少女1
一目惚れした
ボロボロの布をまとった、体の所々が泥か何かで黒く汚れ、輝きを失った灰色の髪を伸ばしきった、そんな少女に……
揺れるボロ布の隙間から見える血の垂れる腕、そんな姿でも諦めを知らぬような目でふらふらと人混みを駆け抜けるその姿は……
彼女には誰とも計りしれぬ出会いが、経験があるはずだと語っている様に見えた
あぁその経験を知りたい、もっと近くで感じていたい……
ついでに夜のほうも……
それは、カツ丼屋を後にした時だった
口に加えていた爪楊枝を落した
それ程に呆然とした
それ程に魅力的だった
直ぐに彼女を追いかけることにした
あくまでも、治療という名目で
用事思い出しったって言って、じぃに買い出し丸投げしたけど怒ってなきゃいいな
俺は彼女の血を追った
十分も経たずに血は主の所へと到達する
そこは薄暗い細い裏道り、そこの隅で彼女は低く小さな唸り声を上げながらしゃがみ込んでいた
「おい、大丈夫か?」
俺が声をかけると、彼女はビクリと体をゆらし恐る恐る顔を上げる
今まで陰っていて見ることの出来なかった顔はかなりの美形だった
「誰、なんの様?」
だが口から発せられた言葉は見かけによらず強気な声だった
こいつ、人が気遣ってやってるのに生意気だな
「なんのってお前怪我してるだろ手当してやる」
「こんなのどうってことッ」
嘘付け、また腹抱えてるくせに
「やっぱ痛むんじゃないか、ほら早く見せろ病気になるぞ」
そう言って彼女羽織っている布をとった
「いやっ……」
彼女がそう言って、布を抑えようとしたが俺は見てしまった
汚れを
黒く鈍く光り、いくつにも連なり
肌の一部を包み込むそれは
竜の鱗
本来巨体で強大な力を持つ絶対的存在
竜の持つもの
神なる姿を汚した証
故に汚れとは程遠い彼女を汚れと見せた
その姿は
「……邪神の子」
言っては見たがそんなの気にならないしむしろよし……
それよりも風吹かないかな……
際どい感じにおっぱをボロボロの服が隠していたので
しかめっ面をしていたのだが
「えぇ、そうよ笑いたいなら笑いなさい、罵りたいならそうしなさい」
「ちがっ……」
「違くない!どうせ貴方も……どれもこれも、私にこんな物が無ければ、私がこんなんじゃなければっ」
そう言って彼女は爪を立て鱗をむしり始めた
おいおいおいおい、大丈夫かこいつ情緒不安定にも程があんだろ
「辞めろ別に俺はお前をあざ笑ったり、罵ったりなんかして無いだろ」
そう言いながら、彼女の細い腕を掴む
よく見ると彼女の体の至る所に鱗を毟った様な跡があった
「と、止めないでよ」
彼女は、荒い息をしながら弱々しく睨んでくる
「何言ってんだ!このままじゃ死ぬぞ」
「……うるさぃ」
だぁぁぁぁ、この女も頑固かよ
嘘であってくれ
「分かった分かった、お前の心配は俺がどうにかしてやる、これでいいだろ?」
正直こんなことは言いたくなかった
けど、ここでこの経験を逃してはもう後は無いだろうしな
「……竜に誓って?」
なにそれ神に誓うの邪神の子バージョン?
「あぁ、誓うよ」
「……そう」
俺の言葉を聞くと、彼女の腕の力は抜け、ぐったりとなった
忘れたぁ
家を聞くの忘れていた
止血したはいいけどコイツ何処に連れてけばいいんだ?
このまま宿にお持ち帰りしていいの?
しちゃうよ、起きないしいいよね
いや待てよコイツのマントのしたは裸同然、ギリギリおっぱの隠れたボロボロの服
そうだ今気を失ってるし今のうちに……
何言ってんだそんな現場見られてみろ速攻お縄だ
そんなのヤダ!まだ夜の経験だってしたこと無いのに
仕方ない、風が吹くのを待つのはやめて取り敢えずコイツ背負って宿に戻ろう
じぃも買い物終わっただろ
明けましておめでとうございます
のんびり投稿ですが、これからも末永くよろしくお願いします