表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

―曜―ひかり

作者: 銀 響

この物語は多少暴力的な表現、いかがわしい表現があります。(そういう意見がありましたので)

苦手な方はご注意ください。

―曜―ひかり


……一人にしないで


一人に……しないで


一人に……



ふと目を覚ませば、まだ夜だった。

……いや、朝かもしれない。

薄暗く、出口から離れた洞窟の奥では陽の光りなど届かない。

申し訳程度に壁につけられた松明も、ただ無機質な岩を照らすだけ。

足元を見ることさえ叶わない。

その明るさに近寄りたくても、その温かさを感じたくても、冷たい鉄格子に阻まれて。

寒さに身を震わせて、ビリビリに破けた毛布を体に巻き付ける。

服も泥だらけで、所々血が滲み、破けている。

吐く息も凍りつきそうな寒さの中、薄い服に薄い毛布、裸足のまま暗い牢屋にうずくまっているのは一人の少女。

長い黒髪は艶を失い、服と同様泥にまみれ、床に力無く広がっている。

もしかしたら、少女の身長より長いかもしれない。

丸く赤い大きな瞳は、何もない地面をただ映している。

不意に少女の口が動いた。

けれどそこから出るのは白い靄。

声は出ない。


「……ぁ、ぃ………ぃ」


叫んだつもりなのに、出るのは呼吸音か声かも区別出来ないほど小さな音。

少女の小さな手が、毛布を握りしめる。

異常に細いその体は、生きている事が不思議なくらい。


「……ぃ……ぃ、ぃ」


少女が自分の膝に顔を埋めた。

まるで世界の全てを拒絶するように。

その姿は声でいうよりも明らかに、「独りにして」と語っていた。

しかし少女の意思に反して、牢屋の前に屈強な兵士が数人訪れた。


「ティティル・エルハード! 処刑の時間だ! 神への懺悔はここまでだ」


兵士の口が引き結ばれる。

憎悪に染まった染まったその瞳は「許されるのなら今ここで引き裂いてしまいたい」という感情をあらわにし、 そこにいる兵士達全員がたった一人のか弱い少女を睨みつけていた。

少女・ティティルは微かに顔を上げると、ふらふらと立ち上がった。

けれど牢屋の出入り口に着かないうちに倒れる。

兵士は舌打ちをすると、二人がかりでティティルを引きずり出した。

そしてそのまま歩き出す。

まるで壊れた人形をゴミ捨てばまで持っていくかのように。

処刑台は崖の先に作られていた。

そこからは町を一望でき、同じように町のあらゆる所から処刑台を眺める事が可能だ。


「ティティル・エルハード! 貴様はこの国の未来を導く有望な人材をこの世界から葬り去った! よって死で償え!」


「違う!」……そう叫べるなら叫びたかった。

兵士に腕を掴まれたまま、ティティルは処刑台を見つめた。

ボタンを押せば、床が抜ける台。

その上には、太い縄。

首吊り縄だ。

ここで自分は首を吊って死ぬ。

大切な仲間を殺したという濡れ衣を着せられて。

兵士がティティルを処刑台を上らせる。

ティティルは頼りない足取りで、縄に近づいた。

そっと町を見れば、幾千の瞳が自分に向けられていた。

大きさも色も違う瞳が、同じ思いをあらわにしている。

「死ね」と。

町から目を反らし、空を見上げた。

懐かしい仲間の面差しが、浮かんでは胸に染みて行く。


「ぁ…………ぃ」


神様どうか……

もし私に願う資格があるなら


「早くしろ!」


兵士がいつまで経っても動かないティティルにしびれを切らし、ティティルの首に縄をかけた。


「……ぃ……たぃ!」


ティティルの訴えは兵士に届かない。

兵士は縄が外れないようにしっかりと絞めた。

そして抵抗出来ないよう両手を拘束する。


「…い…………ぃ」


神様

お願いします

もう一度、願いを聞いて


「死刑を執行する!」


兵士の声に、民衆が歓声を上げる。

兵士がボタンに手をかけた。

同時にティティルは最後の力を振り絞る。


神様お願いします

神様お願い……

聞いて……聞いて下さい


透明な雫が、床ではねた。

兵士がボタンを押す。

その一瞬前に。


ヒュパンッ


ティティルの首に絡んだ縄が切られた。

飛来した矢によって。

次いでティティルの体が弾かれる。

横から飛び出した人影によって。

人影はティティルを抱きしめたまま、処刑台から落ちた。

幸か不幸か、ティティルと人影は崖からは落ちなかったようだ。

兵士がティティル達を取り囲む。

けれどそれもつかの間、すぐ包囲を解いた。


「よかった……間に合った……。」


ティティルは耳を疑った。

聞いた事のない声だ。

牢屋に閉じ込められていたときは。

それより前には、聞いた事があった。

いつも聞いていた。

低く重い……懐かしい声。


「あ……」


顔を上げてみた。

そこに彼らがいると知って。

逆光で顔は見えない。

だが見なくても分かる。

わからないはずがない。

だって、この世界にいるかどうかもわからない神様という存在にすがっても、叶えたい願いに必要な人々だから。

彼らがいるからこそ叶う願いだから。


「ティティル……無事か?」


そう聞く彼等の方が痛々しい姿なのに。

ティティルは精一杯彼に抱き着いた。


「ただいま、ティティル」



「おかえり……皆!」



神様お願いします

神様お願い……

聞いて……聞いて下さい

もう一度、仲間に会わせて

仲間に会いたい


その言葉が声にならなくても、願いは届くものだから。

強く

強く

願って。



―曜―ひかり 完


はじめての投稿になります。

小説を書くのも慣れていません。

意味不明な箇所があるとは思いますが、できるだけ見なかったことにしといてください。

やさしい方は、注意してくださると助かります。

暇つぶしに読んでいただけたら幸いです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 普通に楽しんで読めました [気になる点] ストーリー、文章ともオリジナリティが 少ない気がしました [一言] 微妙にHな雰囲気がよかったです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ