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僕は姉の代理で勇者――異世界は半ばゲームと化して――  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
第一章 異世界への旅立ち チュートリアル編
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第九話 縛り

 それから色々と話と結果、思った以上の収穫が得られた。


 まず内通者についてだがミーティアの話からすると、それらしき人物は一人に絞ることが出来たのだ。


 他にも数名は候補者はいたのだが、ステータスを見る限り怪しい所はなかったし、何より直接会っても何も起こらなかったのでたぶん違うと言う結論に至ったのである。


 そうして残った一人は残念な事に今現在、この村にはいない。


「残るは行商人のエボラって人だけね。彼は月に一度か二度、大きな街で仕入れた商人を届けにくるわ」


 そこでこの村では手に入りにくい生活必需品を買う村人も多いらしい。


 中年ぐらいのおじさんで特に怪しい点はないと思うというのがミーティアの評価だが、この目で確認するのが一番だろう。なにせこっちにはステータスが見られる能力があるのだから。


「運が良ければ近日中に会えると思うわ。そろそろここに来る時期だし」


 これは余談だがこの世界の日付は八柱(・・)の神々から取って、火、水、風、土、雷、氷、光、闇で年と月と日が構成されているとのこと。そして一月は四週で一週間は八日だ。


 現在の日付は第百二十三の水の年、火の月、第三の土の日だとか。

 そして明日は第三の雷の日で来週は第四の土の日となるらしい。


 地球と比べると百日ほど一年の日数が少ないから、四季のそれぞれが約一月なくなったと見ておくといいかもしれない。


 ちなみに一日の時間などは向こうと同じだった。


「あの人が来るとしたら第三週の光か闇の日になるはずよ。いつもその休日の時を狙って来ているから」

「それじゃあそれまで待つしかないか」

「そうでしょうね。まあ話すなら早めの方がいいわよ。遅くなると他のお客も増えるし、グッチさんなんて休日だからってその場で買ったお酒を呑み始めるんだから。絡まれた延々と酔っ払いの話を聞かされることになるわよ」


 どうやら先程のキールさんはそれを回避させてくれたらしい。その気遣いに感謝である。


「確かにそれは遠慮したいな」


 そう答えながら僕はある疑問を頭に思い浮かべていた。


 風の神に聞いた話ではこの世界には創世九神と呼ばれる九柱の神がいるはずだ。だがミーティアに聞いた日付の話から察するにこの世界では神は八柱しかいないと思われていることが窺える。


 そして九柱の神については聞ける範囲で聞いているからそこに入っていない神は必然的に導き出せた。


(残る一つは無の神、だったよな)


 そこで思い浮かぶのがスキルにあった無属性魔法という奴と飛ばされる時に聞いた女の人の声だ。これらは何か関係がある気がしてならないのは僕の気のせいだろうか。


 もちろん僕はそのことをミーティアに何か知らないかと尋ねるつもりだった。


 だが、


「っ!?」


 それはこれまでの物とは比較にならない警告音と表示されたそれによって阻まれてしまった。もはや余りの音に頭が痛くなるほどで思わず額に手を当てる。


 更に表示されているそれを見て僕は苦笑するしかなかった。


(『重大ペナルティを犯そうとしています。今すぐその行為を取りやめてください』か。わざわざこんなものまで表示するってことは余程ばらされたくないのか)


 どうやら他人に無の神関連の事を知られるのはこのメニューを授けてくれた神にとってかなり不味い事らしい。


 だがそれがあの風の神なのか、それとも別の神なのかはわからないけれど今の僕には従う以外の選択肢はなかった。


「どうしたの?」

「いや、何でもないよ」


 様子がおかしいと思ったのかミーティアがそう尋ねてくるけど僕はこう言って誤魔化すしかない。そう考えると思った以上に面倒な制約を課せられたものだ。


「それにしても、よく僕に協力する気になったよ。自分で言うのも何だけど、かなり怪しい奴だろうに」

「……どうやってか知らないけど、必死に隠していた私の素性を知ってる相手に逆らうなんてできないわよ。下手に抵抗したら何されるかわからないもの」


 それは堂々と本人に言ってしまっていいのだろうかと思うが、まあ大丈夫だから言ったのだろう。こちらとしては脅す気など更々ないのだが、それを証明する手立てもないのでどうしようもない。


 なので、せめて協力するから素性をばらさないという約束を厳守することは宣言しておいた。言葉だけでは信用されないだろうが、何も言わないよりはマシである。


 正直に言えば奴隷などのことも聞いてみたかったが、明らかに本人が聞かれたくないというオーラを発していたので自重することにした。


 それにその事を尋ねたらより一層、何故こちらがその事を知り得たのかという疑問を与えることになり兼ねないし。


 そこで会話が途切れて一瞬の静寂が生まれた時だった。新たなクエストが現れたのは。


 しかもそれは一つだけではなかった。


 重要クエストは『エボラに会え』とこれまた端的な題名である。時間制限も図ったように次の闇の日までとなっていたのは流石と言うべきだろう。


 そして今回はその他にも幾つかのクエストが表示されていた。それらは通常クエストでその数は三つ。


 一つ目が『ゴブリンを15体討伐せよ』。その横にはゲームでよくある数を数える為の数字が表示されていた。


 二つ目が『薬草系アイテムを10個回収せよ』でこれまた数字が隣にある。


 最後が『レシピを使って合成を一度成功させよ』だ。ただこれはレシピがないのですぐにはクリアできそうもない。


 通常クエストの方には時間制限もないようなので、クリアするのはいつでもいいのだが他にやる事もないのだ。


 経験を積む意味を込めて早めに片付けてしまう事にしよう。それにもしかしたら、そうすることによって他のクエストも出るかもしれないし。


 今のところクリア出来そうなのは通常の一つ目と二つ目。その二つの内で簡単そうなのと言えば、


「いきなりで悪いんだけど、ここら辺で適当な薬草が取れそうな所を知らない?」


 急なこの発言に怪訝な顔をしながらもミーティアはその場所を教えてくれた。こう考えると彼女と知り合ったことは非常に有益だったし、もしかしたらそれを見越した上であのクエストがあったのかもしれない。


(だとしたら、このシステムはとんでもないな)


 これまでの経緯でクエストについても何となくだがわかってきている。だが、これから先の事も考えると早い内にこのペナルティを含めたチートの能力などの詳細を把握しておきたいのが正直な所だ。


 その為にも、悪いが彼女には色々と協力してもらうことにしよう。ミーティアには無断で僕は勝手に決定を下すのだった。

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