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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
征西へ

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146 支配地域が倍増

 俺はカルク子爵を滅ぼした後も進撃を続けた。

 もともと、いくつかの領主がカルク子爵のところに集まって防戦していたこともあって、しばらくはほぼ抵抗もない。


 俺がやったのは戦争をすることというより、占領した町や村に所領安堵の書状を書いて渡すことだった。あとはとても抵抗できずに降伏してきた領主はひとまず人質をとって、自軍に引き入れた。

 この土地はあくまでも通過する場所ではなくて、俺の所領に引き込むところだ。それなりに丁重に扱う。


 たしかに地図を見ても、有力な領主がほとんどいない。まず伯爵クラスの大物が滅多にいない。大半が一郡を持っているかどうかの子爵クラスの領主だ。伯爵を名乗っている者でも内部に自立性が高い領主を抱えていて、大きな力をふるえない、中度半端な者がかなり交じっている。


 俺はそういった連中のうち、抵抗する者は徹底して叩きつぶして見せしめにした。

 幸いというか、見せしめにできるほどに俺の軍隊はやはり強力だった。ノエン・ラウッド、小シヴィーク、マイセル・ウージュといった将たちも長年の戦いで、優秀な指揮官に育っていた。たいした戦いを経験していない小領主など、物の数ではなかった。


 途中から俺は南の海岸沿いに兵を動かした。海岸沿いには、栄えている港町も多い。こういった都市を攻略して、自分の支配下に組み込んでいくのだ。


「アルスロッド様、あまりにも簡単に進んで、張り合いがないですね」

 ある日、逗留先の領主居館でラヴィアラにそんなことを言われた。

 窓からは海の先を行く帆を張った船がいくつも見える。海伝いに前王派の有力者も攻めてこれるはずだが、そういった動きもない。


「まあ、そう言うな。こんなところで苦戦しているようだと、逆にここから先が困る」

 こちらの攻めは順調に来ている。このままなら最低でも、サナド海峡に面したヤルグーツ県の東、ビルグンド県までは領することができるだろう。


「しかし、こちらの海はやけに穏やかですね。波が静かです。まるで湖みたいです」

 ラヴィアラにとってはなじみのない風景なのだろう。ということは俺にとっても同様だ。

「このあたりは島が多いからな。その島が一種の内海を作って、強い波が来ないように防波堤になっているんだ。だから、貿易用の船もたくさんやってくる。違う大陸の船だってやってくるらしい」


「へえ……ラヴィアラにとっては信じられないような世界です。ネイヴル郡からほとんど出ずに一生過ごすかもって思ってたぐらいですから」

「たしかに、ほんの二代、三代前はそうだったんだよな」

 あらためてラヴィアラが言葉にしたのを聞くと、遠いところまで来たなと愕然とする。


 田舎領主は自分の所領の周辺をうろちょろして死んでいく、それが少し前までの常識だった。せいぜい、王都に多少近い領主が王にあいさつに行くとかその程度のことだ。

 こんなに遠く離れたところまで軍を動かす者は長らくいなかった。ましてネイヴル家が海に面した所領を獲得するとかいったことも親だって想像もしていなかっただろう。


「やがて、この国すべてが俺たちのものになる。それぞれ、領主は任命しなきゃならないだろうけど形式上は俺が王になれば、全部俺のものだ」

「こうやってアルスロッド様と一緒に世界を旅して、そのとんでもなさを実感してますよ」


 ラヴィアラはわざとらしくため息をついた。

「本当にとんでもない人の奥さんになったものですね。エルフが海を眺めてるんですから。磯の香りを嗅いでいるんですから。ラヴィアラの一族で海を見た人って、多分いないんですよ」

「じゃあ、このあたりの港町の地名を姓に変えるか?」

「嫌です。アウェイユの森の一族ということに誇りを持って、アウェイユ家を名乗ってラヴィアラは名乗り続けます」

 ラヴィアラは子供みたいに頬をふくらませた。


「作戦を立てるのは時間がかかったけど、いざ動き出したらすぐだったな」

 前王派の掃討作戦は極めて順調だ。最終的には、敵の本拠地でどう戦うかというものになる。


「王様が戦下手で助かりましたね。これで一気にサナド海峡まで進軍されちゃうと、アルスロッド様の取り分が大幅に減っちゃってましたよ」

 ラヴィアラの言葉はよくわかる。まあ、でも、もしもを語っても意味がないも言える。


「俺が進軍したから、怖気づいて従った連中も多い。もし、ハッセが動いたら、また話は違ってたと思う。それこそ、どこかで戦死した可能性も捨てきれない」

 ハッセを殺せば前王派にいる以上、立身出世は約束されたも同然だ。しかも、征西軍の士気が上がらず、長旅で疲労もしているとなれば、敵も好戦的になる。


 俺がこれだけスムーズに動けたのは、一つは信賞必罰を徹底していることだ。以前からとっていたやり方だが、反抗した者を容赦なくつぶして、従ってきた者は土地の支配権を認める。


 こうやって、俺に逆らう気が起きないようにすれば、兵はとくに邪魔されることもなく、先へ先へと進める。

 それに俺の中核の常備兵は庶民から駆り集めた軍隊じゃない。職業軍人だから、士気が低下することもない。もちろん、庶民からの兵もそれなりにいるが、そういった者たちは主に後方支援だとか、直接戦闘と関係ないところで使っている。


 このままサナド海峡までの県を支配領域に組み込めれば俺の勢力範囲は実質、倍以上になる。

 それだけの土地を持っている勢力はほかにいない。前王派を倒しさえすれば、俺に逆らえる勢力は残っていないことになる。

 天下はかなりそばまで近づいている。

 だが、焦るな。俺の勢力が増しているのは誰の目から見ても明らかだ。あまり出すぎた真似をすれば、王都のほうから余計なことをされる恐れもある。あくまでも、俺はサーウィル王国の摂政として振舞うべきだ。


「さてと、いいかげん、客人が到着する頃合いなんだがな。まあ、せっかくだしのんびりしていくか。港町の風情を一日ぐらい味わってもいいだろ」

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