俺、闘う決心をする。
「おーい、早く開けろよ。ピンポンピンポンするのもう疲れたよ。あ、け、て。あ、け、て。あ、け、ろ」
せきを切ったように玄関の向こうの人間が話し始めた。
「あ、け、ろ。あ、け、ろ。そこにいるのは分かっているんだよおー。分かりきっているんだよおー。だから早く開けて? 早く開けないと……」
玄関の向こうの、男と思しき声が止まった。そして……。
「玄関ぶち破って中に入るからなぁああああああ!」
突然、玄関の向こうの人間が叫ぶと、ドンドン! ドンドン! と扉を叩き始めた。
「ヒャッハッハー、早く玄関開けろよ! おらおら、早くしないと玄関ぶち破るぞーー!!」
叫びながらも、どんどんと玄関を叩く勢いが増していく。
今、叩いているのは玄関のドアだが、もしすりガラスを叩かれたらたちまち、すりガラスはぶち破られるだろう。そのことに気付かないで玄関を叩いているのか、それともわざと恐怖をかきたてるために、すりガラスを叩かないでいるのか、それは俺には分からない。だが、もうこうなったら俺は闘うしかなくなった。
相手は確実に犯罪者だ。しかも頭のネジが一本も二本も飛んでいる、あるいはわざと自ら飛ばしている。そして、相手は他にもいる。それは犬だ。今は犬の声は聞こえないが、さっきの鳴き声から察するに間違いなく犬はいるだろう。そしてすりガラスをぶち破られたら、真っ先に犬が家の中に侵入してくるだろう。しかも犬は一匹とは限らない。複数いるかもしれない。しかもこんな頭のネジがぶっ飛んでいる奴だ。他にも色々と考えているかもしれない。例えばしつけた猫がいたり、ウサギがいたり、ワニがいたり、ヘビがいたり、するかもしれない。それにその動物達に爆弾を括り付けて自爆テロを目論んでいる可能性だって考えなくちゃだめだ。こんなことをする人間だ。もっと恐怖に怯えさせるために、色々と考えていたって不思議じゃない。
俺はそう思い、気を引き締めて神経を研ぎ澄ました。
さあ、来るなら来い。
全て排除してやる。この家は、俺が守るんだ。守り抜くんだ。男には決して逃げてはいけない戦いがあるんだ。……。逃げられる術があるなら逃げたかったけどな!
俺はくそっ、一人ごちながら、そう思った。




