俺、狭間の世界の関門所に行く。
気づいたら一面真っ白な部屋にいた。いやそこか部屋なのかそれとも空間なのかは分からない。
ただ白い。上を見ても下を見ても、左右を見ても俺の目には白い景色しか映らなかった。
隣を見ると、隣には俺をここに連れてきた、狭間の住人と名乗る男がいた。
「なあ、ここは何なんだ? っーかお前の名前をまだ聞いていなかったよな。お前何て名前何だ?」
「あれっ? 言わなかったっけ。俺の名前」
「うん。言わなかったよ」
「そっか、俺の名前はヨークって言うんだ。よろしくな」
「そうかヨークっていう名前なんだ。よろしく」
外見とは似つかないどこか可愛らしい名前に俺は少しだけ、心が和んだ。
「で、この空間は、一種の関門所みたいなもんかなあ。まあ、いくつもこんな場所はあるんだけどね。でも、皆狭間の世界に行く時には必ずと言っていいほど、立ち寄るんだ。というか例外を除いて立ち寄らなくてはならないんだ」
「へえっ」
「まあ、勝手に自分の住む狭間の世界に入って来られたら困るからね。これは一種の国境線みたいなもんかなあ」
「なるほどね」
「じゃあ、これから君をマラソン大会に招待した張本人をちょっと呼ぶね」
言うと、男は瞳をそっと閉じた。まるで何かの歌の歌詞のようにそっと。
すると、男が目を閉じてまもなくこの部屋、いや空間に声が響き渡った。
「おーい! 私だよ。私。マインドコントローラーだよ」
「おお、マスター、お早い返答ありがとうございます」
「マインド……コントローラー?」
「ああ、狭間の世界に行く為のいくつもの関門所を仕切る、マスター、その名もマインドコントローラーさんだ」
マインドコントローラーって……、いや別に……名前にケチをつけるつもりはないけれどさ。でも、もうちょっと何とかならなかったのかよ。
すると、マインドコントローラーと名乗る、男(……なのか?)は言った。
「マインドコントローラー略して、マイちゃんと呼んでね?」
ちゃらい、ちゃらすぎるよこの人、人かどうか分からないけれど。
「マイちゃんは精神生命体だ」
ヨークが俺に言った。
「精神生命体?」
「ああ、声とかは普通に人間の男の声だけれど、マイちゃんは肉体を持っていない」
「肉体を持っていない? でも、普通に声とかが聞こえるけれど、だって声って喉を震わせて出すわけでしょう?」
「ああ、だが、マイちゃんはとても高等な生物なので、声を精神の力で具現化することが出来るのだ。もちろん、頭の中に直接響かせるテレパシーも送ることが出来る。だけど、この場には自分と君が二人いるから、声の具現化の方を選んだんだな」
「テレパシーで二人に一気に話かけることは出来ないのか?」
「それは、実は少しだけ、疲れるんだよね。相手の脳波に合わせないといけないから。だから具現化の方が体力の消費が少なくて済むっていうわけさ」
マイちゃんが言った。
「それはそうと、マラソン大会のエントリーどうもありがとうね」
「いや、こちらこそ、こんな貴重な機会を与えて下さりありがとうございます」
俺はマイちゃんに感謝の意を述べた。
「じゃあ、まあ、こんな所でいつまでもいたって、嫌だろうから。簡単にざっとマラソン大会のルールみたいなのについて、説明しちゃうね」
「はい、お願いします」
俺が言うと、マイちゃんは「ゴホンッ」と軽く咳をした後、マラソン大会のルールについて話始めた。




