表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様に恋の手ほどきを・・・。  作者: 夏野 みかん
10/54

9

マリーの恋愛経験は本のみ。もっと具体的に言えば、R15ぐらいまでの小説ばかりだったが、一度、そう一度だけ、兄ケントの秘蔵書R18をこっそり見たことがあった。


もっとも、BLと言われる類であったため…兄ケントは違うんだと必死に否定していたが…。


まぁ、確かにある意味、知識は増えたが…これは…どうだろう。マリーには役に立ったとは思えないのだが…だが、R18を見た!ということが、マリーに【幅広い恋愛の知識】を知っているという、訳のわからない妙な自信を植え付けたようだった。


そんなマリーだから、百戦錬磨のラファエルの、誘うようなキスの深い意味などわかろうはずもない。だが本人は、そうは思ってはいない。《本で、いろんな恋を知ってるんだから!》と妙な自信がマリーの背中を押したものだから、おかしなことになってしまった。



腕のキスって…なんだったけ?

マリーはラファエルの意味ありげなキスに、頭を捻った。


確か【王女の夢と騎士の夢】の中であったのよね 【参照P205】王女様に…騎士が…


「もう、耐えられません。私はサンドラ様が、他国に…まるで売られるように嫁ぐなんて…」


「アラン…でも、私は行きます。どうぞ、もう私のことは…」



そうこのあと、アランが…ラファエル王子みたいに、掌の上にキスをして腕にもキスをするシーンがあって、サンドラがえっと…なんて言ったんだっけ?あっ!そう、そうだ。


「ありがとう…アラン。このキスだけで、私は幸せです。王女としてやって行けます。」



ラファエル王子の場合は…

「無粋か確かにそうだなぁ。では恋に手馴れた君に、恋の手ほどきしてもらおうか。」

と言って腕にキスをしたんだ。


マリーは、にっこり笑った。あぁぁ~なるほど、尊敬のキスだ。

恋と呼べないような、いい加減なお付き合いをしてきたから、女心を指南してくれってことだ。


妙な自信のせいなのか……それとも、あれほど本好きなくせに読解力がないのか……

マリーはそう思ってしまった。


かたや、ラファエル王子は、このなんとも言えない怒りのような感情は、嫉妬からだとは気づかず、無理やり、マリーを自分が今まで付き合ってきた女性同様だと思おうとしていた。



ようやく出会った運命の人なのに…

不器用なふたりは…

歯車が噛み合わないまま、動き出してしまった。




(この王子様のスキャンダルを握って、子爵家の安泰!

いい男だと自惚れて、女を娼婦のように扱う。この傲慢さを…けちょんけちょんにしてやる。)



(この姿が本当なら…この娘は寵妃としてエフレイン国に連れて行く。)



まあ、どちらもズレた考え…、そしてズレた思いだったが…、


ラファエルは、マリーに向かって、よりいっそう笑みを深くし腕を出した。

マリーは、(腕を組めってことね。)と心の中で、チェックを入れて微笑むと、頭の中で(ラファエル王子の好みの遊びなれた女を演じて…そう振ってやる!)とほくそ笑み。


「私が初めてお付き合いした方は、情熱的で、腕を組む前に仰るの。そう…愛の言葉を。ううん…愛の名言を私に教えてくださるの。初めて教えていただいた言葉は…


【真実の愛は幽霊のようなものだ。 誰もがそれについて話をするが、それを見た人はほとんどいない。】素敵でしょう。」


ラファエルは顔を歪め…思っていた。

(す、素敵なのか…これが…。俺なら腕を組む度に体が痒くなる。そんな男が、初めて付き合った男なのか…可哀想に…。)


ラファエルの哀憫な眼を…マリーは感激しているんだと思い微笑むと

「ちょっと、ラファエル王子にはまだハードルが高いかしら?」

と言って、ラファエルの腕に手を添えると、ラファエルはそっと顔を近づけて、マリーの首筋にキスを落とした。


マリーは…驚き、ラファエルを見つめ…

ラファエルは、そんなマリーの驚いた顔に、

「ハードルは高いです。先生」と艶然と笑った。


手の上なら尊敬のキス 

額の上なら友情のキス 

頬の上なら満足感のキス 

唇の上なら愛情のキス

閉じた目の上なら憧憬のキス 

掌の上なら懇願のキス 


そして腕と首なら欲望のキス…。


この意味を、マリーが知るのは、もう少し先のこと。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ