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第二波、進展なんてないよ!




 空を飛行しているのはアメリカ空軍がソ連とガチンコで殴り合いする為に開発したタンクキラーA-10攻撃機。


 戦闘用航空機としては無類の防御力や長時間の滞空が可能な事に加えて、一番の特徴はGAU-8”アヴェンジャー(復讐者)”30ミリガトリング砲ではないだろうか。


 A-10と言えばアヴェンジャーだし、アヴェンジャーと言えばA-10。


 その強靭無比な破壊力はバルカンの愛称を持つ20ミリガトリング砲M61なんぞとは比べるのもおこがましい。


 火の神バルカンを超える復讐者アヴェンジャー。かっけえよう。まじリスペクト。


 あ、両翼を上下に振ってる。


「何なんだあの怪鳥……まさか、あれがティーハドゥを殺したのか……?」

「ちょっとちょっと! あの破壊力やっばいんじゃないの!?」

「畜生! 空を飛んでるんじゃ俺には手が出せねえ!」

「私達。ここで死ぬでありマスか?」


 うん、現実逃避だって事は分かってる。


 しかし目の前に小山のように大きな肉塊が濃厚な血の匂いを鼻孔に送り込んできて、さらに時代錯誤な格好をした謎の集団が辺りで騒いでるんだぜ?


 もう無理だわ……意識、が……。




「うああ」


 あれ、俺いつの間に寝てたっけ? そうか、補習でみっちり絞られて疲れてたもんなあ。うっかり寝て……いやいやいや!


 ここは、どこだ?


 チクチクと肌触りの悪い……何だろう、わらかな。藁っぽい植物の敷き詰められたベッドらしきものに横になってるんだな、俺。どうしてこうなった。


 大体この部屋、窓もないとかどうなってんだよ。薄暗くて気味が悪くて仕方ない。


 嘘だろ、おい。辺り見回しても照明器具が見当たらねえ。


 つーか、部屋の隅。


「何であんたそんな場所で縮こまってんの?」

「ヒューイ!?」


 奇声を上げたのはこのクソ狭い部屋の隅に体育座りしてる女。


「ご、御加減はどうでありマスか?」

「ああ、別に問題は……」


 この声聞き覚えがあるぞ、確かデッカイ犬と戦ってた女の子だ。


「うぼろろろろ」

「うわあああ! いきなり嘔吐でありマスか!?」


 仕方ねえだろ、こっちはあんなに濃い血の匂いやら腸がはみ出てる肉塊とか初めて見るんだよ。うぅ、思い出したら記憶が鮮明におぼろろろろ。


「これに吐くでありマスよ!」


 おお、助かる。よく分からんが動物の革で出来た袋を手渡されたのでそこに吐瀉。


「ありがとう、助かった」

「いや、返されても困る……ああっ! それは私の異次元収納袋ぉぉ!」


 何それ? おお、袋の中覗いて見たら袋の口に比べて明らかに容積が広くなってら。だからスーパーのレジ袋程度の大きさなのにあれだけ吐いても大丈夫だったのか。いや流石にレジ袋からこぼれるまでは吐いてねえか。


「うあああ~それ高かったのにぃ……」


 あらら、このお嬢ちゃん泣いちゃいましたよ。俺は全くもって悪くないのだが、まあ大事な物にゲロぶっ掛けて謝らないのも礼儀に欠けるだろう。


「そうか、それは悪い事を……」


 いやいや、ちょっと待て。俺は場の雰囲気に流されたりはせんぞ。


「何その異次元ポケットって?」

「異次元収納袋でありマスよ……空間魔法で見た目よりもたくさん物を入れられるのでありマス」


 いやその理屈はおかしい。


「空間魔法って……おいおい。あんたいくつだよ」

「十五でありマスが?」


 うわあ……十五にもなって魔法とか信じちゃってるんだ。引くわぁ。


「いい加減現実見ろよ……」

「な、何でそんな可哀想なものを見る目を私に向けるのでありマスか!?」


 だがちょっと待って欲しい。何でレジ袋程度の容積のこの皮袋の奥底が見えないのだろうか。これはまさか魔法とやらが本当に……やめろ! 俺が封印した中二の思い出が蘇ってしまう!


「し、静まれ……俺の右腕!」

「何を言っているんだ?」

「え?」


 部屋の戸が開け放たれて、そこから二人の男と一人の女が入って来た。ああ、ここ小屋だったのか。

 って違うううううううううううう俺の黒歴史を見ないでええええええええええええええええ!

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