13 隣国侵攻
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俺は兵を招集すると、東に向けて進撃した。
ネイヴル子爵家(つまり、この俺、アルスロッド・ネイヴルの立場だ)は、郡都ネイヴルのあるネイヴル郡と隣のヒージュ郡半分を所有している。 残りのヒージュ郡とそれに引っ付いているキナーセ郡を持っているのがマール子爵家だ。
代々、こことは緊張関係にあった。たいていの場合、近接した領主は領土問題で対立するものだ。ずっと蜜月の関係が続くほうがおかしい。まずは、ここを滅ぼす。
攻める理由は何でもいいが、代替わりをしたのにあいさつに来なかったのが無礼ということにしておく。
こちらが出す兵力は四百。もう少し上積みすることはできたが、これぐらいのほうがいいのだ。
この程度の兵力なら、敵は不仲な隣国(厳密には国ではないが、この時代の領主は独立国みたいなもの)との小競り合いだと思うだろう。
ちょうど平地で両軍がぶつかることになった。
「シヴィークとラヴィアラに百人ずつ兵をつける。とっとと敵をつぶしてこい。まだ、俺が出るほどでもないだろう」
「はっ! ナグラード砦の地獄の日々と比べれば、これぐらいたやすいことです!」
「アルスロッド様と離れるのは少しだけ寂しいですけど……撃破してすぐに戻ります!」
二人ともやる気だった。
そのやる気のとおりになった。
敵の部隊は開始間もなく、どこからともなく飛んできた矢に大将を射られて、混乱に陥った。しかも、矢のはずなのに、大将の体は巨石で体を貫かれたようになって、即死していた。
確実に射手の職業で大幅にパワーアップしたラヴィアラだな。
安全と思われるようなところからラヴィアラは一撃を放つことができる。本来ならほぼ当たらないような一撃も、大将に刺すことができた。
敵の兵士は滅多にいないような大魔法使いがこちらにいるのではとおののき、農民の徴集兵らしい連中から逃げ出そうとした。指揮者がいなければ、兵など烏合の衆だ。
そこにシヴィークの歴戦の部隊が突っ込んだのだから、ほとんど戦争というより鹿狩りみたいなものだった。敵の大半はこちらと戦うことより逃げることを優先しているのだから、戦いにすらならない。
「ラヴィアラの弓、さらに精度が増しましたよ!」
なかば敵軍が消滅したあとに、ラヴィアラが戻ってきた。
「やっぱり、お前だな。あとで褒美をやる。そうだな、俺の領内のエルフとハーフエルフの統率権をお前にやろうか。これだけの武勇を見せれば、文句を言う奴もいないだろう」
ラヴィアラの身分を上昇させるのも、かねてからの願いだった。俺だけじゃなく、ラヴィアラも偉くなってほしい。
「アルスロッド様、ありがとうございます!」
「礼は戦争が終わって、俺が褒美をやってからでいい。次は敵領主の一族を撃ってみろ」
「わかりました! ラヴィアラ、はりきっちゃいます!」
論功行賞もほどほどに、俺たちは兵を進めて、ヒージュ郡全域を占領した。
どうせいつもの小競り合いだと思っていた敵はこちらの攻めを防衛できるだけの守りをヒージュ郡の砦には施してなかった。なので、キナーセ郡に撤退するしかなくなった。
キナーセ郡にはマウストという川に面した商業都市がある。ここを奪われると、敵は致命傷になるので、その前の平野部に布陣してきた。
ここでどうにかして俺たちの侵攻を止めようということだろう。敵の子爵もやってきた。領主が来なければ士気も上がらないからだ。
今のところ、すべて作戦どおりだ。城を落とすのは時間がかかるが、平野部で戦うなら、一日で決着がつく。
敵は平野部にある小高い丘にマール子爵の当主が居座る形になっていた。
あまりにも当たり前のことだが、高いところにいるほうが戦争は圧倒的に有利だ。弓矢や投石で狙うにしても、上から下に撃つほうが速度が増して、威力が出る。
軍議の場でもこれを一気に攻めると多くの犠牲者が出てしまうということで、多くの者が尻込みした。それが自然な反応だ。
しかし、なぜか、俺はかえって胸が高鳴るのを感じた。
「まさか、敵はこっちが正面から丘に上がってくるとは思っておらんだろうな。だからこそ、思ったよりも当主周辺の守りの層は薄い」
――お前はやはり素質があるな。好機がいつかということをわかっておる。
オダノブナガが感心してくれた。
――今川義元を討ち取ったのもこんなところだった。あの時は雨のおかげで敵も油断していたのだろうが、今のお前にはその分、職業の力がある。
あの職業ボーナスだな。
オダノブナガという職業は立ちはだかる敵の能力を20%減退させる力を持っている。覇王としての有様に敵が委縮するのだ。
さらに特殊能力【覇王の力】で戦闘中のすべての能力が二倍になる。
はっきり言って、剣豪でも領主の前にいない限り、俺を止めることはまず無理だ。
「俺がここは攻め込む」
はっきりとそう宣言した。
「いくらなんでも危険です!」「ご自重ください!」
そんな声が出る。それはそれで家臣として必要な言葉だ。気にせず行ってくださいと言われても困る。
「そうだ。危険だ。だからこそ、敵も俺が来るとは絶対に思っていない。連中には俺とまみえる度胸などないのだ。戦う気力のない者など何人おっても意味はない。まして、実際のところ、兵力をたいして割いてはいないときている。攻めないのがもったいないぐらいだ」
言葉にすればするほど、勝てると確信が湧いてきた。
「地理的には敵のほうが有利だ。逆に言えば、我々が丘まで登ってしまえばただの乱戦で、地の利などない。いいか、俺が丘までたどり着くまで盾で俺の身を全力で守れ。あとは俺が敵の子爵を討ち取ってやる。誰か、盾の役目をする者は?」
すぐにラヴィアラが手を挙げた。
「ラヴィアラ、お前はもっと離れたところから、俺の援護をしてくれ。乱戦ではお前の弓が活きない」
「わかりました……」
不服そうにしてるけど、これはしょうがない。
村を領していた頃に俺のところに士官に来た者が挙手してきた。こいつらはそもそも自分の力で一旗あげたい連中だからな。
「よし、お前たちの武勇を買った! 敵の連携が取れない夜を狙って決行する!」
正直なところ、わざわざ危険をことやるにはそれなりの意義がないといけない。
この戦争にはそれだけの意義があった。
ここで俺が敵を討ち取れば、俺の武名はこれまでと比べられないほどに拡散する。それは砦を防衛したという領内近辺の評判にはとどまらない。
優秀な戦士というのは、指揮官もまた戦士としての力を兼ね備えていると思わなければ、ついてはこない。ここで俺がフォードネリア県随一の領主であるということを見せつければ、後々までもその武名は残る。
だからこそ、絶対に成功させないといけないし、成功させる。
俺の目的は王になることだ。それこそが俺だけでなく、ラヴィアラも民もみんな幸せにするのに、一番近い。
この王国では今、いくつもの小さな衝突が毎日のように起きている。それは事実上、異なる国である領主が無数に分かれているからだ。所領を広げれば、その土地の内部では小競り合いも起きない。
俺が平和状態を築いてやる。
次の更新は夜になりそうです。よろしくお願いします!




