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プロローグ

 ナバリ男爵の領地での出来事を解決した僕達は次なる街を目指して街道を進んでいた。ただ既に二週間もの時間が流れているが、まだ次の街は見えてこない。


 途中の小さな村々に泊まらせてもらうこともあったので常に野宿という訳ではなかったが、それでも四分の三くらいは野宿である。


 正直に言えば、もうそろそろちゃんとした宿などに泊まってゆっくり休みたかった。


「辺境とは聞いていたけど、トジェス村とかは本当に田舎だったんだね」

「だからこそ魔族なんて来ないと男爵も思っていたのよ。でも今はその安全な田舎からは離れて行っている。つまり、より一層危険な方向に進んでいると言えなくもないわ。コノハなら大抵の事は大丈夫だろうけど、それでも注意する事を忘れないで」

「心配してくれるのは素直にありがたいけど、まずは自分の事を最優先にしなよ? 僕よりもティアの方が危険かもしれないんだから」


 呼び方が愛称に変わったのは単に仲良くなったからだけではない。


 これから辺境の地を去って都会の人が多い地方に向かうにあたって、ミーティアという名前のままで呼ぶのは少々危険かもしれないからだ。


 折角、奴隷紋と盗賊の証はなくなったのだ。それなのに顔と名前で見つかるなんて事になってはその意味もない。


 だから焼け石に水からもしれないが名前は略して呼ぶことで、顔については人の多い所ではフードを被ることでその対策としたのである。


 愛称で呼び始めてからも二週間。この頃になると自然にそう呼べるようになっていた。


「それにしても魔物の数が急に増えたね。それに強さもどんどん上がって来ているみたいだ」


 現在遭遇する魔物は最低でもレベルが二十代後半だ。


 要するに向こうでは一番高レベルの魔物だったダイアウルフよりも強い魔物がここら一帯には多数存在しているという事であった。


 もっともそれは魔王の影響が出る以前からなのだとか。元々の土地柄などが魔物の強さや生息域などにも関係しているのかもしれない。


「その魔物も投石だけで倒していくんだから、やっぱりあなたは非常識よ」

「そうは言っても接近戦は相変わらず素人から毛が生えた程度だからね。この投擲能力は確かに強力だけど、それだけではどうにもならない敵もいる。だから主な争い事はそれが得意なコンにでも任せる事にするよ」


 いけしゃあしゃあ、そんな言葉が似合う態度で僕は平然とそう偽りを告げる。


 これからわかる通り、僕はミーティアに対して自らの能力を幾つか偽って教えているのだった。


 生物以外を無尽蔵に異空間に収納できるアイテムボックスの能力に関しては既に知られていることからそのまま教えてある。ただし合成や分解についてはまだ伏せてはあるが。


 それ以外では、何かを投擲する時に力が増して狙いが付けられる投擲能力に、一定時間だけ移動速度と跳躍力を大幅に強化する逃走能力。


 それに加えてある程度の傷や病を治すことができる回復能力と、最後に周囲の気配に敏感になる気配察知能力の計五つの力を僕に、結城木葉に勇者が与えたことにしておいた。


 これで今までの僕の行動に対しての説明はできるはずである。ミーティアもこの説明で少なくとも表面上は納得してくれたので今はそれでいいだろう。


 そんな風に考えながら僕は歩を進めていくのだった。

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