第三波、自己紹介
俺の前に現れた人々その一。俺にゲロ袋くれた女の子。俺のすぐ隣にいる。黒髪を肩まで伸ばし、白を基調としたトーガのような体を一枚の布で包み込むような服を着ている。顔は童顔だが身長は百七十の壁にぶち当たった俺と大体同じ……くそったれ!
俺の前に現れた人々その二。こんな事もあろうかの人。戸を開けた所で立ち止り、俺の事を見ている。黒髪をスポーツ刈りにし、体の各所にプレートアーマーを着けている。大きな目をくわっと広げて睨んでくるのは威圧感ある。
俺の前に現れた人々その三。岩を犬にぶつけた美人さん。金髪を背中まで伸ばし、キツメの目がまたたまらない。ポンチョを着用しているがそのスタイルの良さは分かりますぜげへへへ。
俺の前に現れた人々その四。
「何でレェヴェチが泣いてるか説明して貰おう」
ロクに事情を聞かずナイフを頭に突きつける金髪イケメン。
「いやいやいや、何の冗談すか」
やべえよこのイケメン。いきなり刃物出してくるとか頭おかしいんじゃねえの。床に座ったままの俺の目ん玉に刃が刺さりそうなんだよ、頼むからやめろ下さい。
「私が悪いのでありマス! だからナイフを離してやるでありマスよ!」
ナイスフォローだレェヴェチ。こいつの誤解を解いてくれ。
「本当か?」
レェヴェチが泣いていた事情を説明すると、イケメンは納得し俺からナイフを離した。そして差し出される手。
「すまなかったな、俺はジャアァグ。冒険者だ」
「いきなりナイフ突きつける奴の手とか、危なっかしくて触れねえよ」
おっと、本音が。
「……そうかもな。悪かった」
意外とマトモだな、あくまで意外とのレベルだがね。
「紹介しよう。こいつはアァドバァグ」
イケメンは場を仕切り直し自己紹介タイムに移った。
「アァドバァグだ、よろしく」
「よろしく」
目力のあるおっさんはアァドバァグさんと言うのか。
「こっちはジュヴラリク」
「よろしくね」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
で、美人さんはジュヴラリクさん。第一印象は大事だから紳士的にいこう。だが、な。
「にしても、あんたら……あいつの蛮行を止める気なかったのかよ」
仲間ならあのイケメン止めろよ。俺は死ぬかと思ったぞ。
「いつもの事だからな」
「いつもの事なんだもの」
なにそれ怖い。つーか、周りからも呆れられてるんだな。残念なイケメンって奴か。
「うおっほん! そんで、こいつがレェヴェチだ」
で、最後はあいつか。
「よろしくでありマス」
「おう」
ああ、うん。知ってる。
「何か扱い軽くないであるマスか!?」
「いや、相応の扱いだろ」
「うう……慰めて下さいジュヴラリクさん」
「よしよし」
うらやましいな、あいつ。代われよそこ。
「おい、こっちは名乗ったんだ。お前も名乗れ」
あのイケメンも時には正しい事も言うんだな。
「そうだな。俺は宮田竜夫だ。以後よろしく」
「ミヤタタツオ……? それが名前か?」
「変な名前ねえ」
「そうでありマスな」
うるせえ日本語喋ってるくせに外人っぽい見た目と名前しやがって。この際だ、こいつらに事情を聞いてやろう。
「ここどこなんですかね」




