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第二十九波、なあ戦況大丈夫なの?




 夕食兼作戦会議の席で明日俺のお披露目会をしたいとカイゼルひげのおっさんが言った。


「さきほどの魔法を見せてやれば、味方は大いに安心するでしょう」

「しかし私はミヤタタツオのことは実戦まで秘密にした方がいいと思うのだが」

「それも一理ありますな。ですが、それも秘密が秘密であればこそ。今日ドラゴニック傭兵団がミヤタタツオ殿により壊滅の憂き目に合ったことでもはや情報は広がっております。秘密にしても無駄ではありませぬか?」

「どうかしら。私にはミヤタタツオさんからは魔力の流れが感じられなかったわ。異世界から来た彼の魔法は私たちのそれとは全く異なる原理で作用しているようね。もし魔法の素養のある者なら今日の出来事は魔法によってなされたと考えないと思うわ」

「だがただの斥候が紛れていたならそこまで分かるまい」

「それもその通りね」


 やっべ。会話の流れに付いて行けねえ。

 つう訳で夕食兼作戦会議が終わった足でそのまま俺たちの部屋に戻る。俺しか参加許されなかったのさ! つうか暗くて狭い石造りの通路を歩くの怖ええ。もっとたいまつの感覚狭くしてくれよ。それとたいまつの炎むき出しで危ないから何とかしろ。所々消えてる場所あったじゃねえか。


 あ、ようやく着いた。にしても賓客用の部屋らしいがフャトミトュウの自室より遥かに豪勢な部屋なんだよな。


「おーい戻って来たぞ」

「ヒューイ!?」


 俺の目の前でレェヴェチが裸になっていた。あざーっす! 体の方は意外と育っておられたんですね!


「見るなでありマス!」


 ごぶふぉ!? はっ、ナイスな右ストレートだぜ……あれ、頭がくらくらするぞ?




「んん……」


 あれ、俺いつの間にか寝てたっけか?


「ようやく気が付いたか」


 イケメンか。無愛想でもキラキラ輝いてるお前にはイラッと来るよ。


「あれはミヤタタツオが悪いのでありマスよ! ノックするのは常識でありマス!」


 何か顔を真っ赤にしたレェヴェチが叫んでんな。ああ、そういやこいつの裸を見たのか。


「そんなことより今日の会議のことを話し合いてえんだけど」

「話してみろ」

「無視するなでありマス!」


 だが断る。


「アァドバァグのおっさんとジュヴラリクさんは?」

「外に出ているが、直に戻って来るだろう」

「うがあああ!」


 そうはいくか! ベッドに横になっていた俺は掴みかかるレェヴェチを回避! 逆に後ろから羽交い絞めにしてやったぜ!


「どうだ! 降参しろ!」

「卑怯でありマス! 元々ミヤタタツオが悪いんじゃないでありマスかあ!」

「だからって一々暴力振るわれてたら俺の体がもたねえんだよ! 大人しくしやがれ!」


 顎にためらいなく拳を振りぬきやがって!


「何をしている?」


 おっさんとジュヴラリクさんが帰って来たか。じゃあ話を始めるか。レェヴェチはこのまま拘束しとくってことで。


「実は……」


 俺は夕食の席で話し合われていた内容を伝えた。戦争に俺が投入されるらしいこと、一週間以内にフャトミトュウの兄が増援を引き連れてこの町にやってくること、増援の到着後数日以内に戦地に向かうこと、俺の存在は斥候が報告したとしても信じる可能性は少ないだろうから隠しておくこと、戦地には五日もあれば着くこと、それに敵はズヴァイドン帝国とザゲズマ王国ということ。


「ということ何だがとりあえずズヴァイドン帝国とかザゲズマ王国について教えて」

「よかろう」

「そろそろ疲れたでありマス……」


 俺も疲れて来たが、謝るならお前からな。つうか体力ありすぎだろ。そろそろ抵抗諦めろよ。


 おっさんの話によるとズヴァイドン帝国はスペゥバスが始祖の三百年くらい前に出来た国だそうだ。スペゥバスは元々プリピァグ王国の中小貴族に過ぎなかったんだが魔王から魔法を授かって王国を滅ぼし帝国を築いたんだとさ。


「え? じゃあそれまで魔法はどうだったの?」

「使えなかったとされている。またスペゥバスは魔法を授かる代償としてこの地上に魔王の眷属である魔獣が住むことを許した」


 帝国やべえな。あからさまに敵じゃねえか。


「つうか魔法を使える帝国に抵抗なんて出来たの?」

「スペゥバスは魔王から授かった魔法を部下に教え世界は帝国の脅威にさらされた。しかしオヴェクト神と契約したウサール家が神術を授かったほか、帝国の残虐な政策に見切りをつけたスペゥバスの部下が亡命し魔法を世界中に伝えたため帝国の世界征服の野望は打ち砕かれたのだ」

「神術と魔法の違いって何?」

「神術はウサール家がオヴェクト神から授けられた神の書がなければ発動できないのに対し、魔法は適切な呪文詠唱さえできれば多くの人間が使える。よって神術より魔法が広まっている。そして戦争の原因も神の書にある」


 何でも神の書を手に入れたウサール家は聖オヴェクト地上国を建国してたけど、神の書をなくしちゃったんだって。んで、弱ってる今が好機だ! って帝国に攻められてるんだって。馬鹿だなあ。


「でもそれじゃ、フャトミトュウの戦う理由は? この国はメグリアっていうんだろ。関係ないじゃん」

「ただでさえ強大な帝国が聖オヴェクト地上国を併合したならば、メグリア王国に勝ち目はなくなる」


 簡単に説明すると大陸の右半分丸々全部帝国領で左側の下三分の一を聖オヴェクト王国、中ほど三分の一をメグリア王国、左上三分の一をウァーテル共和国とザゲズマ王国で半分ずつ領有してるそうだ。確かに聖オヴェクト地上国が奪われたらメグリアは詰むな。いやでも現状でも厳しくね? まあこれ以上厳しくなったら終わるけど今まで大丈夫だった理由は何でだろうな。


「ピクシナ王国とメシュルファという島国が大陸に干渉することで今までの均衡は保たれていた」


 へえ。次、ザゲズマ王国ってのは?


「ザゲズマ王国はメグリア王国四代目国王の時に分裂した国家だ。メグリアが帝国との戦争で苦戦しているのを統一の好機と見てメグリアに侵攻している」

「戦況はどうなの?」

「帝国は魔法先進国だ。おまけに人口も多く軍は質量共に優勢で、聖オヴェクト地上国は南西部を残して占領されているという話だ。メグリアとピクシナが送った援軍も帝国相手に苦戦しているようだな」


 ザゲズマは?


「あそこは当初はメグリアピクシナと一緒に聖オヴェクトに援軍を送ったんだが、当代の国王が気移りしやすい性格で帝国の優位を知った途端いきなりメグリアへ攻撃してきたそうだ。すぐに撃退してメグリアが逆侵攻中だと聞いている」


 噛ませ犬臭しかしないな。


「で、俺が行ってどうこうなる相手なの?」

「分からん。私もそう詳しく情報を収集していた訳ではないからな」

「えー、ミヤタタツオのズガーンドガーンな攻撃なら何にでも勝てそうでありマスよ?」


 だよな。俺もそう思ってたわ。余裕で勝てるって言ってくれると思ってたのに、おっさんは渋い顔を崩さない。


「もしかして、帝国って相当強い?」

「当たり前だ。帝国の魔法技術は世界一だぞ」


 ですよねー。国家相手に個人が無双できる訳ないよねー。俺も大概反則的だけど、帝国には魔法あるもんねー。意外とどっこいどっこいかもねー。


 ……。


「逃げちゃだめかね?」

「今更逃げても捕まるぞ」


 ですよねー。


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