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明るい未来を抱きしめて 改訂三版  作者: ある自殺志願常習者
2.大学生時代
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2-1.経緯(3)

 こうやって長々と述べてきたことは私の恨み言であって、同時に、カンニングの言い訳でもある。それが言い訳にならないことは十分理解しているので、お叱りの言葉をいただく必要はない。私がこんなものを書いているのは、自分の死ぬ理由を残しておきたいと思ったからであって、あえてそこに自分の馬鹿さ加減を付け加えるのは、なんて言うか、誠実さを証明したいからなのかもしれない。それが失敗していようと、私にはたいした問題には思えない。だって死ぬんだし。私が死んだ後にどうなろうと知ったことではない。我亡き後に洪水よ来たれ!

 馬鹿さ加減の根拠として挙げておくけれど、私は大学で試験の過去問というものを手に入れたことがない。授業の中で先生が自分から示したりしない限りは。つまり、仲間内のどこかから手に入れられ、友達の間で出回っているようなものや、先生への悪口がつきものの雑な作りのウィキとかに上がっているようなものを、私は避けてきた。なぜそうしたかという、明確な理由はない。卑怯だとか不誠実と感じたとは言っていいかもしれない。しかしその割に、たいして熱心に勉強していたわけでもなかったのだから、私の態度は完全に矛盾している。

 だから、カンニングをしたときも、周りの人はどうせ過去問を見ているんだからという、意味不明な言い訳が頭に浮かんだ。とはいえ、それをいつまでも持ち続けるというか強弁するまでには、私は馬鹿ではなかった。

 言い訳を重ねておけば、数式の解法のようなこと、何かの事柄の説明といったことであれば、私だってこんな悪事に手を染めなかった。染めようがないので。そんな長い内容をどうやって隠して、見れるようにしておけるのか分からない。それに比べると、私がやったのは何十個もある元素それぞれの数値、ここでは電気陰性度だったから、単純に記号と数字を並べておけばいい。つまり都合が良かった。

 私が実際に考えた、そして無意味な言い訳をさらに付け加えておくと、そこ以外はちゃんと勉強しておいたし、試験でも答えることができた。他に比べて、電気陰性度を大小とかではなく数値そのもので答えなければならないというのは、そのために記憶を頑張る気になれなかったし、結局試験で答えたのは二つだけだったから、私の悪事があってもなくてもたいした影響はなかった。つまりやってもやらなくても、成績がAなのは変わらなかっただろう。念のために言っておくと、そういう問題ではないことぐらい、私も重々承知している。

 いずれにしても、例えば将来私が有名人になったら、スキャンダルの種になるかもしれない。もっとも、証拠はこれだけだから、ばれようがないけど。

 そして今現在、その証拠が無いも同然のことを、いつまでも私は引きずっている。良心の呵責と言えばそうだけれど、だからと言って告白して公にするつもりもない。それで死のうとするなんて馬鹿げている。でも残念なことに、理由は他にもあるから、これだけを取り除く意味もないし、そうしようとする気も、全く起きはしないのだった。

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