10 領主権奪取
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ガイゼルは臆病だ。自分の真ん前で暗殺を決行することはない。
襲うとしたら、通路を進ませているあたりで、襲ってくるはずだ。
「いました!」
ラヴィアラがナイフを素早く壁のほうに投げていた。
胸を貫かれた暗殺者の一人が壁から倒れてきた。
「なぜ、暗殺者がいる! まさか、俺を殺すつもりか?」
わざとらしく大声を出した。これで暗殺者は出てくるしかないだろう。
案内役も剣を抜こうとしたので、その前に斬り殺した。
――特殊能力【覇王の力】発動。身体能力、戦闘中に限り、二倍に。
悪いけど、お前たちとは動きが違うんだよ!
すぐにその場は乱戦になった。といっても、こっちはそれに備えた人員で来ている。衣服も鎧を内側に着込んでいた。
圧倒的にこちらが有利だ。
「アルスロッド様、こちらは大丈夫です! ここは子爵の元へ!」
ラヴィアラが敵と応戦しながら叫ぶ。
たしかに、ここでガイゼルに逃げられると面倒なことになる。
「わかった! でも、お前も来い!」
「えっ……?」
「お前を守る時、俺はもっと強くなるんだよ!」
――そうだ。それぞ覇王の意気。そのまま突き進むがいい。
心の声からも応援を受けた。
言われなくてもやってやる。
俺とラヴィアラはガイゼル目指して走った。
ガイゼルの前にも敵がいたことはいた。
しかし、ザコもいいところだった。
――職業ボーナス。立ちはだかる敵を威圧し、能力を20%減退させる。ただし、自分に自信のある敵には効果がない。
なるほど、こんな効果もくれるのか。
これで職業が戦士の人間でも、強い一般人程度のスペックにまで引き下げられる。
相手は明らかに俺の前に来ると委縮する。
びくついて武器もまともに握れなくなる。
「邪魔だ! 覇道の前に立ちふさがるな!」
火の粉みたいに容赦なく振り払う。
職業オダノブナガの正しいふるまいがわかってきた。
この職業は覇王として生きれば生きるほど、俺の力を強化する。
今の身体能力は明らかにたんなる兵士のそれを超えている。
しかも、今の俺はラヴィアラを守ろうとしてもいた。だから、あの特殊能力も付く。
――特殊能力【覇王の矜持】発動。自分の所有物を守ろうとした時、攻撃力が二倍に。
正真正銘、ラヴィアラは俺のものだ。今は胸を張ってそう言える。
剣を一閃すれば、敵の武器が吹き飛ぶ。
もう一薙ぎすれば、敵の首が吹き飛ぶ。
俺は負けない。負けるはずがない。
「暗殺を考えていたぐらいだから、敵の数はたいしたことないですね! このまま行きましょう!」
「そうだな! まあ、絶対に逃がさないけどな!」
裏口はすでにこちらの軍人で固めさせている。ほかにも逃げ道を作っているかもしれないが。あるいは変装でも正面から逃げようとするだろうか?
そして、子爵の部屋の前で守っている兵士二人を斬り殺して、中に押し入った。
ガイゼルは病人の格好をして、ベッドでふるえていた。
「兄上、このようなつまらぬ策を弄しても何も変わりませんよ」
「違う……これは何かの間違いだ……。私は何も知らない……。弟の暗殺を考えたりなどしていない……」
――卑屈者め。声を聞くだけで耳を洗いたくなるわ!
心の声が吠えた。
覇王にとってみれば、こういう土壇場で身を取り繕おうとする奴は一番許せないのだろう。
「では、ご病気というのは本当なのですか?」
「そ、そうだ……。今、ここでお前にネイヴル領を譲る! たった今、お前がネイヴル領主だ!」
「それは大変ありがたいこと。謹んでお受けいたします」
俺はその場で跪いた。
ガイゼルがナイフを握ったのがわかった。
「くそっ! 死ねえっ!」
ガイゼルがナイフを振り下ろす。
最期までクズだったな。
「覚えておけ! 領主に反逆する者は死罪なんだよっ!」
――ズドオォォォォォン!
俺は剣をガイゼルの心臓に突き立てた。
ガイゼルはナイフをその場に落とした。
一撃で絶命させた。
生き延びられるチャンスを与えたつもりだったけど、そういうことがまったくわからない奴だったな。
「お見事な一撃でした、アルスロッド様」
ラヴィアラが笑って言った。
「いえ、子爵様ですね」
「そういうことだな。といってもネイヴル子爵の領土は一郡半だ。まだまだ狭すぎる。ミネリアは一県を支配していて、伯爵を名乗ってるのに」
もっと、大きくならないとやっていけない。
まずは周囲の似たような規模の勢力を叩きつぶしていくか。
そこにシヴィークが入ってきた。
ということは、敵の鎮圧は無事にすんだということだ。
「刺客はすべて殺しました。もう、敵の動きはないかと」
「わかった。こちらも片付いた。賊が出たので、安全がわかるまで子爵の部屋に近づかぬように言っておいてくれ」
その後、ネイヴル子爵ガイゼルは今わの際で弟のハルト男爵アルスロッドに地位を譲ったということが各地に伝えられた。
ガイゼル派だった連中はまさか病気がウソであったとは言えないだろうし、これで決着はついた。もし、まだ従う気がないのなら、一つずつつぶしていけばいい。
俺は晴れて、ネイヴル子爵の地位を継承した。
ひとまず祝いとして、領内一円の税を一時的に安くしてやった。これで、民衆も俺を歓迎してくれるだろう。
●
混乱が収まった四日後、ネイヴル城の清掃も終わり、俺は城に入った。
暗殺者の騒動は他領の者がネイヴル家の断絶を狙ったものとして説明された。死にそうだったガイゼルだけでなく、後継者のアルスロッドも殺そうとしたのだ――ということになった。
アルスロッドを騙し討ちにしようとしたガイゼルをアルスロッドが逆に殺したのだと言える勇気がある者は誰もいないだろう。
俺が領主の席に着く。
一段低いところでは、新しい家臣団がずらっと並んでいる。俺に従っていた者もかなり含まれている。多くが生き生きとした顔になっていた。ネイヴルの新しい時代がはじまるのだ。
「俺はネイヴルを維持するのではなく、もっと発展させていく。一言で言うとだな、覇王を目指す」
その言葉にあっけにとられている者もいれば、くすくす笑い出す者もいた。
「おかしくなどないぞ。俺は十分に覇王になる素質は持っているつもりだ。村半分の領地から、ここまでのし上がった。兄が存命の時から兄に次いで領内第二位の勢力にはなっていた」
俺の言葉に冗談だと思って笑ってしまっていた者は恥じ入るような顔になった。
まあ、笑っていた理由もわかるから、怒ったりはしない。
「よく見ていてくれ。いつのまにやら、領地が十倍の広さになっているからな」
もっとも、十倍なんてつまらないものを目標にはしていないけどな。
俺は国を興すつもりでやるぞ。
領主目指す編は、領主になったので終了です! 次回から領土拡大を目指します!




