第一話
「なあミドリ、ちょっといいか? 実は最近、化学部が何か怪しいことをしてるって噂があるんだけど、お前あの噂好きの集まるオカルト研究部だろ? なにか知らないか?」
リョウタは幼馴染のミドリにそう話かけた。
翠峰学園高等学校に通う高校二年生のリョウタは金髪で長身、筋肉質、目は鋭くそれでいて甘いマスクと声が女子生徒にも男子生徒にも人気の生徒だ。
「またいきなり何よ? 化学部の怪しい実験って、何かあったの?」
そう答えるミドリは黒髪のボブで背が小さく痩せ型、声も小さく内向的だった。しかしリョウタに対しては勝ち気でなんとなくぶっきらぼうになりがちだ。
リョウタは首を振って顔をしかめた。
「具体的なことはわかんねえんだけど、最近、部活中にテニスコートにまで化学部の煙の変な臭いがするんだよ。お前何かわかるか?」
ミドリは考え込んでから言った。
「ん-、あー、何か特殊な薬を作ってるって噂を聞いたことがある。ただ、詳しいことはわからないわ」
「なあ、それじゃあ俺たちで調べてみないか? 正直気になるんだけど文化部とは関係薄くてさ、一人じゃ行きにくいんだよ」
「あんたでかい図体して妙なとこで小心者よね。まぁ、たしかに私も気になってたしちょうどいいけど······」
ミドリはオカルト研究部の部員で、変わったことが大好きだった。
「それにリョウタが一緒に行くなら安心かもね。オカ研貧弱女子ばっかだし」
リョウタは眉をひそめる。
「なんでそんな安心感がいるんだ? ただ聞きにいくだけだろ」
ミドリはさらに言った。
「だって生物部なんかこの前人間をゾンビに変えるウイルスをアフリカから取り寄せた花から分離培養して公安直轄の特殊部隊に乗り込まれて全員逮捕されたのよ? 化学部だってなにしてるかわかったもんじゃないわよ」
「なあ俺から言い出しといてなんだけど、その事件の方を調べないか? 絶対にそっちの方が重大だぞ」
ミドリは首を振って答えた。
「いいえ、そっちはもうサンプルも回収済みだし、今回は化学部の実験が気になってきたわ。だからリョウタ、化学部のを調べるわよ」
「サ、サンプル·····?」
結局リョウタも再度同意し、二人は化学部の怪しい実験を調査することになった。