第三話
「あ、そうだぁ」
ブチョーが何かを思いついたとうに手を叩いた。
「あのさぁ、この『ハーハン』さぁ、どんな効果がどれくらい持続するのかとかぁ副作用なんかがぁまだ確認できてないんだよねぇ。だからぁ、試験的に実験台になってもらえる人を探していたんだよねぇ」
ミドリはリョウタと顔を見合わせた。
「まさか、俺たちをその実験台に?」
リョウタはめちゃくちゃ嫌そうな顔をした。
「化学部の部員ちゃんたちはぁ、もうみんな別の実験に使っちゃってる最中なんだよねぇ。ヌードマウスが欲しいんだよねヌードマウスがぁ」
「じゃあ、私たちがその実験台になってあげるわ!」
ミドリは興奮した様子でブチョーに提案した。オカルト研究部員は伊達じゃないのだ。
「ちょちょちょミドリ、待てって! こんな薬、なにが起きるかわかんないんだぞ!」
「たしかにそうだけど、だから面白いんじゃないの」
「ゾンビにでもなったらどーすんだよ!」
「あー、生物部の例のアレのことぉ? 心配しないでよ、あーし達はあんなヘマしないしぃ」
「ヘマって······」
「んー、金髪くんでかいナリして怖がりさんだねぇ、カワイイじゃん」
「ほーんと、リョウタカッコ悪いよ」
「んぎぎぎ······わ、わかった。協力してやるよ!」
「イェーイ! ありがとう、金髪くん、ミドリちゃん! じゃ、早速ハーハンを試てみよぉーう!」
部長は二人を椅子に座らせ薬を飲ませた。
数分後、なんとはやくもリョウタとミドリは少しずつ変化を感じ始めていた。
「そろそろ効果出てるんじゃない? ねえねえどんな感じぃ? お互いのこと話してみてよぉ」
ブチョーが無責任に促す。
ふと、ミドリはリョウタに対していつもよりリラックスした雰囲気で話しかけていた。
「リョウタ、実はね······いつも喧嘩してるけど、ちょっとだけ心配してたの。リョウタなんだかどんどんチャラくなってるし、変な奴になっちゃわないかって」
ミドリは照れくさそうに告げた。
「ミドリ、俺もさ、お前がそう思ってるのはなんのなくわかってたんだけど、心配するなとか改めてなかなか言いづらくてさ。ごめんな」
リョウタも驚くほど素直になり、気持ちを伝えた。
二人はこの薬のおかげで、普段は言えないことも言い始め、徐々に互いを理解し合うようになった。