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明るい未来を抱きしめて 改訂三版  作者: ある自殺志願常習者
1. 中学生時代
11/25

1-3.なぜやめたか(1)

・なぜやめたか


 一言で言えば、あの小説を読んでしまったから。確かに期待通り、切腹について、とっても詳しく書かれていた。主人公たちがそうすることを決めるまでの経緯とか、実行するまでの準備まで含めて。

 読み終えて、私はほとんど吐く寸前になってしまった。途中ですでに気分を悪くしつつ、意地になって、肝心な部分はなんとか読み飛ばすことなく最後までたどり着いたけれど、私には、何のためにこんなふうに長々と切腹について書かれたのか、全く理解できなかった。「官能」とか、よく意味の分からないお決まりの言葉で何か解説されていたけれど、私にはただ生々しくてグロいだけだった。それが美しいとか楽しいとか感じられるとしたら、頭がおかしいと思った。そんな方法で死のうとしたんじゃなかったか?

 奇妙なのは、作者は切腹を「いいこと」だと考えて、そう表現する前提で書いているはずなのに、私には全くそんなふうに思えないということだった。カップルが死んであの世でいつまでも一緒にいるとか、そういう話も私にはよく分からないけど、頑張ればまだ理解できそうだと思う。でもこの場合は、少なくとも小説に書かれているのは、カップルというか夫婦が死ぬという部分だけで、その後のことは何もない。なら、死ぬこととかその後の結果よりも、死に方自体が重要らしい。そこまではいい。でもそれで書かれているのは、ただグロいだけなんですが!

 読んだのは、土曜の夜に自分の部屋でだったと思う。短かったし、始めの方は読み飛ばしたから、三十分もかからなかった。次の日、つまり日曜の夜か月曜の早朝には、実行する気でいた。必要なのは包丁と遺書くらいだろうから、まだ何も準備していなかった。

 吐き気を抱えたままベッドに入ったけど、全然眠れなかった。明日死ぬってことになれば眠れなくなるかもしれない、とは思っていたけど、当然、そんな感覚とはまるで違う理由のせいで。

 翌朝起きたときには、頭がすっきりしている気がした。でも目が覚めてくるにつれて、あの気持ち悪さがそのまま残っているのが分かった。結局それも一日中続いて、ご飯を食べるときにも、注意しないと吐き出してしまいそうな状態だった。とりあえず計画は延期。

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