやろう。

 また、オダノブナガが声を出してきた。


 ――お前の言うとおり、これは能力というより、お前に対する評価だな。お前の先見の明がこの覇王と遜色ないものと認めたわけだ。なので、とりあえず特殊能力ということにして、お前に授けた。

 もしかして、この特殊能力って、お前が勝手に作成してるのか……?


 ――そうだ。なにせ、この職業は例外的なもので、この世界にお前しかおらんらしい。なので、職業のほうも試行錯誤なのだ。

 どんな特殊能力だよと思うが、オダノブナガなりに俺を評価してくれているんだろう。



 完成までとなると時間がかかるが、俺はそれを待たずにマウストに正式に引越した。ひとまず、マウスト近郊の丘に仮の拠点を置いた。


 これから移り住む水に浮かぶ城とはかなり違った趣だが、この仮の拠点も悪くない。

 ここからだと町が発展していく様子がよく見えるからだ。


「どこにいたのかと思ったら、こんなところに来てたのね、旦那様」

 セラフィーナが俺の横に並ぶ。ちょうど心地よい風が吹いていた。

「遠目で見たからといって完成が早まるわけではないが、やはり楽しいんだ」


「わかるわ。それにしても、よい時期に築城を開始したわね。県を統一してからだと、他県の大領主を刺激してやりづらくなってたと思うわ」

「だな。県の各地から人員を集められるのも大規模な戦争をしてないからだ」


 俺は風でたゆたうセラフィーナの髪を手でいた。

 ミネリア領で会った時より、セラフィーナはずっと美しくなったと思う。


「今の旦那様が一番かっこいいわ。どこから見ても恥ずかしくない大領主だもの」

「奇遇だな。俺もセラフィーナがこれまでで一番かわいく見えてた」

「女は愛する殿方がいると、美しくなるのよ」


 今、ここには二人しかいないので、自然と言葉も甘いものになる。


「実はね、旦那様、今日は重大な報告があって、居場所を探していたの」

「重大な報告?」

 少し、俺は身構えた。

「よくない話じゃないだろうな?」

「逆よ。すごくいい話よ」


 いったい何だろう。

「セラフィーナの父が大勝したとか?」

 そう言うと、セラフィーナはわざとらしく頬をふくらませた。

「旦那様とわたしの間の話よ」


 そうなると、自然と答えはしぼられてくる。

 まさか、まさか……。


「こ、子供ができたのか?」

 はにかみながら、セラフィーナはうなずいた。


「でかした、セラフィーナ!」

 俺はすぐにセラフィーナに抱きついた。

 跡継ぎがいないことが多少、不安だったのだ。しかし、その不安もこれで解消された。


「男の子だろうか、女の子だろうか」

「まだわかるわけないでしょ。でも、どちらにしても王になっても恥ずかしくないように育てるつもりよ。旦那様が王になると私は信じているんだから」

「そうだな。県一つだなんてもので満足したりはしないからな」


 こんな戦争だらけの時代を俺の手で終わらせてやる。

 十代なかばの俺はいつ戦争で死ぬかとびくびくしていた。あんなみじめな思いをする人間を出ないようにするには、誰かが王国を統一しなおすしかないのだ。


 おそらく、そのためには大きな戦争をいくつも経験することになるだろうが――やってやる。

 県一つの領主で俺は終わるつもりはない。


「じゃあ、しばらくはセラフィーナは静養してないといけないな。くれぐれも健康には気をつかってくれ」

 お産が悪くて死ぬ女も珍しくない。出産は命懸けだ。

「心配しないで。わたしの職業は聖女よ。赤ちゃんにも加護があるはずよ」

「セラフィーナの体だって心配だ」


 あとで県の神殿で片っ端から祈りを捧げさせないとな。

 でも、今から心配ばかりしてもしょうがない。今は喜ぶべき時だ。


「早速、重臣に伝えておこう。くれぐれもセラフィーナに心労をかけることがないようにって…………そうか、重臣と言えば……」

 まずラヴィアラの顔が思い浮かんだ。


 子供ができたこと自体は間違いなくうれしいが、あいつに言うと、微妙に当てつけっぽいんだよな……。


 ラヴィアラとの間にはずっと子供ができていない。どこまで本当かわからないが、エルフという種族の血が入っていると、子供ができづらいという話もある。エルフは人と比べると、若い時期が長いから、人間ほど子供ができても困るということだろうか。


 それでも言わないわけにはいかないな。ラヴィアラを呼ぼう。


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