俺、マイちゃんからもっとルールについて教えられる。
「他にも何かルールがあったりするんですか?」
「うん。まだまだルールがあるよ。で、これから君が行くマラソンコースは、私達狭間の住人は、異空間狭間マラソンと呼んでいるんだ」
「異空間狭間マラソン?」
「そうそう、キャッチコピーは、異空間狭間マラソンは狭間の住人の心を癒す、だ」
完全に自分たちの世界の住人の娯楽と化していないか?
俺は何か、猫に弄ばれる人形のような気持ちになった。
「それって、俺達を娯楽の対象として、見ているっていうわけですか?」
「うーん。娯楽の対象と言うと、ちょっとだけ、心外かもなあ」
マイちゃんが言った。
「じゃあ、どういう意味合いでしょうか」
「これはある意味、等価交換だよね。マラソンを走ってもらう代わりに、景品を上げる。ただそれだけだ。一位の人には豪華賞品が与えられるし、最下位の人にだって、かなり凄い景品が与えられるんだよ」
「えっ? 最下位の人にも凄い景品が?」
「まあ、具体的なことは何一つ言えないけどね。まあ、だからと言って最下位でもいいやとは思わないことだね。それを狙っていると痛い目を見る可能性もあるからね」
「い、痛い目? だ、だってただのマラソン大会でしょう?」
「うん。そうだ。ただのマラソン大会だ。でも、ただのマラソン大会って言ってもここは狭間の世界だよ。つまり、地上とは多少ルールは異なる。その一つはさっき言った一人で一コース走るというのもそうだし、後、地上のマラソン大会とは走る距離が違う」
「なるほど」
確かに地上のマラソンとは距離が違うというのは薄々というか、まあ分かっていた。なぜならば、ゴールするまでに数日以上かかる可能性があるという話を聞いていたからだ。そりゃあ、そうだよなあ。だから痛い目をみるというのも、あまり遅く走りすぎても、ゴールにいつまでもたどり着けないという意味なのだろう。
「だから、まあ、手は抜かないようにね。とはいえ、別に手を抜いたからと言ってそれに関して罰があるわけではないから、私はどうこういう立場じゃないんだけどね」
マイちゃんは、はははっと笑った。
「これだけですか? ルールは?」
俺はマイちゃんに再度質問をした。
「いや、まだあるよ」
「まだあるんですか?」
「うん。でも、もうちょっとだから辛抱してよ」
「は、はい」
マイちゃんはそう言ったが、実は内心凄い俺はわくわくしていた。
これから一体どんなマラソンが始まるというのだろうか。想像するだけで、胸のときめきを抑えることが出来なかった。これは発売前のゲームを心待ちにしているような、あるいは、遊園地でアトラクションに乗る直前のような、はたまた、お店で、豪華な料理が運ばれてきたかのような心境に近い物があった。
俺はマイちゃんの言葉が発せられるのを、犬のご飯のおあずけのような心境で、待った。




