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ざんねんな異世界の冒険者たち  作者: 無銘、影虎
2章 最弱とチートと復讐と 編
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015 秘伝の太刀

 俺は気を失っていたようだった。

 意識が戻って目を開くと、パーテイーのメンバーが健在なのがわかった。


「やれたんですね」


「ああ。自分、活躍できたで。カボチャ頭」


 ひどいなぁ……その呼び方。しかし、いままさにカボチャ頭をかぶせられさ、緑色のマントを羽織っていた。まあ、見えないと困るから仕方ないのか。


「エルサ、エルサはどうなんです?」

 俺がまっさきに気になったのはそっちだ。


「これは、GPが過剰に暴走する呪いのようですね」

 フィーナさんが言う。


「はい。たぶんそうではないかと推測していました」


「かなり長い期間、この呪いを使用していたのと、一度に大量に発動したために、キュアカース様でも解呪は難しいと思われます」


「えっ、で、でもっ」

 そんなこと言わないでくれ。

「やってみなければわからないでしょう!! お願いしますよ!」


「せやけど、めっちゃ金かかるんやで。ここまできたら一生かかっても返済できないかもしれんで。そんで、そうしたところで解呪できる保証はないんやで?」


「だからって! 諦められません! お金は自分で用意します! 一生かかっても!!」


「かぼちゃ頭はん。あんた、この女のなんやねん?」


 なんやねんて、なんだ。助けたいと思うのに条件が必要なのか。


「仲間なんです! ちがう、彼女はあっちの世界でもいろんな……、いや、なんだろう……」


 俺が助けたい理由?


「好だから、じゃダメなんですか?」

 涙が止まらなかった。

 最初からそれだけなんだ。

 俺は拳で地面を叩きつけた。

「ち、ちくしょうっ!!」


「えっ!!! うえっ、いや、まあ、まあ、あれ!? 別にそんなつもりで聞いたんやないねんけど……」


「はるか、それはよくないぞ」

 勇者が諌める。

「はるかす、よくないぞ」

 マリンさんも言う。

「まったく、はるかさんはー」

 フィーナさんも言う。


「ごめんなさい、ごめんなさい!!」

 バニーさんは仲間に責められて関西弁じゃなくなっている。


「それじゃ、キュアカース様のところに連れていってくれますか?」

 まだ涙声の俺は聞いた。


「いやいや、まって。さっきもいうたが、たぶんキュアカースでも無理やと思う。それよりも試したいことがあるんやけど……」


「試す?」


「ウチな、GPだけを完全破壊する奥義を持ってんねん。人体を傷つけることなく、ついでに相手の戦意を完全喪失する、非殺人の超必殺技やねんけど」


「GPを破壊? 魔力も物理でもなく、攻撃しないでGPを剥がすことができるということですか?」


「いや、理屈は分からんけど、まあ、せやねん。まあ、やってみるから、見ててや。失敗したところでとくにデメリットないしな。ちなみにこれは相当な魔力がいるんで、やってもうたらウチはしばらく使いもんにならへん。奥義なのに人にしか使えんので、まったく冒険者向きやないんやけど。まあ、ちょうどええわ」


「はいっ、ありがとうございますっ!!」


「ほな、いくで。――霊眼!」

 はるかは眼帯を上にずらす。右目は青い輝きを放っていた。

 そして二振りある日本刀の一つ、兎月村正をさっと抜き払い、両手で握りしめて集中をはじめた。


「無手勝流、奥義!」

 同時に踏み込んだ。


「秘伝!! 壱之太刀!!!!!!」


 袈裟斬りに刀が振り下ろされる。

 そして、瞬時に美しい所作で刀は鞘に戻された。

 カチンと音が鳴る。


「風の前の塵に同じ……」


 言うや否やバニーさんは崩れ落ちた。

 その途中、俺に微笑んだようだった。

 マリンさんが承知していたかのように後ろから受け止める。

 同時にバニーの姿から元に戻る。


 同時にエルサを覆い尽くしていた硬質結晶が弾けるようにひび割れる音を立てた。

 体の各部位からどんどんはじけるように結晶が砕け飛ぶ。

 胴、足、腕、胸、そして顔……。


 エルサの生身が解き放たれた時、俺は駆け寄って抱きとめた。

 まだ冷たいような気もする。

 だけど、命の鼓動が感じられた。

 実際、唇がわずかに動いた。


「エルサ……」


 抱き抱える腕から、体温が戻ってくるのを感じた。


 エルサは、うっすらと目を開けた。

 よく考えたら俺は怪しげなカボチャ頭だった。

 驚かれるんじゃないだろうか。

 カボチャを外してもこんどはカオナシだし。

 どうしよう。


 エルサの顔に血色がもどってくるのがわかる。


 どっちでもいいか。


 俺は彼女をぎゅっと抱きしめた。これなら顔は見えない。

「あり、が……とう……」

 その言葉に、ぎこちなさはすこしも感じられなかった。


 もう、離さない。


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