俺、マイちゃんからその他のルールについて教えられる。
「まず、これから始まるマラソン大会だけれど、そのコース上には君一人しかいない」
「えっ? 俺一人?」
「そうだ。だが、君の走るコースには一人だが、別のコースにも時を同じくして、このマラソン大会にエントリーした様々な、人々が参加している。スタート時間は全くの一緒だ」
「で、でも、俺のコースっていうことは他にもコースがあるっていうこと?」
「まあ、そういうことになるな。とは言え、全て君が走るコースと同じ作りになっている。それは全てにおいてだ」
「じゃあ、みんなで一緒に走ればいいじゃん。その方が計測も色々楽じゃないですか?」
「うん。だけどね。そうすると、相手の邪魔をわざとする奴がいるし、それにどこかで聞いたかもしれない。景品について、その景品をもらう為に順位を調整するかもしれない輩が出てくるかもしれないだろう? だから、皆で一緒に走ることはやめたんだ」
「へえ、でもその景品について知られることなんかあるんですかね。誰かが故意に情報を漏らしたりしない限り、分からないという気がしますが」
「そうだね。確かにそうだ。だけど、過去に一度だけ情報が漏れたことがあったんだ。まあ、漏れたと言っても漏れた情報は漏れた前の大会の情報なんだけれどね。実はそこにいるヨークは今、ご存じの通り、使者の仕事をしている。で、その使者が年齢的に引退をすることになったんだ。俗にいう定年っていうやつだな。で、その定年した元使者が、引退した後、自分の使者をやっていた時のマラソン大会の景品について漏らしてしまったんだ。使者になった時の契約で、自分の使者の時のルールや景品などについて、漏らしてはいけないというルールがあったんだけれど、彼はそれを破って、知人に漏らしてしまったんだ。もちろん、次の大会の景品については彼は知らなかったけれど、それでも過去の大会の景品情報を漏らしてしまったという罪は大きい。なぜなら、その情報によって、次の大会の景品について推測することが出来るようになるからだ。そうすると、ある程度ではあるが、次の大会の景品を予想して、それをもらうべく、順位を調整する輩が出てきたんだ。だから、皆で同じコースのマラソンをすることをやめにして、一人一コースを走ることに決めたんだ」
「そんな事情があったんですか。ちなみにその情報を漏らした元、使者はどうなったんですか?」
「うん。その元使者は、死んで死者になったよ」
「マイちゃん、うまいこといいますね」
ヨークが言い、マイちゃんとヨークは二人声を響かせて笑いあった。
わ、笑えねえ、と俺は心の中で思った。




