表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜神様の御気に入り  作者: 霞花怜(Ray)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/33

第25話 慶寿の番

 昨日は何か、怖い夢を見た気がする。

 内容はよく覚えていない。秘果と心惟が助けてくれた気がする。

 恐らく、その感覚は間違っていない。

 何故なら目が覚めた時、蜜梨の両隣に秘果と心惟が寝ていたからだ。


(男三人、川の字というより、ぴったりくっついて寝てたんだよね)


 秘果はともかく、心惟も蜜梨に隙間なく、くっ付いていた。

 ちょっと変な気分だ。


(普段は俺の中にいるんだし、くっ付くくらいなんてことないんだろうけど)


 くっ付くというより、抱きかかえられていた。

 心惟がわざわざ姿を現して蜜梨の隣で寝ているのなんか、初めてだ。

 しかも、秘果がそれを咎めなかった。

 それが何より、変だと思った。


「何かあったの? って聞いても、教えてくれないし。二人とも俺に隠し事、多すぎ」


 それはきっと、蜜梨を守るための沈黙で、二人が隠したい事実なんだろう。

 優しさだと、理解できる。それでも不満だ。


「これから一緒に生きていくなら、過去だって、今だって、向き合わなきゃいけない。そうじゃなきゃ、きっとまた……」


 秘果を危険に晒す。

 何も思い出せないのに、それだけは、はっきりわかる。


「それだけは、絶対に嫌なんだ」


 開いた手を強く握りしめて、蜜梨は慶寿の元に向かった。


 慶寿の部屋は別棟にある。

 ほぼ一棟が慶寿の私室と仕事部屋に宛がわれていた。

 この棟に一人で来るのは、初めてだ。


(しかもアポなし。叱られるかな)


 曲がりなりにも国の統治者の私室だ。

 仕事中だったら戻ろう。などと考えながら、蜜梨は棟の扉を潜った。


『蜜梨かな? 一人とは珍しいね。私に用かい?』


 どこからともなく慶寿の声がして、蜜梨は周囲をキョロキョロした。

 廊下には誰もいないし、気配もない。


「あの……、突然、すみません。慶寿様にお話があって……、聞きたいこともあって、きました」


 慶寿が笑った気配がした。


『秘果に内緒で来たのかい? 後で恨み言を吐かれそうだね』


 秘密にしてきたし、秘果なら本当に恨み言くらい言いそうで、何も言えない。


『いいよ、二人で内緒話をしよう。私の部屋においで』


 目の前に金色の光が燈る。

 光がフワフワと廊下を泳いでいく。

 蜜梨はその後ろを付いていった。


 棟の奥の大きな扉に光が吸い込まれた。

 扉が自然と開き、蜜梨を誘う。

 中に入ると、ふわりと香が薫った。


「こちらだよ、蜜梨」


 声のほうを振り返る。

 部屋の奥に置かれた大きなベッドに、慶寿がいた。

 天蓋の布が垂れ込めて、顔が見えない。


「ちょうど目が覚めたところでね。まだ動けないんだ。近くにおいで」


 手招きされて、蜜梨はベッドに歩み寄った。

 ベッドに横たわった慶寿がぼんやりと開いた目を上げた。


「お休みの所、すみません」

「休んでいたわけでは、ないんだよ」


 慶寿の腕が伸びて、蜜梨をベッドに引き上げた。

 ぽすん、と自然と慶寿の隣に横になった。


「桃源を広く見渡すには、体を眠らせて意識を飛ばすのが早い。私は桃源と繋がっているからね」


 慶寿の手が蜜梨の髪を撫でる。くすぐったくて、温かい。


「桃源と……。慶寿様が桃源の一部ってことですか?」

「そうだね。私と、私の番だった瑞希もね」


 慶寿の目が、枕元に向いた。

 つられて蜜梨も同じほうに目を向けた。

 ベッドサイドに、大事そうに置かれた大きな玉があった。


「それって、瑞玉ですか? 慶寿様の番は、もう……」


 本来、瑞希の体内にあるべき瑞玉が、玉の状態でむき出しで置かれているのは、そういうことだ。

 

「先立たれてしまったんだ。今は、瑞玉の姿で私を助けてくれているよ」


 慶寿の指が瑞玉を撫でる。

 ふわりと柔らかな光が、瑞玉から漏れた。


「話はできなくても、こうして触れれば応えてくれる。それだけでも、私は嬉しいんだよ」


 慶寿が柔らかく笑んだ。

 本当に愛しているのだと思った。


「けれど、お別れが近いかな」

「どうしてですか? やっぱり、瑞玉の状態でいるのは、無理があるんですか?」

「そうだね。この状態自体が自然じゃない。瑞玉は瑞希の心臓、体と共に朽ちるが道理だ」


 瑞玉が、光を落としたように見えた。


「それでも瑞玉として残ったのは、桃源に瑞希が不在だったからだ。しかし今は、蜜梨がいる」

「俺が、戻ってきたから、お別れが……」


 蜜梨の唇を慶寿の指が押した。


「お前のせいではない。お前が戻ってきてくれたから、私の番は天に還れる。魂が心を取り戻すんだよ」

「魂が、心を取り戻す」


 慶寿の言葉はどれも優しくてフワフワして、まるで夢の中で話しているみたいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ