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9/18

美郷

今考えている自分という何かを乗せた日常にゆっくりと、再来週、が訪れた。


そう言えば三峯教員によると、歳をとるにつれて人生における一年の比率がどんどんと短く感じる現象は気のせいでは無いのだ、とその現象に名前をつけた先人がいるらしい。

一分一時間一日一週間、数えられるほどゆっくりとしか時間が過ぎない私とは、真逆の現象が起きている人間もいるらしいから世は奇妙奇天烈である。


仮に真逆で無かったとして、私も、昔は今よりもっと一年を長く感じていたのだとすると、高校生の私に、中学生の私に、小学生の私に、海よりも深く山よりも高い敬意を表したい。



昼過ぎにおごと温泉駅で待ち合わせをした美郷はボストンバッグを肩にかけ、当時と変わらぬ囁き声で「久しぶり」とざんばらに切られた短髪を無造作に搔きむしった。


「久しぶりだね」

「元気だった?」

「うん」

「良かった」

「そういえば予定って何があるの?」

「予定なんて無い」

「無いの?」

「だって、そうとでも言わないと会ってくれないっしょ」

「そう? 私そんな感じ? 全然会うのに~」

 確かに会わない。美郷の鋭さはそういうところだ。


「昔からどこか掴めないし。楓は」

「そう?」

そんなことを言われても不思議と騙された感が無いのは、私の体に心が無いから若しくは美郷が持って生まれた才能なのだろうけど、昔からと言われても高々二年の久しぶり~な付き合いしか無いのでその言い回しだけは間違いだよと指摘したい。


美郷は、到着した私の住むマンションの玄関にバストンバッグを放った後、折角だし久しぶりの再会だし昼間から飲んじゃおうかと騒ぎ出し、わざわざ電車に乗って京都へ向かうことになった。


かなりの人混みに揺られながら、美郷は「秋の京都を舐めてたわ~」と反省し、十五時二十分を回った絶妙なタイミング故に特段待つことなく入れた川床には「やっぱり舐めといて正解~」と目を輝かせていた。


「この席、一番人気だって。通りで眺め良すぎだと思ったわ」

「ね。綺麗だね」

「本当に思ってる?」

私にも紅葉の綺麗さを理解する頭は辛うじて残っていたから、綺麗と思う感情は心から来るものでは無いのだと知る。


「思ってるよ」

「良かった。そういえば普通に飲み屋来ちゃったけど、お酒飲める?」

「うん」

「好き? 強い方?」

「好き。恐らくね」

私が注文した生ビール中ジョッキと、美郷が注文したゆず酒ロックで、グラスの背丈があべこべな乾杯をする。


お通しをつまんでいると、「楓ちょっと変わったよね」と癖なのかざんばら短髪を掻きむしった。「よね」という語尾は同意を求める時に使用する表現だから、変わったと思っていない私に対して使うのは文法として間違っている気もするけれど、この人は有名私大に通っていらっしゃるお方で多分間違っているのは私の方なので屁理屈は生で流し込む。

「変わった? どの辺が?」

そう聞きながら、しゅわっと弾ける泡が喉奥に広がる。両目が潤い光に満ちた。紅葉をより一層綺麗に感じる。

「う~ん。雰囲気。雰囲気が」

「雰囲気?」


「うん。目に光が無い辺りは変わらなくて安心するけど」

 今、両目が潤ったと思ったばかりなのに。


「なんというかさ。高校時代は、迷子のやせ細った猫みたいな雰囲気だったわけ。一人では生きていけないけど、でも誰も私に構わないで下さい。みゃー。みたいな声が聞こえたわけ」

「そうなんだ」

「でも今は、自分の居場所を作った猫になってる。別に一人でも生きていけますけど、私に構いたい人は構えば。にゃーん。みたいな感じになった」

「ありがとう」

「褒めてるつもりはない」

「ちょっと太ったからかな」

「それも思った」

「何それ。信じられない」

美郷はいつの間にか飲み干したゆず酒ロックを店員に手渡し、あんず酒を注文した。

次何飲むと聞かれ、まだ飲んでるから大丈夫と返答しながら、迷子の痩せ細った猫と自分の居場所を作った猫を二匹頭の中で飼い慣らし、あまりの違いに唖然とする。私は猫ではないと言いたくても、人間であると証明出来る感傷的な心も持ち合わせていないし、そもそも猫ではないと言いたいのかも分からない。


高校時代から僅か一年半、私は私の知らない間に他の人間から変化を指摘されるほど変わったのでしょうか。

この人間は私の何を知り、何を見て、何を語っているのでしょう。


そういえば三峰教員は、初回の授業が行われたあの日、書籍への感想文を書かせたあと、五人の感想レポートをさらっと読んだ後、

「全て間違いです」

と言い放った。


こんな短時間で、しかもなけなしの頭脳のたちが一応ペンを握って書いたレポートの何を読んで間違いだと言い張れるんだ、何でも良いと言っただろうこの眼鏡、と思ったのもつかの間、


「この書籍の全てが間違いなのです」

 と続けた。


「書籍に書かれている数字やデータが公表されている実数とまるで異なるということに気が付いた人はいますか。この世に存在しない著者および経歴であることに気が付いた人はいますか。どうやら、それを指摘しているレポートは一つもないようですね」と無表情で語る目の奥が笑っているように見えた。 


「哲学は非を唱えることです。疑うことから始まります。当たり前に存在するモノ。当たり前に正解であると考えられているコト。果たしてそれらは真なのでしょうか」


そうして知らぬ間に注文されていた生チョコレートがテーブルの上に置かれた瞬間、ああ、私はこの人間と相交わることは決して無いのだと悟りつつ、テーブルの上の生チョコレートは真ではないのかもしれないと一旦非を唱えた。


「時々連絡は取ってたけど、リアルで会うのはかなり久しぶりだもんなあ」

連絡をとっていたと言っても、定期的に来る一方通行のメッセージに返していただけである。

いつもタイミングを見計らったように、帰りのバスに乗っていたり、休憩中だったりするので、なんだかんだで返信が出来る状況だった。だけである。


「高三の夏以来だから……二年ちょっと? くらい?」

「こんな風に二人でお酒、飲む日が来るなんてね」

「まあ、うん」

返答に困る。二人でお酒を飲む日どころか、二人で会う日が来るなんてあの時は、というか会っている今ですら微塵も思っていない。


「学校は楽しい?」

 別に楽しいも何も、感情なんて無いけれど、

「うん。まあ」

「友達は出来た?」

「出来ないよ」

そう言いながら紅葉を眺める美郷の横顔は、ハタチを超えた割にはあどけない。制服でも着ていれば高校生に見えるのではないだろうか。今度、私の衣装を着せてみようか。


「出来ない? いや、作ってないの間違いっしょ」

人差し指を私の顔に向けながら、意地悪をする小学生のような顔で笑った。

人間の顔に人差し指を向けてはいけないんですよ、巷でそう語られる事由は知らないですが、取り合えず私は先端恐怖症とまでは言わないけれど先端が得意な方ではないので、と思っていると、

「あ、ごめん」

 早口で謝られた。

「ん?」

「だめだよね、人に指差しちゃ」

「ん?」

まさか心の声、漏れてた?

「いいや、楓の顔に書いてある。というより唇が動いてたという表現が正しいわ。やめてくださいって動いてた」

 そうかなるほど。読唇術か。読唇術?

「唇動いちゃってごめん」

 私がそう言うとざんぱら短髪を掻きむしりながら、「じゃあ先生は出来た?」と言った。今日三度目なのでこれは癖ですね。

「先生?それは出来るよ」

「何の授業?」

「フィロソフィーの授業」と答えると、「そっか哲学科だもんね」とさらりと返される。


「歴史を学ぶ感じ? それとも概念?」

「デカルトの研究が専門って言ってたけど、生徒には理解出来ないだろうから授業では教えないらしいよ。だから概念なのかな。哲学思想、哲学概論って感じ」

「なにそれ。興味深い」

「うん」と呟きながら、初回の授業の話をした。


火曜日の授業の話をした。

水曜日の授業の話をした。

木曜日の授業の話をした。

金曜日の授業の話をした。


「楓、好きなんだね」

話終えた私に、美郷が生チョコレートを箸でむにゃむにゃと抓みながら呟く。

「好き?」

「さすが哲学科だわ」


思い返せば、義務教育を過ごした高校生の時までも勉強はさして嫌いでは無かった。

小学生の時、授業を聞く位なら校庭でドロケイかエスケンをしたいのであると教室で叫んでいる人間の気持ちが理解出来なかった。


中学生の時は、幾らかは成長したのか授業中にわざわざ叫び出す人間は居なくなったとしても、だるまさんが転んだ形式の早弁に精を出す人間や、片方の耳に入れたワイヤレスイヤホンを髪の毛で隠し平然を装う人間を不憫に思った。


高校生の時は、もはや先生からの注意を物ともせず何でもかんでも有りになった人間が度々職員室へ連れて行かれる姿を見て、勉強の方が圧倒的に簡易だろうと首を傾げた。

仮に私にも友達がいたら、そっち側の人間になっていたのかは不明であるが、現実に友達のいない私には全く理解出来なかったし、授業中は周りの人間がつるまず取り敢えずは前を向いて座ってくれるので、なかなかに心の落ち着く時間だった。


だからと言ってトンビが鷹を産めるはずは無く、美郷のような秀才になる転機は訪れなかった。



高三の夏、コンビニバイトの中休み中、スマホに流れ込んだ広告から申し込んだ塾の無料体験教室は、通常コースに切り替わればトンビが支払えるはずもなく、支払う意味も理解されず、たった二週間で終了した。

もとより〈体験教室を受ければもれなく貰える! 三千円分のギフトカード〉に目がくらんだけでしたので、もれなく貰えた今は歯牙にもかけておりません。


「女の子に大切なのは愛嬌よ。何? 勉強? それはしてもしなくてもどっちでも良いから、沢山恋愛しなさい。男を見る目を養うの。結婚相手さえ間違えなければ人生安泰なんだから」


これこそが、母トンビから子トンビへ向けた人生一番の教訓である。


「折角の京都だし旅行だし紅葉の名所にでも行こうよ」というまたもや美郷の提案で我に返る。

空が朱に夕暮れ時が近付いていた。

一度は名所をハッシュタグ検索した二人だったが、川床から眺めた人だかりに「流石に無理だね」と、アパートで飲み直そうという話に落ち着いた。


帰り道、スーパーマーケットで買い込んだ大量のお酒から缶ビール二本とドライフルーツを選んで机の上に置き、その他を冷蔵庫の中に、氷の塊となった霜を避けながら押し込んだ。


この家にミヤビさん以外の人間が居るのは初めてのことなので、せめてペットボトルのゴミやミカンの皮は片付けようという気持ちは本音ではあったものの、それが実行される好機は訪れぬまま遂にこの瞬間を迎えてしまったのだから、あれは本音では無かったのだと考えを退けた。

「乾杯」

 ビールの缶をこつんと合わせた数瞬後、中身丸ごと飲み干す。やはりこうして私の両目は潤っていると確信した矢先、隣の美郷が「ビールにが~」と顔を歪ませた。

「ってか楓、これ使い方違うし」

と美郷が机の上に置かれたドライフルーツを見て立ち上がり、冷蔵庫の扉を開けて日本酒の瓶と炭酸水を取り出した。


「シャンパングラスある? 二本」と聞いてきたので、そんな洒落たグラスはうちにはございませんし、あったことも、これから導入する予定もございません。と思った矢先、恋煩い中の二十代エースから「カエちゃんの部屋で二人、このグラスで乾杯すんねん。それが俺のたった一つの夢なんや」とプレゼントされた気障な箱が段ボール箱の上に積まれていることを思い出した。


降ろした箱を包み込む赤色のラッピングフィルムを剝がしていると「え? 誰かからのプレゼント?」と聞かれたので、「バーゲンで安売りしてた高級グラス。ゲットしたの、残りの一箱」と高級な嘘を吐く。


そうして机の上に並べられた二脚のグラスは、長い脚に大きなお尻をゴツゴツとした突き出しながら「高級な私たちですけど、何か?」と斜に構えている。

霊の出る激安アパートには到底似合わないし、恋煩い中の二十代エースの夢は叶っていないし、そもそもこれはシャンパングラスと呼んで良い代物なのかはきっと二人とも分かっていない。


「このグラスをどうするの?」

「まあ、見ててよ」


美郷はグラスの中にドライフルーツを数粒入れたあと炭酸水を少し注ぎ、日本酒の瓶を開け注ぎ込んだ。炭酸泡をまとったドライフルーツがしゅわしゅわと弾け、砂糖が日本酒に溶け出しほんのりと白く染まる。


「え、ごめん。何これ」


「可愛い、らしいよ……」

そう言い「あと美味しいらしいよ」と語尾を小さくしながら机に顔を突っ伏した。

「あたしにも分かんないし……」

うううと呻きながら机に額を擦り付けている。

流行の可愛さなるものを披露してくれたところ申し訳ないけれど、私はその可愛さを理解出来る種類の人間ではない。泡に魅力を邪魔されるドライフルーツと変わり果てた日本酒に同情し手を合わせた。


「これ以上飲む前にさくっとシャワー浴びるわ」

そう言いながら洋服を脱ぐ。

すると美郷は突然、お、おうとそっぽを向いて玄関に歩き出し、放られたボストンバッグに顔を突っ込んだ。


シャワーから上がると、泡をまとったドライフルーツも変わり果てた日本酒も役目を果たした炭酸水も机の上から消えていて、あれは幻だったかのように二脚のグラスだけが「高級な私たちですけど、何か?」と斜に構えたままである。

しかし美郷が冷蔵庫から蓋の空いた日本酒を取り出した時、さっきのアレは幻では無かったのだと悟った。



そんなこんなで歯磨き以外の就寝準備を完璧に整えた二人による本格的な晩酌が始まった。

三十分も経たずして日本酒の瓶は空になり、冷蔵庫からチューハイの缶を取り出す。


「あたしさ、クリスマスツリーの一番上の星、飾りたいんだよね」

 美郷が唐突に口を開いた。

「クリスマスツリーの一番上の星?」


雄琴で過ごすはじめての冬、駅前に飾られたクリスマスツリーを思い浮かべると、一番上にはシルバーの大きな星が鎮座している。

「あれって取り外し式なんだ」

「取り外し式って?」

「木にそもそも備え付けられてるのかと思ってた」

思ってたと言っても、今思っただけで、一番上の星のことなんて考えたことは無論一度も無い。美郷は額を掻きながらあははと笑って、「お父さんが飾るんだよ、あれ」と続けた。

「へえ」

「多分世の中は違う。どちらかと言うとお父さんが子どもを肩車して付けてるんだろうな、と思う。多分」

「へえ」


「でも、うちはずっとそういうルールだったんだよ。お父さんが飾るっていうルール。お母さんが作った文化」

「へえ」

私は「へえ」としか言っていない。どうしてとは一度も聞いていないのに、顔をアルコールで真っ赤に染めた美郷は昔話を語り出した。


「お母さんはお父さんのこと好きで、お父さんもお母さんのこと好きで。お父さんもお母さんも、あたしと妹のことを好きだった。でもその好きは本人を好きって訳じゃない。お母さんは、学歴が高くて会社役員で皆から一目置かれているお父さんを好きなのであって。お父さんは、そんな自分を尊敬して支えてくれる料理上手なお母さんを好きなのであって。自分たちが思い描いた通りの道をすくすくと育っている子供たちのことを、好きなのであって」

私はチューハイの缶に残っている甘ったるい液体を、一気に飲み干した。

「無くなった? 楓、次何飲む?」

真っ赤な顔を向ける美郷に自分を投影して「水飲むから大丈夫」と答えた。


「一番上の星って全部の最後に飾るんだよ。十一月になったら、まず家のドアに赤と緑のリースを付ける。その後ツリーの箱を開けて、取り出して。枝を一本ずつ広げていって、まあこれが意外と骨の折れる作業なんだけど。丸とかキャンディとか天使とかの飾りを枝に付け終わったら、長い金色のビーズをふんわりと飾り付ける。そこまでがお母さんと私と妹の役目」

「へえ」


「飾り付けを終えて、ご飯とかお風呂とか全部済ませた頃、お父さんが帰ってくる。お母さんがお父さんに星を渡す姿を、私と妹はじっと見つめるんだ。そうして皆に見つめられながら、お父さんがツリーの一番上に星を付ける」

「へえ」


「拍手が起きて、クリスマスが始まる」

長い説明の後ようやく始まったクリスマス。もみの木と共に家族三人の手足を長い金色のビーズで縛り付ける、一番上の星。


「でもあたしはずっと爆弾を抱えて生きてる。爆弾の栓を抜いたら、きっともう、クリスマスツリーも一番星も全部全部、見れなくなる」


「爆弾?」


「うん。楓は無い? そういうの」


美郷の頬が、爆発する直前のように赤い。空高く舞い上がってもう二度と戻って来ない赤い風船のように膨らんでいる。


「どうだろうね」


私は、美郷の赤い頬を見つめた。赤い目を見つめた。それから私は、美郷の赤い目に見つめられた。

そうして、

「良いの?」と聞かれた。


は?と思っていると、唇を重ねられていた。この三か月間よく味わってきた唇が持つ独特の体温に、いや三か月間一度も味わったことの無い驚くほど柔らかな感触に、背筋がぞくりとした。


「楓、大丈夫?」


何に対する大丈夫なのかは分からないまま「うん」と答えると、美郷が私の頭を撫で唇を重ねなおす。

私は両手を交差してスウェットの上着を脱ぎ、草臥れたブラジャー一枚になった。


「でも、ごめん。この先、どうしたら良いか知らない」


私は、頬だけでなく顔も首も真っ赤に染めた美郷が着る上着の裾に手をかけた。上に引き上げようとした時、

「ごめん。それは大丈夫。あたしは、大丈夫」


美郷はそう言って、美郷の服を脱がそうとする私の手を止めた。分厚いスウェットを着たまま、客の誰よりも慣れた手つきで私の草臥れたブラジャーを外す。

その手は小刻みに震えていた。


全身を分厚く包まれた美郷と、生まれたままの姿の私。気が付くと今度は自然と舌を絡ませていて、その全てがどうでも良くなった。


美郷は私の胸を、絹の豆腐でも持つかのように壊さぬように弄り、首の座らぬ赤子でも支えるように私の後頭部に右手を添えベッドに寝かせた。

短く切られた四角い爪を生やす美郷の中指が、私の膣に差し込まれる。


「痛くない?」

「うん」


波打つように揺らされる指。

小刻みに揺れる胸、向かい合う四つの赤い頬、四つの赤い目。


美郷の爪は短く切られていたはずなのに、指を抜くと、ベッドのシーツに赤い血がぽとりと丸く付着していた。


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