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第四話 襲撃

感想で指摘があって気付いたのでこの先の「(」は「(」にします。

見た目ではわかりにくいかもしれませんが半角だったのを全角にしました。


可能ならこれまでの投稿も直していこうと思いますが、それについては気長にお待ちください。

 普通に押しただけでは開かなかった扉をバカ力で強引にぶち破った僕はその中へと足を踏み入れる。すると前に迷宮の入り口を潜った時のように気付いた時には別の空間に飛ばされていたのだった。


「迷宮と言うよりは神殿に近いのかな?」


 先へと続く廊下の床や天井は綺麗なもので傷一つ存在しない。なにより静謐な雰囲気が辺りには漂っており、その空気を吸うだけで心が落ち着くようだった。


 もっともそんな場所に襲撃を仕掛けようとするのだから我ながら度し難いというものだが。


 そこで僕は改めて襲撃を相手側に知らせるように全力で床に拳を叩き付ける。すると凄まじい轟音が周囲に響き渡り震動も床を奔るが、そこには罅割れ一つなかった。どうやらこの施設を破壊するのは無理そうだ。


「何者だ!」


 その音に反応するように――と言ってもその前の時点でとっくに気付いていただろうけれど――怒号が響き、通路の先にあった扉から二人の男が現れる。手の甲に紋章はないから神の力を持っていない仲間だろう。


 既に狐面などのコンとしての装備を整えた僕は答えることはせず、こちらの姿を見て武器を構えようとしたその人達の背後を取る。そして軽く首の後ろを手で叩くようにしてその意識をあっという間に刈り取ってみせた。


 大分力のコントロールにも慣れて来たというものだろう。


(こうして考えると殺しそうになったら警報が鳴るってのは便利だね)


 面倒な事に全員が『隠蔽』系のアイテムを持っているのかマップはおろかステータスも見えなかった。なので力加減については相手の動作などから推測するしかないのだ。


「とりあえず予定通りに一番奥を目指すかな」


 守人との作戦で僕はただひたすらに勇者がいると思われる最奥を目指すと決めてあるのだ。そしてその邪魔をする奴を倒しながら進むとも。


 念の為にその場でブレイブとビッグウッドという名前にサーチを掛けてみるが反応はなし。紋章を持っている時点でそうなることは判っていたので特に落胆することはなかった。


「さて、行くとしますか」


 進んだ先の角から奇襲で現れた紋章を持っていない女性の剣による一撃を躱して首に手刀。更にその後方から援護の魔術を放とうとした男性もそうする間も与えず同じ方法で制圧完了。


 手早く倒した二人を壁に寄り掛からせると更に先へと進む。あえて早足程度の速度で足音を周囲に響かせながら。


(紋章がない相手なら問題にもならないし、やっぱり注意すべきは紋章持ちだな)


 使者の二人がまだここに居ないと仮定して、後どれだけの紋章持ちがいるのか。そしてそれらを束ねるであろう勇者という難敵もきっとこの奥で待ち構えていることだろう。


 僕は気を引き締めると同時に警戒も怠らずにその先へと進んで行った。





 そして僕は実に簡単にその最奥の部屋まで辿り着いてしまった。敵は何人も居たが紋章持ちとは一人も遭遇せずに。


 そしてそこには黒髪の男が待っていたのだった。


「初めましてだな、結城木葉。ここには誰もいないしその妙な面は取ったらどうだ?」

「……その様子だと僕が来ることは予想済みだったみたいですね」

「当たり前だろう。もっとももう少し後になると思っていたがな」


 まるで王座のような椅子に腰を掛けているその男は僕よりも少し年上、二十歳くらいだろうか。


「俺は五十嵐(いがらし) (とう)()。ご察しの通り雷の勇者で今のところお前の敵だ」


 一切誤魔化すことなく敵対すると宣言してくる東吾という男。その目にも確かな敵意が込められていた。


 そこで口を開きかけた僕を制止するように彼は手を上げてくる。


「聞きたい事があるようだが、それは俺を倒してからにするんだな」

「話し合う余地すらないと?」

「そうだ。俺は敵を前にして呑気にお話しするのは性分じゃないからな。聞きたい事があるならその力で俺を捻じ伏せてみろ」


 そう言って彼が立ち上がったと思った瞬間だった。彼の姿が消える。


(どこ、に!?)


 そして探す間もなく僕の背中に衝撃が奔った。


 前のめりになる形で床に叩き付けられたがすぐに起き上がって僕は相手を観察する。その体勢から見るにどうやら僕は回り込まれて背中を殴られたらしい。流石は勇者と言うべきかかなりの威力である。


「固いな。流石は勇者と言うべきか」

「それはどうも」

「だが俺の姿は目で追えてもいないらしい。それなら十分だ」


 またしても忽然と姿が消え、


「ゆっくりと嬲り殺しにすればいいだけだからな」

「っ!」


 背後から聞こえた声に全力で取り出した剣を振るう。だが振り返ったそこにも奴の姿はない。


「さて、何回殺せばお前は死ぬかな?」


 もう一度振り返るとそこには手に血の付いた剣を持った奴がいる。そして僕の背中には深くはないが浅くもない一筋の切り傷が走っており、そこから溢れた血が地面に滴り落ちていた。


(レベル600オーバーの僕ですら反応できない速度。雷の勇者の名は伊達じゃないな)


 今のところ触れることも困難な相手の倒し方など皆目見当も付かない。とは言えこのまま何もせずにやられるつもりもまたない。


 幸いな事に骨までは斬られていないし傷は魔法で消せる。それに減った体力に関しても回復薬がある。


(とりあえず長期戦に持ち込んでみるしかないかな)


 しぶとく足掻いてそこから勝ち目を探るとしよう。それは二人が救出されるまでの時間稼ぎという目的においても正しい選択なのだし。


 長い戦いになる、それを覚悟した僕は足元に出現させた石の山を問答無用で蹴り出した。

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