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第7話 五色の竜の導仙

五色(ごしき)の竜は導仙(どうせん)を得ると、それぞれに神獣に進化する。俺は黄竜(おうりゅう)だから、進化したら麒麟(きりん)になる」

「秘果さんも、竜、なんだ」


 この流れだと、それほど意外でもない。

 この美しくて優しい人が竜神様だと言われたら、そうなんだろうと思えた。


「蜜梨ちゃんはね、導仙の中でも更に特別な存在なんだ。それについては、また今度、話そうか。一気に色々聞いても、覚えきれない、というか受け止めきれないよね」


 秘果が話しながらずっと蜜梨の頬を撫でてくれる。

 それがやけに安心できた。


「全然、わかんないし、実感、ないけど。秘果さんが竜なのは、納得かも。さっきも強かったし、綺麗だから」


 秘果が撫でていた手を止めた。


「そういうこと言うと、キスしたくなる。いいの?」


 冗談めいた言葉に、ドキリとする。


「え? でも、秘果さんが黄竜ってことは、導仙ていうのがいるんだよね? 浮気にならないの?」


 導仙は番と話していた。つまりは夫婦になる相手なんだろう。

 秘果がぱちくり、と瞬きした。


「俺の導仙候補は、蜜梨ちゃんだよ」

「え? え? だって俺、男だよ? 伴侶になるなら、女の人じゃないと、無理だよね?」


 秘果がまた、ぱちぱちと瞬きした。


「そっか、ごめん。言い忘れていたけど、桃源には雄しか存在しないんだ」

「え⁉ 繁殖できんの?」


 蜜梨の問いに、秘果がクスリと笑んだ。


「桃源の神獣は、一般的な生物のように牝牡の交尾で生まれる生殖体系とは違うんだ。むしろ、雄と雌の交尾で生まれると普通の獣になっちゃうから、桃源に雌は立ち入り禁止なんだよ」


 蜜梨は、あんぐりと口を開いた。


「何ともBL仕様だね」

「雌だけの神獣の国もちゃんとあって、そっちは:源郷(げんとう)と呼ばれる。蜜梨ちゃんが好きそうな世界観でしょ」


 秘果が楽しそうに笑った。


「創作なら、好きだけどさ。そっか、秘果さんて、リアルBLの世界の神獣だから、BL抵抗なかったんだね」


 巷で腐男子仲間を見付けるのは難しい。

 というか、その中で神獣を引き当てた自分も大概だと思うが。


「現世風にいうなら、俺は腐男子でゲイかな。蜜梨ちゃんがBL好きなのも、この世界で生きていた名残かなって思うよ。だからSNSでもBL方面で探してた」


 秘果が愛おしそうに蜜梨の頬を撫でた。


「ん? もしかして秘果さんは、俺を探してた、の?」


 これまでの会話の流れだと、そんな感じだ。


「ずっと探してた。蜜梨ちゃんが凶の悪手で桃源から現世に堕とされてから、ずっと」


 秘果の手が蜜梨の両頬を包み込んだ。


「やっと見つけた。現世で姿を見付けた時から、この腕に抱きたかった。俺の導仙は、蜜梨ちゃんだけだよ」


 性急な唇が重なる。

 舌が割り込んで口内を犯して絡まる。


「ん……、ふ……、ぁ……」


 熱くて甘くて、胸が締まって溶けそうだった。


「ぁ……、ごめん。まだ蜜梨ちゃんは何も思い出してないのに。キスは、早かったね」


 秘果が慌てて蜜梨から離れた。

 熱が離れてしまうのが切なくて、蜜梨は秘果の手を握った。


「俺、まだ、色々よくわからないけど、秘果さんのキスは、嫌じゃない、から……」


 今のキスは、気持ち良かったし、ときめいた。


(今まで恋愛的な目で秘果さんを見たコト、なかったけど。今日の秘果さんは、いつもより色っぽくて、ちょっとドキドキする)


 蜜梨を見詰める目にすら艶が浮いて、目を合わせるだけで、心臓がうるさい。


「秘果さん、か」


 秘果が、ぽつりと零した。


「え? ダメ? 呼び方、変えた方がいい? てか、これって本名?」

「本名だよ。前の蜜梨ちゃんはね、俺を秘果って呼んでたんだ」


 秘果が蜜梨の額にキスをした。


「ゆっくりでいいから、思い出して。もう一度、俺を好きになって、蜜梨ちゃん」

 

 額を合わせた秘果の懇願の声に、蜜梨の胸が切なく締まった。

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