#6 Aftermath
青鬼の美術館襲撃直後、桃太郎はG.A.T.Eに保護され、その場でAgent VARとAgent GEEが亡くなったことをURA長官から伝えられた。
桃太郎からはAgent VARが、おそらく何か透明な存在に殺されたのではないかと話すと、URA長官は思うところがあるような表情を浮かべていた。
ただし「G.A.T.Eを信じるな」という囁きのことはなんとなく言い出せなかった。
桃太郎は目の前で両親であるAgent VARとAgent GEEが共に殺さるという光景を目にし、心の整理がつかず呆然としていたが、時間を追うごとに2人がもう、この世からいなくなってしまったことを痛感し、涙が止まらなくなった。
泣き疲れ眠ってしまったのは何時だっただろうか、とてつもない失望感の中G.A.T.E本部の仮眠室で目を覚ました。
「桃太郎起きたか、こんなものしかないが朝食だ腹に入れておけ」
URA長官はおにぎりとお茶の入った袋を手渡し、部屋のテレビをつけ「今はゆっくり休め」と一言残し部屋を出て行った。
テレビからは「この間3cmくらいの妖精さんが部屋にいたんですよぉ〜、ホントなんだもん」と若いアイドルがバラエティー番組で笑いを誘っていた、不思議ちゃんアピールなのか、この間見たテレビ番組でも他の女性アイドルが、まるで同じような話をしていた。
くだらないと桃太郎はニュース番組にチャンネルを変える。
そこに流れる映像に拳をグッと握った。
昨日の事件に関して、襲撃を受けた美術館を運営する株式会社Time is moneyの社長である坂田という男がインタビューを受けていた。
10代で宇宙開発事業の会社を起業し、世界最速で億万長者となった青年である。
先日も有名な女優との交際報道がワイドショーで報じられていたばかりで、破天荒な性格ゆえ話題に事欠かない男であった。
しかし、いつも見せるおちゃらけた表情とは違い、カメラに映し出されるその表情は怒りに満ちているのがよくわかった。
「マイク貸せ」
押し寄せる報道陣の中の一人からマイクを奪った。
「鬼と呼ばれる奴らの仕業らしいが、お前らによって美術館に勤務する俺の会社の社員が亡くなった。とても立派な人間で、最後までお客さんの避難誘導に徹していたそうだ。…ぜってぇ〜許さねぇ。必ずお前らの正体を突き止め、どんな手を使っても皆殺しにする、絶対にだ…」
マイクを放り投げ、高級外車に乗り込み報道陣の集まったその場を後にした。
坂田の耳につけたイヤホンが、株式会社Time is moneyの最高戦略責任者である、渡辺からの着信を知らせる。
「昨夜の件だが確認作業が完了した」
「何か分かったか?」
「あぁ、展示品が1つ盗まれてた」
「何が盗まれた?」
「蓬莱の玉の枝だ」
「そいつが鬼どもの狙いか」
「恐らくそうだろうな。ただ、その盗まれた蓬莱の玉の枝だが、あれは贋作だ、こんなこともあろうかと緊急時に地下に格納してある贋作とすり替わるようにしておいたから、鬼共が盗んで行ったのは、ただの枝だ」
「ハハッ流石だせ渡辺、それなら早速計画に移すぞ、クソ虫どもに、俺様を怒らせたことを利子をつけて後悔させてやる」
通話を切ると「血の涙を流させてやる」そうつぶやき、坂田は車のスピードを上げた。