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明るい未来を抱きしめて 改訂三版  作者: ある自殺志願常習者
1. 中学生時代
10/25

1-2.方法(2)

 決めてから詳しく具体的に考え始めたけど、実行するのは意外と簡単そうだった。刃物さえあればいい。刀はないけど、包丁なら家の台所にある。首をはねてもらえないのは仕方ないけど。場所だって、自分の部屋でいい。何か気を遣う必要があるということになれば、別に外でどこか、すぐ見つけられるようなところでいいし。

 切腹というくらいだから、お腹に刃物をぶっ刺して、ぐいっと引けばいいんだろう。そんなことができるんだろうか。そんな経験は一度もない。あったらおかしいけど。そこまで行かなくても、ろくに切り傷ができたこともない。膝とかをすりむいたり、包丁で指をちょっとだけ切ったようなことは何度もあるけど、きっとそれとは全然違う。

 考えてると、お腹の中、切ることになる皮の下にある、理科の教科書とかに載っているような、ぐねぐねした内臓がそこにあるという意識がはっきりしてきて、それだけで気持ち悪くなってくる。痛いんだろうか。痛そう。でもどんなふうに?

 皮が裂けて、その下のものが露わになる。つやつやぷりぷりした胃とか腸とかが顔を出す。何かの漫画で、自分が胃腸の手術を受けている様子を見ている人の話があった。私には面白さも気持ち悪さもよく分からなかったけど、今なら片方はよく分かる。ちなみに、この時点で私はもう吐きそうになっている。でもそれがいつまでも続くわけではなく、どうせすぐに死ぬし、一回だけのことだ。だからたいしたことでもないようにも思う。

 こういう考えを整理して、準備を確実にするために、私はあの先生の小説を一つ読んでみることにした。それは、切腹について詳しく書いたものらしいので。

 本屋であっさり見つかった文庫本の裏表紙にも、そんなことが書いてあった。もちろん、本人の経験を元に書いたというわけではないから、それが本当にリアルと言えるか怪しいということくらいは私だって分かっている。それでもとにかく、予行演習にもなるかもしれなかったし、きっと素晴らしいこととして書かれているのだろうから、決心もさせてくれるだろうと思って。

 ついでに言えば、その小説の筋書きとか、背景にされている本当にあった出来事については全く興味がなかったし、読んだ後にも興味はわかなかった。それどころではなかったからではあるけど、違うタイミングで読んだとしても同じだったと思う。さらについでに言えば、もう読み返す気にもなれない。もちろん、死んだから読めないというわけではなく。

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