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明るい未来を抱きしめて 改訂三版  作者: ある自殺志願常習者
2.大学生時代
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2-1.経緯(4)

 三つ目。これは極めて個人的なことだ。前二つだって私にしか意味のないことなのはそうだけれど、もっと、なんて言うか、私と関わってくるのが特定の一人だという意味で、個人的と言いたくなる。ついでに言えば、前二つのようなことを、少なくとも気持ちだけでもどうにかしたくて、人との関係に飢えていたせいで至った問題だから、さらに個人的とも言える。

 人間関係。痴情のもつれ。関係の清算。そんな類の話だけど、もっとくだらない、というか、つまらない話に思える。要するに、そういう、ドロドロした結末に至りそうもないまま終わったという話だから。

 大学に入って初めて、彼氏ができた。初版の読者ならご記憶かもしれないUくんとは、その後何もなかった。彼とBさんの付き合いは続いているらしい。成人式の同窓会で会うのが気が重くなるほど、彼女は清楚な美人になっている。

 Uくんには未練は全くないけれど、Bさんに対する憧れというか、うらやましく思う気持ちはまだ残っていた。だからか、私は彼氏というものの存在に、馬鹿みたいに憧れていて、特に大学に入ってからは、それが強くなった。しかしどうすればそんなものを作れるのかが分からなかったし、今もよく分からないし、ついでに言えば、彼氏を「作る」という言い方にはまだ違和感がある。そんな私でもしばらく前にようやく、一つ先輩という彼氏ができた。

 驚いたのは、いざ彼氏ができても、憧れていたことがほとんど一つもそこに存在しないということだった。

 ロマンチックなデートもなく(向こうはそのつもりだったかもしれないけれど、イルミネーションを見ながら、前に来たときには相手とはぐれて大変だったなんていう話をされたらもう無理だろう)、単に節度がなくなっただけみたいで(それは甘えるとかいうようなものではなかったと思う)、私の気持ちは伝わらず(例えば喫茶店とかで一緒にいるときに、私は決して出さないようにしていた携帯電話を、向こうは平気でいじり続けるというような)、行動に対する反応も薄く(私の料理を褒める言葉と全くかけ離れた表情は忘れられない)、思いとかそういうものについて全く無頓着で(珍しくプレゼントをくれたと思ったら値段を何度も強調したりとか)、その上、体に触れたりすることを当然の権利のように言い、そういう行為をするときには、「F」という隠語(何の頭文字かはお察しの通り)を使い、道具やら場所やら異様に用意周到で、そんなときには過剰なほど私の魅力を褒めそやすのだった。私の胸やらお尻やらをそこでいくら褒められても、別に嬉しくもなんともない相手になってしまっているのだということを、向こうは全く自覚しないまま。

 最初のうちは、私もそれを受け入れていた。我慢していた、と言うのは正確ではない。言ってみれば、大人になろうとして、そういうものなんだと納得しようとした。

 だから、ベッドで天井の明かりが相手の体で周期的に隠されるのを見つめながら、明日の授業のこととかレポートの締め切りとかアルバイトのシフトについて考えつつ、控えめに甲高い声を相手の動きに合わせてわざと発するようになってしまったのも、その行為が空想のようには行かないものだから仕方ないと考えていた。最初は嫌悪感しかなかった、口に含ませられて舌でなめ回させられるというのにも、意外とあっさり慣れてしまった。それで相手が恍惚としている様子でも見られれば、私自身には直接的に何の感覚というか快感も与えられないにしても、気持ちとしては満足できたと思う。もちろん、そんなことにもならなかったわけだけれど。

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