第七話by猿。
おそらく一部追記されます。
「自己紹介がまだだったよね」
そう言ってお医者さんは私の肩を軽く掴みました。
「こちらが陽太君のお姉さんで花音さん。で、こちらがミカコさんね」
私は一体どんな顔をして立っていたのでしょうか。じっと見詰めていたのでしょうか。睨んでいたのでしょうか。ただ分かるのは、暴れだそうとする心を自前の理性を振り絞って押さえつけようとしている自分がいたことでした。他人を憎むより自分を卑下するのが楽だと考えていた数分前までの私は姿を消して、あの時と同じ憎悪が湧き上がってきました。未だに私の中から溢れたそうとする感情に卑しさを覚えたのは言うまでもないことでしょう。私が思っていたよりも弟を失った悲しみとやりきれない感情は深かったようでした。ミカコはソファーから立ち上がり、「来てくれてありがとう」と微笑んで私を迎え入れてくれました。ミカコは何を思ってその表情を浮かべていたのでしょうか。私が陽太の姉であるという事も、また私がミカコを嫌っているという事も彼女は分かっているはずです。何故そんな顔が出来るのか。ただでさえ暴れ出してしまいそうなこの心は、ミカコのその表情を容認できるはずがありませんでした。
私のちっぽけな理性が崩れていく音が聞こえました。何故笑顔を浮かべていられるのだろうかと。その笑顔が陽太を殺したのだと。憎悪に支配された私がどんな罵詈雑言を撒き散らしたのか。たとえ覚えていたとしても誰かに言うような事態は起きないでしょう。平静を取り戻し時、私はミカコの足元ですがり付くように丸くなっていました。それだけで何をしてしまったのかが分かり、惨めな自分をどれだけ嫌った事でしょうか。彼女はそんな私を抱くようにして耳元で「ごめんなさい」と呟いたのです。その声は震えているようでした。
長らく間が空いてしまいました……。まあ、致し方ないので許してくださいm(_ _)m やっぱりリレー小説は連携がうまくいかないと……