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ざんねんな異世界の冒険者たち  作者: 無銘、影虎
2章 最弱とチートと復讐と 編
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009 死亡フラグ

 それから俺はワラシベチョウジャの情報を集めた。

 同盟に所属している「もぐり」の冒険者も見分けがつくようになった。

 やつらは、ふつうのギルド所属冒険者のように〈冒険者になろう亭〉に集まるが、クエストを受けていない。報酬の換金をしているのも見たことがないが、いつもいる。おそらく通常の冒険者を装っているのだろう。

 俺たちもそうしていた。


 そいつらを尾行していると、端々でいろんな情報が聞けた。

 どうやら人殺しを請け負ったアタリチートのようだ。

 犯行計画とともに、元締めの名前と居場所がわかってきた。いつもいる時間帯など。


 名をデイモスという召喚人サモンの冒険者。

 居場所は俺たちがミノタウロスと出会った廃墟の貴族屋敷。

 あの館には地下構造があり、そこを根城にしているという。古い記録だがダンジョンC203と呼ばれるポイントだという。

 もし以前からそうなら、俺たちはそもそもハメられたかもしれなかった。

 ギルドの冒険者を始末するついでに、ミノタウロスでチートスキルの性能確認をしていた、ということだ。


 情報は出揃った。

 俺はいつものようにエルサのもとへいく。

 俺の透明スキルは、ますます冴え渡っている。時間制限も伸びている。いまさらながら夢のスキルに近づいているかもしれない。

 そればかりか、超近接がうまくいけばステルスプレイが可能だになる、まるで「アサシン」だ。短剣なら透明化にはまったく問題がない。

 エルサと話し合って、決行する日取りを決めた。


「ずっと引きこもりだったから、たのしみだわ」

 そういうことなんだろうか。


「油断はできないよ。敵の人数は、まだ把握できていない」


「あなたは姿を見せずできるだけ倒す、乱戦になったら私が暴れるわ」


「簡単に言うなよ」

 実際、二人でなんとかなるものだろうか。いまから緊張する。


「あなた、ザキって、本名が山崎だからでしょう?」

 エルサが唐突に言ってきた。


「ちがう、違う」

 本当に違うが、いきなり懐に飛び込まれた気になって俺は狼狽えた。


「じゃあナニ崎なの?」


「ナニ崎限定なの?」


「フツーのあなたがつけそうな名前だわ」


「間違いなく合ってる、ごめんなさい」

 降参だ。実際の命名は友だちだが。


「やっぱり。ふふふ」

 あれ、笑った? はじめてかな。


「じゃあ大崎、田崎、高崎?」

 いたずらっぽく言う。


「教えない――いや、無事に帰ったら教えるよ。そしたら、君の名も教えてくれ」

 自然と口から出た。


「いやよ。それ死亡フラグ以外のなにものでもないわ」


「しまった! ほんとだ!」


 こういうところがモブキャラのうかつなところだ。


 でもエルサはやっぱり笑っていた。


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