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第十三話 第十階層

 結局、第九階層に隠し部屋らしき箇所はなく二人もいない。つまり残るは第十階層、最後の一フロアのみとなったのだった。


 その第十階層だが、そこにはこれまでの集大成とも言うべきなのか一から九階層までのすべての魔物が(ひし)めいていた。


 フロアの大きさ自体は他と変わらないのに魔物の数だけが桁違いな状態だ。


「明らかに僕達が来てから魔物の出現数が増加していますね」


 この階に降りるまでは赤い光点はそれほどではなかったのに今では一つの角を曲がれば数体の魔物に遭遇するほどだ。


 戦闘を開始すればその音で周囲の魔物も寄ってくるし、ここに降りてからほとんどの時間を戦いで消費しているくらいに。


 ここまで来ると流石にボックス内の石も尽きてきたので僕は迷宮の壁や床を砕いてその破片を投擲の道具として利用するようになっていた。


 これなら勝手に修復して新しい弾を補充してくれるし、その場ですぐに用意できる。


「しかし逆に言えば、それだけ私達に来て欲しくないという何者かの意図が働いているのかもしれません。それにしてもコノハ様は本当に大丈夫なのですか? いくら勇者の仲間とは言え、紋章を持たないあなたでは限界もあるでしょうし……」

「大丈夫ですよ。接近戦にさせない限りは平気ですしね」


 そうやって嘘も言いながら僕の背中の上から放ったレイナさんの火の魔術が復活しようとしていたマーダーゾンビを焼いていく。


 もっともレベルの高い敵は第九階層のクリスタルゴーレムなのだが、奴のレベルは高いもののスキル自体は前のアイスゴーレムと変わらない。

 だから回復されるのは多少厄介だが、それでも投石だけで倒すことができる。


 だけどマーダーゾンビは物理攻撃で倒すと数十秒から一分程度で復活してしまう。


 無の魔法をレイナさんの前ではそう易々と使う訳にはいかないので、こうして最後の止めは彼女に任せているという訳だ。


 ただこれはレイナさんのMPが持つ間しか取れない方法なのも事実。

 彼女のMPが尽きた時はかなり厄介なことになりかねない。


 ただ単に進むだけならともかく各部屋をある程度念入りに調べなければならないから、そこに魔物を残しておくわけにはいかないのが厄介だった。


「この部屋にも隠し部屋はないようです」

「そうですか、それじゃあすぐにでも先に進みたいところなんですけど」


 部屋を調べる間は彼女を背中から下してすべて任せている。


 そしてその間の僕は扉を抑えて、そこをこじ開けて部屋の中に入ってこようとする魔物をせき止めているという訳だ。


「いつも通り倒してもキリがないので駆け抜けます。準備はいいですか?」

「慣れたくはないですが、もう慣れてしまいました」


 やはり負ぶさるのは恥ずかしいのか少し頬を赤く染めてはいたもの、抵抗はせずに扉を抑えた僕の背中に乗ってしっかりと掴まってくる。


「行きますよ?」


 頷いて大丈夫だと答えてくるので僕はそこから一気に力を解放して扉を抑えるのではなく、ましてや開くのでもなく力一杯に押し出した。


 そうして押し出された扉は壊れて外れた結果ただの金属の板となり、押し出された方向の壁にめり込む。


 その間にいたはずの魔物を壁とのサンドイッチで押し潰しながら。


 そこで出来た隙間を逃さず僕は部屋の外に飛び出ると壁を蹴って次の部屋へと進んでいく。


 地面を這いずり回るしかない魔物達を置き去りにして。


「失礼ですが、これだけのことが出来るなら初めの内からやってもよかったのでは?」

「抱えるのが一人ならともかく三人なんて無理ですよ。それにそうじゃなくても急いでないなら、こんな失敗したら魔物の群れのど真ん中に落ちることになる方法は御免です」


 段々この状況にも慣れてきたのか背中に乗りながらそんなことを言い出すレイナさんに答えながら僕は次の部屋を目指す。


 それにしてもレイナさんの落ち着いた態度には感心させられた。


 背後からは大量の魔物が追ってくるし、前方にも結構な数の魔物が待ち構えているこの状況でよくそんな質問をしていられるものだと。


「それはコノハ様が常識外れだからです。ここまで来るとあなたが負けたり失敗したりする姿が思い浮かばないくらいですからね」

「流石にそれは買い被りすぎですよ。僕だって人間ですからね。っと、次の部屋が見えてきました」


 手筈は先程と変わらない。僕が敵を蹂躙して、倒せない敵だけレイナさんが止めを刺すという必勝の戦法だ。


「あの部屋の中のマーダーゾンビは二体です。なので、よろしくお願いします」


 了承の意を返してくるレイナさんの言葉を聞きながら、僕はまずは邪魔なその部屋の扉の前にいる魔物に向かって投擲を開始した。

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