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第十七話 突然の襲撃

 またしても意味のない話に向かう僕の足取りは重い。


(もしかして意味のない会議を強いられる社会人がいるとしたらこんな気持ちなのかな)


 行きたくない。けれど行かない訳にはいかないというジレンマに気分が重くなる。その所為で折角の豪華な朝食もあまりおいしいと感じられなかったくらいだ。


 解決の目処が立っていないのだから幾ら話し合っても時間の無駄に終わるだけだろうに。


 メル達には僕の事は気にせずに鍛錬に行って貰っているのでそれについての問題はないだろう。師匠にカージも傍に付いているのだからそう簡単には不味い事態に陥ることはないはずだ。


 そうして部屋の前に到着した。時間よりもかなり早いが、かと言って他の事をしている暇はないのでそのまま扉を開けて部屋の中に足を踏み入れる。


 するとそこにはバスティート王と宰相の二人が待っておりコーネリアスの姿はなかった。


「丁度よかった。聞いて貰いたい事がある」

「何かあったんですか?」


 席に着きながら尋ねると王は頷く。


「つい先ほど魔物の大群がこちらに迫っているという情報が入った。王都に到達するまでまだ時間はかなり掛かりそうだがその数が異常らしくてのう」

「数はおおよそ五百はいるそうです。これは明らかに自然な現象ではないでしょう」

「となると魔王か魔族の仕業って事ですか?」

「恐らくは」


 宰相が首肯するのを見ながら僕は大きな溜息を吐いた、またしても厄介な事態が起こっているのかと。しかも今回の場合はそれが同時に起こっているのだから尚更に性質が悪いというものだ。


「幸いと言うべかその魔物の大群は周辺の村などは襲わずに王都だけを真っ直ぐに目指しているとのことです。ですから進路を急に変更しない限りは迎撃に集中できるでしょう」


 でもそれはつまりこの襲撃には何者かの意思が大きく関わっている事に他ならない。そうでなければ魔物の大群が一つの目標に向かって突き進むなんてあり得ないのだから。


 普通なら近くにある村などが真っ先に襲われなければならないのだし。


「それで僕に何をしろと?」


 てっきり迎撃に手を貸してほしいと言われると思っていたのだが、その予想は大きく外れる事となった。


「今のところは特に要望はありません。むしろなるべき王城に留まって動かないで頂けると助かります」

「意外ですね。この程度の事態は勇者の力を借りるまでもないと?」

「その通りです。この王都は単体であれば魔王の襲撃にすら耐えうる設計がなされています。たかが数百の魔物など敵ではありません。ですが今回の事態がそれだけで終わるとは我々も思っていません」

「コノハ殿達にはその時の為に力を温存しておいてもらうという事じゃ。この騒ぎに乗じて何かするのが奴らの真の目的かもしれぬからのう」


 王都にこの程度の数の魔物を差し向けても意味がないのは魔族だってわかっているはず。だというのに今回の事態は起きた。となればそれ以外に目的があると考えるのが妥当だろう。


「またこの襲撃の件が終わるまでコーネリアス様方とは協力関係を結ぶ事となりました。そしてその間は例の件については一旦脇に置いておくことも約束していただきました」

「まあ共通の敵が迫っている訳ですからね」


 この状況でも二人の引き渡しを要求するようなバカなら相手にする価値もないのだが、流石にそこまで愚かではないので少し安心した。


「それにしても敵の目的は何なんでしょうか? 内通者を居ると思わせて僕達の注意を逸らし、その間に魔物の大群を編成したとかですかね?」


 内に注意を向けさせて実は外で、という奴だ。もっともこれは自分でも無理がある自分だと分かっている。


「それにしては数が少な過ぎるでしょう。本気で王都を攻め落とすのならば最低でもこの十倍の数は必要になります。それにこの段階でこちらに気取られては意味がありません」

「それじゃあそれも囮とか?」

「だとすると狙いは内、つまりは王都の中で何かをするつもりということになりますね。確かにそれは我々としても警戒していますが、それだと回りくどい割には効率良いとは言えません。考えればもっといい方が幾らでもあるでしょうに」


 確かにこんな面倒な騒ぎを起こさずにひっそりと動いた方がまだ効果がある気がする。現に動いたことで僕達に警戒されている訳だし、それが目的なら逆効果と言えるだろう。


 そこで僕はマップを開いて件の魔物が迫っている方向を探ってみる。すると確かに赤い光点がゆっくりと王都に向かって迫っているのが確認できた。


 レベルを見てもそこまで強い個体はいない。最強の奴でも52と例の迷宮の魔物と同じくらいだしこれなら勇者の仲間が手を貸す必要もないのではないだろうか。


(重要クエストが現れる様子もない。だとすると本当に手を出さなくてもいいのかな?)


 少なくとも無の神はそう判断したということだろう。ならばそこまで警戒する必要はないのかもしれない。


 そんな事を考えていると、そこで扉がノックされた。


「ああ、フローラ殿を呼んだのじゃよ。今回の件についての意見を聞こうと思うてな」


 魔王についてはこの世界で第一人者だという話だしそれも当然か。そう思って僕は特に気にしなかった。マップに光点がないのも彼女なら当然の事だから。


 そして扉が開き、


「え?」


 僕は思わず声を漏らした。

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