表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様に恋の手ほどきを・・・。  作者: 夏野 みかん
39/54

38

「俺以外に、彼女を見ている視線があった事は気がついていたが、殺気は感じられなかったから、おそらくおまえだと思っていた。」


そう言って、ケントに向けていた視線を和らげ、

「案ずるな、門番を責めるつもりはない。」


と言って微かに笑ったが、ケントにはその笑みが泣いているように見えて、顔を歪ませながら下を向き、両手を握り締め「私は…」と口にすると、勢いよく顔を上げ


「これは私が望んだ結果なんですが…どうしてなんでしょう?良かったと思えないんです。」


「ケリー…?」


「…ラファエル王子は、マリーを不幸に落とす人だ。でも、でも…ラファエル王子しか、マリーを幸せにできない。」


「…俺は…離れる事が彼女への愛だと思っていた。」


「すみません、俺が、俺があんな事を言ったから…」


ラファエルは、ケントのせいではないと軽く頭を横に振った、その姿を見たケントは俯き


「寵妃という形でマリーが、ラファエル王子のお側に行くことが、一番簡単だとはわかっているのですが…寵妃と言う形で、愛していると言われても…俺たちのような庶民と変わらない感覚の者には、理解できません。 愛する人はひとり。そう思っている俺やマリーにはその愛が真実だと思えないのです。

国の為に、個を捨てざる得ないラファエル王子の考えを、否定は出来ません、でも…先程言われたように、王太子様に男の子が生まれ、王家のしがらみから解き放たれたら…マリーを妻に迎えたいというお気持ちがあるのなら…どうぞマリーに言ってやってください。少しでも希望があるのならマリーに…言ってやってください。」


「わかっているのか!それが残酷な事になるかもしれないことを…」


「今の状況だって、マリーにとっては同じです。なら…希望をください。」


「だが!」


「ほんの少しでも…希望があるのなら…お願いです。マリーに言ってやってください。」


「ケリー…」


「マリーの心は、ラファエル王子に囚われたままです。マリーを愛してくださっているのなら、なにもやらない前に、諦めないでください。無理なことはわかっております、でもせめて国王を説得すると仰ってください。希望を…マリーに作ってやってください。お願いします。」


「初恋を拗らせ、国を危うくした事が引っかかり、初めから諦めていた、自分は恋をすることなどできないと…。」


「ラファエル王子…。」


「彼女への思いを一生…胸の奥底に置いて生きていくのだと…すべてを諦めていた。許してくれるのか…妹を悲しみや苦しみだけの人生にしてしまうかもしれないのだぞ。父王を説得する時間は、そのまま彼女の女としての幸せの時間を潰し、叶えば…良いが、もし叶わなければ…」


「叶うように…ラファエル王子は、真摯な気持ちで王様を説得してくださるのでしょう。俺は信じてます。」


ラファエルはようやく口元に笑みを浮かべ

「ケリー…すまない。いやありがとう。父を…何年掛かっても、必ず説得する。」


と言って、踵を返し、ラファエルは走り出した。


その背中に向かって、ケントは

「マリーの行く先、わかるんですか!!」と叫んだ。

一瞬立ち止まった背中は、ケントへと振り向くと


綺麗な笑顔を見せて

「花の妖精の行く先は……あそこしかない。」と言って、また走り出した。


ケントは苦笑しながら、また走っていく背中に声をかけた。

だがその声は独り言のように小さな声で


「…ケリーじゃなくて…俺、ケントなんです。」と言って笑ったが、頬には涙があった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ