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明るい未来を抱きしめて 改訂三版  作者: ある自殺志願常習者
2.大学生時代
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2-2.方法

・方法


 切腹という大胆な方法を、その現実を知らなかったからにせよ選んでしまえるほど、私はもう幼くはない。もっとうまく、効果的で現実的にやりたいと思う。

 そしてもう一つ考えが違うのは、その効果を、特定の相手、特に私がこうすることを選んだ人に直接向けるようなまねはしないようにしようという点だ。というかむしろ、私の感じたことというかそうすることになった原因を、そのままではなく、向ける相手も変えて、全く別の形で表現しようと考えている。

 なぜかと言うと、死んだ後のことを考えているからだ。直接原因を表してしまえば、その原因となった人に、何かしら悪い影響が及ぶことになる可能性があるわけで、そんな気遣いができるぐらいには、私は大人になっていた。

 では私が狙う効果は何かというと、その死ぬことによって、単純に、社会的にというか、表現は何でもいいのだけれど、良い影響を与えるようにするものだ。それは別に、私が前に計画を立てた時、手本にしようとした作家が狙ったようなことではない。もっと直接的で、対象とか目標が具体的で、言ってしまえば下世話で俗悪なこと。

 私の立てた計画はこうだ。頭の中で全部考えていたので、初めて文章として整理する。


(0)事前の準備。といっても、特にたいしたことはない。部屋を片付けるくらいか。特に道具も必要ない。どうしてもいると思ったら、遺書を部屋に置く。

(1)適当な場所を見つける。条件としては、街中の、ただし駅の真ん前とかからは少し離れた、渋滞などがあまり起きないようなところ。中心部に向かうか逆方向の車が、それなりのスピードで通るようなところ。具体的な候補はあるけど、ここには書かない。

(2)予告の準備。SNSか掲示板に投稿する内容を準備しておく。掲示板なんてもう古いかもしれないけど、むしろSNSよりも、好き勝手に深掘りして騒いでくれるかもしれないし、埋もれにくいかもしれない。動画の生配信も考えたけど、タイミングが取りづらい。実行した後にはすぐに誰かが撮って流してくれそうだから、私が手間をかける必要もない気がする。

(3)相手を探す。問題なのは、その周期性が分からないということ。なので、いつやればいいのかが見当もつかない。まあその分、ほとんど準備もいらないので、そのとき空振ってもたいして問題はない。機会を改めてやり直せばいいだけ。聞き耳を立てて、やかましいアナウンスを探す。

(4)あの不愉快で下品極まりないアナウンスの歌が聞こえたら、急いで姿を確認する。あのクソ派手な広告のトラック。アナウンスをしていない時もあるけど、まあどっちでもいい。邪魔が入らなさそうな状況であることを確認する。信号にも注意。青でそのまま通り過ぎる形なら申し分ないけれど、止まられたらどうしようもない。ただ、止まってもすぐ交差点で左折するようであれば、曲がった先で待ち構えることもできるだろう。

(5)実行できると確信したら、用意していた予告の投稿を急いで送信する。予告に手間取って実行が遅れるなんていう馬鹿な真似はしたくないものだ。

(6)車道に走り出る。さようなら。少しでも、あのうるさい宣伝の車に、呪いがかかればいいですね。ちょっとはこの街も快適になるんじゃないでしょうか。


 書き出してみると、この計画は前回よりもずいぶんと進歩していると、我ながらつくづく思う。手段は単純になり、必要な準備も簡便で、それでいながら期待できる効果は、私個人の領域を超えており、大きい。そして、別に期待通りにならなくてもどうでもいいと思える。いわばそれは付加価値であって、しかも私自身が享受できるものではないのだから。

 しかし馬鹿げているし幼稚だという意味では、何も変わっていないとも言える。

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