俺、変な生き物を見つける。
すると俺の周りとぶんぶんといった感じで飛んでいる蜂のような生き物がいた。
蜂のようなというのは蜂にしては図体はでかいし、体は虫とかとは違い表情を認識することが出来たからだ。まるで人面蜂とでも言えそうなその生き物は、体長約30cmぐらいの体を器用に動かし俺の周りを素早く動き回っていた。
俺はバッグの中に隠していた、サバイバルナイフを取り出すと、その生き物に向けて刃の切っ先を向けた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。僕は味方だ。そんな危ない物はしまってくれないか」
こいつ喋りやがった。
こいつの顔をよく見ると、口元にチョコレートみたいな茶色い物がべったりとくっ付いている。こいつか俺の、ウッキーを食べた奴は。
「俺のウッキーを返せ?」
「ウッキー? ウッキーって何のことだい?」
「とぼけるなよ。俺がさっき食べていたチョコレート菓子だ。お前がそれを空中から、奪い取ったんだろう」
「あ、ああ。あれかあのお菓子か。どうもありがとう。とてもおいしかったよ。あんな美味いもん僕初めてくったも……って危ない、危ない! 投げるな。ナイフを人に向かって投げるな」
「お前は人ではない、ただの虫野郎だ」
「ちょ、ちょっと。そんなにお菓子の一つぐらいで怒らなくたっていいじゃないか。た、確かに僕は人ではないけれどさあ。僕だってちゃんと役割があってここにいるんだよ。もし僕をここで殺したりなんかしたら絶対に君は後悔することになるよ?」
「何?」
その言葉に僕はぴくっと反応した。
俺がこいつを殺したら後悔する……だと?
俺はその意味について考えてみた。そして、出た答えは。
「おいお前、もしかしてお前、このマラソン会場の案内人みたいなものか?」
「おお、ようやく普通の返答が帰ってきたよ。危ない危ない。本当に殺される所だったよ。じゃあ、僕のことをちょっと説明するね」
その人面虫はほっと安堵の表情を浮かべ話し始めた。




