俺、物思いにふける。
今は、日付が変わったばかりで、0時18分だ。
時計が刻むチクタクチクタクという音が、俺をどこか急かしているように聞こえる。
時間は待ってはくれないよ。紅よ。フォーエバーラブー。エックスジャパンの歌が頭の中を駆け巡った。
時計のチクタクチクタクという音に合わせて、ポテチを齧り、時計の音を打ち消すかのようにポテチを食べる。そんなことしても、時間が進むのを止められるはずはないのに。
昨日は、稀勢の里が相撲で六連勝した。
今日はどうなるのだろうか。7連勝出来るのだろうか。
たいして興味もないくせに、昨日のニュースを思い出しながら、人のことを考える。人のことを考える前に自分のことを考えろよ。
俺は自虐気味に心の中で突っ込んだ。
今日は土曜日だ。
母親と父親は、三連休を利用して、旅行に出かけてしまった。
実を言うと俺も旅行に誘われたのだ。
「ねえ、義三。今度旅行に行かないか?」
母親が一か月前ぐらいに言った。
その旅行は、一泊二日の東京見学だった。
スカイツリーを見たり、隅田川を渡ったり、テレビ局をいくつか周る旅行だったが、俺は特に興味も引かれずに、「面倒くせえよ」の一言で断った。
だけど、いざこう一人取り残されて、誰もいないシーンとした部屋で物思いにふけっていると、やっぱり行った方が良かったのかもな、なんて考えが浮かんでくる。
最近は人間はやっぱり、動かなきゃだめなんだと思うようになってきた。
休日にテレビ漬けで一日が終わると、なんだか、無性に心の中が損をしたような気になってくる。
テレビの中の世界を見ているだけで、実際に自分が全てを知っているかのような気にどこか、なってしまう。でも実際は全然テレビで見ている印象とは違かったりして、だからと言って、実際に見てみろと言っているわけではなくて。ただ、俺が言いたいのは、現実をもっと大事にした方がいいかもと最近思うようになってきたってだけの話だ。なので、両親が旅行に行って、まあ、面倒くさいし、テレビで見たことがあるから行かなくても別にいいやって心のどこかで思っていたけれど、やっぱこう一人になって、よくよく考えてみると、行っとけば良かったという考えが頭の隅に浮かんで離れない。
そうだよなあ。テレビでいくら特集をやっていたって、それはLIVEじゃない限り、過去の映像で、その収録されている映像と実際の読者が見ている時とは時間的なずれが生じていて、その間に世界は形を変えているだろうし、映っている映像のお店や、人だってもしかしたらもう潰れていたり、何かしらの理由で死んでいる可能性だって大いにある。それに風景だって日々移ろいでいるから、今の景色とは似ているようで全然違うかもしれない。
考えれば考えるほど、やっぱり大事なのは過去よりも、今なんだなあとつくづく思うようになってきた。
あれだけ、誘ってくれていた母親、そして父親、もし、俺は旅行に行くと言ったらどうなっただろうか。
両親は昨日から旅行に行っているが、もし俺が行くと行ったら、今日からに旅行の日付を変更してくれただろう。そして俺は今頃、東京のどこかのホテルで夜景でも見ながら何を思っていたのだろうか。よし、これからは、両親に誘われたら、旅行に行こう。そう思った自室でポテチを齧る高2の春だった。




