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ざんねんな異世界の冒険者たち  作者: 無銘、影虎
2章 最弱とチートと復讐と 編
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013 失格Dランクの追放ガーディアン

 屋敷外には誰もいなかった。

 前回と同じく、エントランスで待ち伏せをしている可能性がある。

 フィーナさんが感知の魔法ほ使うと、はっきりとエントランスに人の気配があるという。

「ひとり、ですね。情報通り」

「え、なめてへん? どないしよ?」

「かなり自信があるのかもな。だが、数的優位もある。一気に飛び込んで一気にたたんでしまおう。強襲だ」

「わかった」


 扉を開けると、本当に守衛はたった一人。

 全身を包み込むフルプレートの鎧を着ており、かなりの大柄。

 両手持ちの戦斧を持っている。

 その姿は威圧感があり、かなり手強そうだ。


「敵襲か」

 予想されていたのか、落ち着いた声。

 その割には手薄な警護。


「なんやこいつ……」

 バニーさんが怪訝そうな顔で守衛を一瞥する。


「ほんまに守衛ガーディアンなんか」


「めちゃ弱そうですね」

 フィーナさんも言う。


(えっ、そうなの。俺も低レベルだからわからないのかな)


「これならあーしの鼻くそでも勝てるね」

 マリンさんもひややかに言う。

 鼻くそで勝つとわ?


「ああ、でも鼻くそ飛ばすはやめよーや」


 飛ばすんだ。それで倒せるんだ。できたとしてもそれはやめてほしい。


 しかし、みんなマジのようだ。

 肩透かしされた気分だが、頼もしくもあった。


「こんなやつが守衛など、ふざけてるのかーーっ!」

 俺の肩にとまっていた勇者もなぜか激昂している。

 いや、そこまで言わなくても。


「そうですぅー、あなたは守衛失格ですぅー!」

「いますぐ辞めてまえ!」

「鼻くそくらえ!」

「追放だー」

 みんな突然、罵倒の大合唱をはじめた。


(えっ、えっーーーーーーーーーっ!!!!! どうしたの?)


 守衛さんが気の毒になるくらいの罵倒。

 なに、また、そういう作戦? なら先に教えといてっ!

 そして、守衛も少しは反論しようよ。だいぶひどいこと言われてるよ!


「おのれー!!」

 ほらみろ、守衛さん激昂して攻撃態勢に入った。


 しかし、バニーさんが嘲笑いながらモーニングスターを振り下ろす。

「てめぇーなんざ、こうじゃー!」


 しかし、守衛はあっさりとそれを跳ね返す。


「なにぃ!」

 バニーさんがたじろいだ。


「はるかす、あーしに任せて」

 マリンさんがかわってゆっくりと前に出る。

 そして同じように切り込んで弾き返される。


「なにぃ!」

 マリンさんは驚く。


「おいおい、ふたりともこんな無能相手にいつまで時間かけてんだ」

 ついに勇者が悠々とおでましした。

「黒焦げになりな!」

 ファイヤーブレスだ。これは迫力!

 しかし、番兵は魔力シールドを張って簡単にふせいだ。


「なにいっ!」

 勇者様もたじろぐ。


「……やれやれ、まったく、みなさん、お遊びがすぎますわよ」

 フィーナさんがゆっくりと前に出る。


「ちょっちょっちょっちょっ、ちょっと待ってください!!!!」

 俺は声を張り上げる。


「パターンになってます! というかなんですかそのナメプは!?」


「そりゃナメプにもなるだろうがよ。あんな無能相手に」


「いや、フィーナさん、キャラも変わってますよ!」


「あーしもこんな守衛とはいっしょにやってらんないよ」

 エルフさんもなんだか我を忘れている。

「いっしょにやんなくていいから、倒してくださいっ!」


「そうや、身の程をわきまえろーーっ!」

 バニーさんがまた突っ込んでいくが、また軽くいなされた。

「ちっ、どういうこっちゃ。Dランクが……」


 Dランクって何? はじめて聞いたんですけど?


 これは、もう間違いない。みんな何かの幻術のようなものにかかっている。

 なんか、めっちゃ敵を見下してナメプを繰り返して「なにぃ!」を言わされてる!

 なんで? なんでだ!


 その瞬間、これまで攻撃を受け返すだけだった守衛が、突如、襲いかかってきた。

 重装備だというのに早い!

 狙われたのはエルフさん。なんとか剣で防いでいるが、圧倒されている。


「な、なにぃ!」


 また出た。また「なにぃ」を言わされてる!


 守衛は力任せにエルフさんを跳ね飛ばすと、今度はバニーさんに標的を改める。

 同様になんとか剣で受け止めるものの、ラッシュが続く。


「ば、バカなっ。これがDランクだと!」


 だからDランクって何? あと戦闘中に解説しないで!


「これは、Aランク、いや、Sランクの力だぁーっ」

 もう、完全に負ける人のセリフになっている。


 もうだめだ。これは俺がやるしかない。

 短剣を投げつける。

 おもいっきり投げすぎて、守衛の脇を通り抜けて、下まで落ちていった。


「あ、やべ、外した」

 しかし、番兵はそれに気を取られ、振り返る。


 一瞬、その背中が見えた。

「チャンスだ! みなさん、チャンスです!」


 と言いながら、きっと無理な気がする。

 やっぱ自分でやろう。


「あっ!」

 俺は守衛の鎧の背にたくさんのステッカーがはられているのが見えた。

(これは!)

 このステッカー、見たことがある。


(露店で売ってたやつだーーーーーー!)


 俺は瞬時に理解し、やつの背後をとって、レッテルを剥がしにかかる。


 一枚剥がれた。びりっ。

 〈最弱Dランクなので騎士団を追放されました〉のステッカー。


 それによって俺の存在が気づかれてしまったが、守衛の攻撃が大振りで、かわすことができた。


「はるかす、ごめん。鼻くそでは倒せないよ」

 マリンさんが反省の弁を述べる。

「せやな。ばっちいからやめとき」

 バニーさんも頷く。


 俺は相手の動きと逆を取る。短剣で軽く衝撃を与えて、注意をそらして、また背後を取る。

 レッテルを剥がせた。びりっ。

 〈衛兵なのに手芸スキルしかありません〉ステッカー。


「追放は言い過ぎたな」

 勇者もなぜか反省。

「そうですね。努力はみとめますぅー」

 フィーナさんが同意する。


 もういっちょ。びりっ。

 〈永遠にレベルが上がらない俺はそもそもなんで勇者パーティーにいたんだっけ?〉


 動きが読めたら、あとは簡単だ。

 マントを脱いで、カボチャ頭だけが動いている奇妙な格好で動揺させて、最後の二枚を剥がした。

 びりっ。

 びりっ。

 〈無能冒険者の俺は引退した田舎でゴミ捨てルールを間違えて村八分にされました〉

 〈神に見捨てられ、見放されて、見過ごされ、電車も乗り過ごした失格ランクSS〉


 そして、攻撃を避けるため、カボチャ頭もとりはらって、完全に姿を消す。

「みなさんっ! あとは頼みましたーーーーっ」


「は?」「は?」「は?」「は?」

 全員が一斉に言ったが、すぐに状況を理解してくれたようだ。


「おのれ、なんかやりよったなあーーー!!」

 一斉になだれかかる。


 声を上げた俺の位置に勘づいた守衛が斧を振り下ろすが、フィーナさんが防壁シールドをかけてくれる。間一髪ではじいた。


 そして勇者様がファイヤブレスを吐き出す。さっきとは見違えるほどに囂々とした炎だった。

 守衛は慌てて火をはらう動作をする。


 エルフさんはバスタードソードを抜き払うと一気に間合いをつめて、戦斧をもつ手に打撃を与えて、ファンブルさせた。


 最後にバニーさんが飛び込む。

「どうぉりゃーーっ!」

 胴にモーニングスターの強い打撃が入り、守衛のGPは割れ、地面に沈んだ。


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