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第三十二波、美味しく食べている人には悪いが、無理




 服を選び終えた俺は早速着替えた。上下ともに染色されてないクリーム色の生地のTシャツと長袖のズボンだ。肌寒い。つうか、生地が薄すぎる。羊毛のセーターも買うことにした。


「何だか余計に子供らしくなったでありマスな」

「うるさい!」

「そっちの服はどうするんだ?」


 学生服しまいたいけど、リュックやバッグとか持ってないんだよな。


「後でバッグも買わんといけないな。どれ、今は私が持っておいておこう」

「ありがとうざいます、アァドバァグさん」

「準備は出来たかな?」

「はい、行きましょう」


 おっさんの後に続き、三軒隣のワインボトルの看板を立てたぼろっちい建物の中に入る。中ではさっきのおっさんたちが既にコップを手に皿に盛られた食べ物をつまみながらよろしくやっていた。


「おう! やっと英雄さんの到着だ!」

「へっへっへ! ますますガキみてえな服装だな! こっちに座れや!」


 高校一年はおっさんから見ればガキだろうな。決して俺が小さいからな訳がない。


「おう、まずは一杯飲め」


 渡されたのは木のコップ。中には赤紫色の液体が入っている。葡萄酒か? 一口含んでみると、かなり水で希釈されてるっぽい。薄めればいっぱい飲めるからなのか?


 でもこんだけ薄けりゃ俺でも余裕だな。以前親父のビールをちょろまかして記憶があいまいになったようにはならんだろ。あの時の拳骨は痛かったな。


 くそ! 家族のこと思い出しちまったじゃねえか! 酒で忘れてやんよ!


「ちょっと、あんまり飲んだらいけないでありマスよ!」

「うっせえ! 飲まずにいられるか!」

「馬鹿野郎!」


 え。何で俺今殴られたの?


「神様のお言葉に酒に溺れるなかれってあるだろうが! 飲みすぎると罰が当たるぞ!」

「は、はい。すんません」


 神様とか信じてるのか。それもかなり敬虔な教徒のようだな。慈悲深い表情で殴られたのは流石に初めてだぜ。


「まあ、これでも食え。美味いぞ」


 渡されたのは……何だこれは。魚が透明な物体の中に入ってやがる。


「何すかこれ」

「ウナギのゼリーだ」


 は? ウナギの? 何言ってんのこいつ。こんなの食える訳がないだろ。


「遠慮するな! 殴ったのは悪かった! お詫びの印だ! 食ってくれ!」


 あれか。一見まずそうだけど、いい感じに味付けされてるのかもしれない。スプーンを手に取って一口食ってみる。


「う、え」

「な? 美味いだろう! ゼリーの部分だけじゃなくて魚も食っていいぞ!」


 ゼリーに魚臭さが染みついて味はないのに臭みだけが口の中に広がってきやがる。人の食い物じゃねえぞ! 吐き気がする。


「私も食べていいでありマスか?」

「おお、もちろんだ」


 へっへっへ。レェヴェチの奴食った瞬間固まってやがる。お前もさすがにこれは無理だったようだな。


「ミヤタタツオ。譲ってやるでありマス」


 表情が少し青くなってんな、同情はするが俺も食いたくないんだ。人柱となってくれ。


「遠慮すんなよ。どんどん食っていいぞ!」

「元々ミヤタタツオのための宴でありマスし食べるでありマス!」

「ばっか、普段世話になってるお前への感謝の気持ちだから無理するな!」

「ははは、もう一人前持ってきてやるよ」


 やめろぉ! 殺す気かてめえ!


「レェヴェチ一緒に食おうぜ!」

「仲良く半分でありマス!」


 そして俺たちの前には直径二十センチの平皿に乗っかった半円状のゼリーが残された。中にはぶつ切りのウナギが入っている。


「どうするでありマスか……」

「馬鹿、食うわけが……」


 やべえ、何か周りから見られている。


「それはここらじゃ人気の料理なんだよ。どんどん食ってくれ」


 善意の視線が胸に痛てえ。他のテーブルに逃げるか? いや、他のテーブルにも何皿も置かれている。これ食い終えてもお代わりはいくらでもあるってか? くそ!


「お前さんたちもどうだい?」

「俺の口には合わん。肉の方がいい」

「私も魚は苦手でね」

「わ、私もお肉がいいわ」


 イケメンたちは回避しやがったか。イケメンだけは食えよ! 無様な姿を見せてくれよ!


「何だ、お前らよくそんなものが食えるな」

「そんなものとはひどいな、ははは」


 肉串を食いながら言うとかイケメンてめえ覚えてろよ。おっさんたちが好きな料理馬鹿にされて苦笑してんじゃねえか。傷つけてやるなよ……。


「おっさんたちが可哀そうだ。レェヴェチこれを食うぞ」

「ええ!? ミヤタタツオだけでやって欲しいでありマス」

「無理に決まってんだろ! 借りは後で返すからさあ!」


 高さが十センチはあるんだぞ。俺一人で食べたら死ぬわ。


「この借りは……とっても大きいでありマスよ?」

「分かってらあ! かっこめ!」

「ええい! 一気に飲みこめば味なんて関係ないでありマスぅ!」




 やっぱり無理でした。


「おい、置いてくなって……」

「うええ。お腹から何かがこみあげてくるでありマス……」


 宴会はあれから盛り上がって来てたっぽいが、俺らは体調不良を訴え早めに帰ることにした。


「断ればよかっただろう」


 イケメンてめえ……。お前の余計なひと言さえなきゃ俺だってなあ。


「ま、今日はゆっくりと養生することだ」

「そうします……」

「ほら、大丈夫?」


 ジュヴラリクさんに背中さすってもらえるだけで元気百倍ですよ!


「ぐ、うええ……」

「吐くなら思い切り吐いておけ」


 レェヴェチの方は陥落したか。ふふふ、だが奴は四天王の中でも最弱。俺は吐き気などには負けんぞ。


あくまでイメージで語っています。ですから本当は大変な美味なのかもしれません。本当に食べてみて美味しいと感じた方は是非どのような味がしたか教えて下さると助かります。 

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