俺、人面蜂と色々会話をする。
「僕はマラソンコースの案内人兼、使い魔兼、話し相手兼、ペットだ」
「ふざけんなよ。兼が多すぎるだろ」
「だ、だって本当のことなんだから仕方がないじゃないか」
「つーか、案内人はいい、使い魔もいい、後の二つは何だよ。話し相手だの、ペットだの」
「い、いやあ。だって僕だって生き物だからさ。一人で、いや君からすると一匹かもしれないけれど、一匹でいると君が思っている以上に寂しいんだよ。それに僕は餌をとる能力に長けていないから、よければだけれど、ペットとしても飼ってくれないかな……なんてね」
「虫の良い奴だな。虫だけにな」
「だ、だから僕は虫じゃないよ。お願いだから僕を案内人や、使い魔として認めてくれよ。そしてペットとしても」
「ペットとして認めるのは断る」
「そ、そんな薄情なぁ。こんな僕だって絶対に君の役に立つと思うんだけどな」
「例えば、どんな役に立つというんだよ」
「うん。まずはモンスター情報について君に教えることが出来る。そして他はマラソンコースに隠されているトラップについても教えることが出来る」
「は? トラップ? なんだよそれ。俺そんな話聞いてないぞ」
「え? そうなの? じゃあ、もしかしたらトラップについてマインドコントローラーに質問していないんじゃないの?」
「あ、ああ。確かにトラップについては質問はしていないけれどさ」
「じゃあ、いう訳ないじゃん。質問されていないんだったら」
「はあ? 基本ルールについては俺全部マイちゃんから聞いたはずだぞ?」
「それは基本ルールについてだけでしょ。トラップは基本ルールではなくて邪道ルールに分類されるから、教えてくれなかったんじゃない?」
「何だよ、邪道ルールってそんなのが存在するのかよ。つーか、今更になってよく分かったけれど、これ俺、嵌められたなたぶん」
「いやいや、そんなことないよ。ただ聞かれなかったから答えなかっただけだよ。本当にただそれだけだよ。基本、マインドコントローラー、マイちゃんは技は人から盗めみたいな考えの人だからね、自分で考えろよ、みたいにいつも考えている節があるんだ。でも、別に悪気があるわけではないし、悪い精神生命体でもない、聞かれたら答えられるのは、答えられる範囲で答えるし、聞かれなければ、基本ルール以外は答えない。ただそれだけなんだよ」
「そーかよ」
俺はマイちゃんの性格についてようやく少し分かったが、でもスタート直前になって分かった所であまり意味はないと俺は思った。
でも、この人面蜂は、人の質問には丁寧に答えているし、こいつは別に根は悪い奴じゃないという気がしてきた。ウッキーを勝手に食ったのは許さないけどな。
「分かったよ。認めてやるよ」
俺は言った。
「え? 認めてくれるって、僕のことを?」
「ああ」
「それはどの意味で? 案内人として? それとも使い魔として? それとも話相手として? それともそれとももしかしてペットとして?」
人面蜂がどこか期待しているような顔で俺に質問した。
俺はやれやれはぁっー、という感じでため息を吐き出し言った。
「その全てでだ」
俺が言うと、人面蜂の表情が花が満開に咲いた瞬間のようにほころんだ。
なんだかんだで、こいつ結構良い奴なのかもしれないな。
俺は、その人面蜂の無邪気な笑みを見つめながらそう思った。




