壊れた愛
暇なので、お話をひとつしますんで聞いてください。
日常生活をただただ普通に送っている高校生の男の子がいました。
「はぁ、帰るか…」
彼の周りには人がおらず、みんなあちらこちらでグループを作り他愛もない話をし続けています。
彼は俗に言う『ボッチ』です。青春を謳歌してるとは程遠い存在ですね。
「…へへ。…ふふ」
スマホを見つめ、ニヤニヤとしています。
側から見ればただの気持ち悪いだけですが、彼には彼女が居ました。遠距離で数ヶ月にしか一度しか会えませんが、スマホを介して常に連絡を取り合いイチャイチャしあう。
これは、先程の青春を謳歌していないと言うのは訂正すべきでしたね。
彼は彼女と愛し合い、未来を希望に照らし、また逢える日を夢見て毎日を生きていました。
「おい!オタク野郎!気持ち悪く笑ってんじゃねーよ!」
突然背後から髪を掴まれ怒号を浴びせるのはこのクラスのヤンキーです。幸せなビジョンが一気に絶望に塗り変わります。
「一日中スマホ見ててニヤニヤニヤニヤ。そんなにおもしれーなら壊してやろーか?wwwwww」
ヤンキーは彼からスマホを取り上げ、お手玉のようにポンポン投げて彼を挑発するように見下します。
「返して!返してよ!」
彼は必死にスマホを取り戻そうと返してと連呼しますが、逆効果です。相手が楽しむだけです。
彼の体格では、喧嘩をしても勝てないでしょう。
だから、こういうイジメが生まれるんですかね?
「お前www、ネットに彼女いるんだろ?小林から聞いたぜ?wwww、毎日連絡取り合ってラァブラブだねえ」
「え、なん…」
彼は、バッと横を向き、同じボッチで体育などの2人でやる作業を一緒にする仲の小林君を見ます。
彼は、友達はいませんが。小林には自慢するために彼女の事を話していました。
ボッチ、オタク、メガネ、チビ、ブス。
同じ境遇でありながら、自分は彼女がいる。
そういう優越感を小林君を使って味わった罰でしょう。
「へ…へへ…」
小林君は口を歪めながら笑います。小林君もまた、彼女がいない劣等感、妬み僻みを抱えていたんでしょう。
人間は愚かですからね、自分にないものを持ってる人を羨み。自分がそれを手にできないと知ると、なんとかそれを失わせようとする。醜いですね。
「友達は大事にしなきゃあ〜なぁ?小林ぃwwwww
ほら、スマホ取ってみろよ?ww、手もとどかねぇか?
泣くか?お?wwwwww」
挑発。彼は顔を涙でぐしゃぐしゃにしていました。
無理だとわかっているのでしょう。そして、解決策を必死に考えてるのでしょう。
「泣くなよ、大人しくなるなよつまんねえ。
お前の彼女に『セックスさせろ』って送ってやろーか?
ギャハハハ!」
ゲスいですね、奥手の彼はまだ童貞です。
彼女を大事にしていたから、エッチはまだしていなかったのです。彼女もセックスを怖がっていたので、彼もその話題を遠ざけていました。
「ほい。」ピロン
メールの送信音が鳴ります。
彼は、ただ『送信しました』と表示されるスマホを口をパクパクさせながら見ていました。
彼は知っていました。彼女が親からの性的虐待でトラウマを持っていた事、今のメールが冗談でも済まされないこと。信頼が砕けて壊れてしまった事。
そして同時に彼も壊れました。
「ああああああああああああああああああああ!!!!」
絶叫し、イスを振り回し
ヤンキーの顔面をイスがえぐる。
クラスは阿鼻叫喚で逃げ惑います。
顔面のえぐれた頰を手で押さえ、焦点が合わない目で彼を見上げ
彼はイスを振り下ろす。
壊れちゃいましたね、
この事件は彼は精神がまともではなかったという事で罰は無く、精神病院行きとなり、
ヤンキーは顔がぐちゃぐちゃになりましたが。
自業自得の部分もあり、お金で解決されました。
なんともまあ、バカな話ですね。
彼にとって大事なものを壊し。彼を壊し。
もう元には戻らない
私に愛してると、もう言ってくれない
「悲しいお話だと思いません?」
「まっ!まて!悪かったって!顔の傷おったんだからそれでチャラだろ!」
「ふふふ、こわれろ」
プルルルル…
「あ!もしもし?……はい!
あのー、今度ご飯でもどーです?……
やった!たのしみ!……
じゃあ、土曜日7時ですね…はい、はい
失礼します、小林さん。」
本当楽しみです
こーいうの実体験だったりするのよねん