21 親衛隊の隊長
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さて、初戦はこちらの優勢だ。
このまま攻撃を続けさせてもらおう。
俺はその後も聖堂騎士団にじわじわと打撃を与えていった。
正面から戦えないと判断した敵は、小さな丘の砦にこもるようなこともしたが、こちらは着実に砦を一つずつ破壊していった。
村に陣を張った俺は、赤熊隊の隊長と白鷲隊の隊長を呼んで、褒め讃えた。
赤熊隊の隊長はオルクス・ブライト、赤ら顔で赤髪の蛮族じみた容貌の男だ。まさしく、赤熊隊という名前にふさわしい。
一方で、白鷲隊の隊長はレイオン・ミルコライア、エルフ出身の軍人で、もともと三十年近く傭兵をしていて、俺が三村の領主になった時に仕官してきた。この男も鷲のように鋭い目つきをしている。
「お前たちの活躍で、この戦いは順調に進んでいる。今後も油断せずに武功を挙げていってくれ」
「はっ! もったいなきお言葉! オレたちが必ず伯爵様に勝利をお渡しいたします!」
オルクスはよく届く大きな声で叫ぶように言った。
「白鷲隊の名を汚さぬように、戦い抜く所存でございます」
レイオンのほうは静かにそう言った。
「あの、ところで伯爵様、オレにはわからぬことがあるのですが」
豪放なオルクスが尋ねた。その態度にレイオンが「お前、伯爵様に対して聞き方というものがあるぞ」と顔をしかめた。
「かまわん。オルクス、言ってみろ」
「へい。どうして、戦場に財務官僚のファンネリアがおるんですか? 商人風情が陣中にいて何もやることなどねえと思うんですが」
たしかにここには財務官僚でワーウルフのファンネリアが同行してきてはいた。名指しされても、ファンネリアは控えている場所で、笑みをそのまま浮かべていた。
「ファンネリアも家臣だ。家臣がいても問題ないだろう。それに武力を持った商人だって過去にいくらでもいた」
「へい。それはわかっております。でも、ファンネリアはそういう山賊的な商人とも違うでしょう?」
「というわけだが、ファンネリア、お前から何か言葉はあるか?」
ファンネリアはその場でうなずくと、
「大きな戦争となると商人は付きものですから。長く対陣すれば、兵士も物を買わねばなりません。遊女や芸人の手配も商人がやります。なので、わたくしが来ておるのです」
「そんなことぐらい知ってるさ。そういう仕事なら、伯爵の官僚も務めるあんたじゃなくてもっと格の低い商人でいいんじゃないかと思ったんだけど、まあ、あんたが現場主義なんなら、それでいい」
オルクスはファンネリアがあまり好きではないみたいだけど、立場が違うのでしょうがないんだろう。
ぶっちゃけ、ファンネリアには重大な任務があるのだが、それはあまり口外できない。ファンネリアがその役を果たさずに勝てるならそれはそれでいいのだ。
――と、そこに斥候の兵が入ってきた。
「申し上げます! 聖堂騎士団のほうに動きがありました!」
「ふん! どこを攻めてこようと踏み潰してやるぜ!」
オルクスが怪気炎をあげた。その態度にまたレイオンがはしたないという顔をした。わざと俺が性格の違う人間を隊長にしたのだ。お互いにほどほどに競い合ってくれれば、刺激にもなるからな。
「それが……敵は立てこもっておりまして……」
斥候の顔色が曇った。
「どこの丘だ? 赤熊隊で一気に叩くぜ!」
「……丘ではありません。大聖堂です……。フォードネリア大聖堂です……」
その言葉にオルクスもレイオンもあっけにとられた顔をした。
「やっぱり、そう来たか。なりふりかまっていられなくなったということだな」
俺はため息をついた。
「フォードネリア大聖堂を焼けるものなら焼いてみろということだな。連中を攻めた過程で大聖堂に被害が出れば、こちらは県を支配する者としての資質を問われることになる」
「あいつら、大聖堂を守るのが名目のくせに、その大聖堂にこもるってどういうことなんだ! 結局、大聖堂より我が身が大事なんじゃねえか! セコい奴らだな!」
オルクスの言葉ももっともだ。本当に大聖堂が大事なら、その手前で戦えばいい。つまり、あいつらは大聖堂を人質にしているわけだ。
――なるほどな。騎士団とかいう連中も少しは頭を使いおるではないか。
オダノブナガはむしろ、そのやり方に満足しているらしい。敵が策士のほうが面白いのだろう。
――覇王ならばまとめて焼き討ちという手もとりたいところだが、今のお前が悪名を馳せるのはよいことではないな。評判が落ちれば、天下をとるのが遅くなる。
心配しないでも、もっときれいな手をとるさ。
「伯爵様、どういった手をとりましょうか……? 白鷲隊はいざとなれば、大聖堂に踏み込むつもりでございますが……。伯爵様への忠義のほうが大事でございますので……」
レイオンも隊長らしい発言をした。もう、親衛隊は十二分に活躍している。ここから先は別の手を使う。
「すぐに攻めていくのは得策ではない。ひとまず、降伏の勧告をしておこう。すぐに大聖堂を攻めるような人間と思われるのは俺も心外だ」
その場は一度、解散とした。
そのうえで俺はファンネリアを自分が詰めている屋敷に呼んだ。
「騎士団がどうして長く続いているか、よくわかった」
歴史書によれば、過去にも三度ほど聖堂騎士団は似た作戦で相手を撤退させていた。一番新しいものでも百年ほど前の例だから、向こうも多用はしたくないようだが、その余裕もなくなっているのだろう。
「教えのために戦うというのは、所詮口先だけですからね。彼らも領主でしかないのです」
「あの部隊を使うぞ。大聖堂に入ること自体はたやすいだろう。おそらく、実際に大聖堂の中にいる敵は少なく、ほとんどは前で槍でも持って座っているはずだ」
「はい。もちろん。そのためにわたくしも来たのですから。ところで」
ファンネリアがとぼけたように言った。たしかにその続きはどうでもいいような話だった。
「名前はどうしましょうか? 何か呼び名があったほうがいいのですが。わたくしもずっと影の連中とかいった言い方しかしておりませんでした」
ふっと、名案が浮かんだ。
「ラッパにしよう」
「ラッパですか?」
「そうだ、耳元でラッパを鳴らされれば驚くだろう? あいつらは敵を驚かすための存在だからな」
オダノブナガも俺の言葉を聞いて、きっと笑っているだろう。
ちなみに、作中で出てきたラッパとは乱破のことです。素破などのほうが有名かもしれませんが、忍者を意味する言葉の一つですね。ファンタジーなんで厳密性を求めてもしょうがないのですが、忍者という言葉が戦国時代にはなかったはずなので、こういう表現を使用いたしました。ウィキで見たら、戦国時代当時から「忍び」という言葉はあったようですね。




