第五話
次の日、リョウタは学校へ向かう途中でミドリと出くわした。
「よう」
「お、おはよう」
「なんだよ、なんか変だぞ」
「そ、そんなことないよ! 全然! ふつう!」
「そ、そうか? ならいいんだけど······」
ミドリは昨日のことを思い出し、少しモジモジしていたが、しばらくして緊張した様子でリョウタに話しかけた。
「あ、あのさ、リョウタ。実は、昨日の教室で叫んでたこと、たまたま聞いちゃったんだよね······ごめんね」
リョウタは驚いて、照れくさそうに頭をかいた。
「い、いや、ミドリ、そんなのいいよ。昨日はちょっと興奮して、つい言っちゃって」
「あ、あの、あのぉ······」
ミドリは『ハーハン』を飲んでから一番ソワソワしていた。顔を真っ赤にして、緊張して、それでもリョウタに聞いた。
「い、言ってたことは本当なの? あれはリョウタの本音?」
こわごわと震えて小さなミドリの声をちゃんとリョウタの耳は拾っていた。
「あ、あー······うん。全部本当のこと」
リョウタはしっかりと答えた。
「全部素直な俺の気持ちだよ。ずっと思ってたこと」
ミドリはそれを聞いて嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、リョウタ。私もリョウタのいいところ沢山わかってるからね!」
耳まで真っ赤にしながら登校する二人を道行く生徒達が不思議そうに見ていた。