奪還
ニルガン議員の呟きに気付く事ない一行は足早にコンピューター室に辿り着いていた。
周囲を警戒しながら中に入る4人。
「よし!ハッカー、急いでデータを取り出すんだ!」
「えぇ!少し時間は掛かりそうだけど、外に出てネットワークに繋がったらサイバーポリスのサーバーにデータをアップロードすることで通報する。後はサイバーポリスの人達が解析し逮捕に動いてくれるはず!」
「ダウンロードにはどれ位かかる?」
「…約10分!」
「出来るだけ急げ!終わったらすぐに脱出するんだ。外部ネットワークに繋がったタイミングですぐにサイバーポリスにアップロードする。そうすれば最悪捕まっても後は警察が動いてくれる!」
「データをブッコ抜いて敷地の外に出られたら俺達の勝ちってことだな?楽勝だぜぇ!」
「道中すれ違った無数のSPと警備兵達が銃を抜かなければの話だ。とにかく急げ!」
ハッカーは持っていたカバンからパソコンを取り出しケーブルで部屋にある大型サーバーとそれを繋いだ。
そして軽快にキーボードをタイピングしハッキングとダウンロードを開始した。
「OK。繋がった」
「よし!」
順調かに見えた作戦だったが、突然コンピュータ室の出入り口ドアが強くノックされた。
4人は一斉にドアの方向を見る。
「ドドノ、中に居るんだろ?こんな所で何をしている?」
「ニ、ニルガン!!」
「クソッ!ハッカー、あとどれ位だ?」
「あと9分!」
「ちっくしょお!あのモヤシオヤジ勘付きやがったな!」
「ドドノ議員、時間を稼いで下さい!この様子がバレたら警備を呼ばれてしまいます!」
「分かった!」
ドドノ議員はゆっくりと出入り口のドアを開け、なるべく中が見えない様ドアを閉めニルガン議員と対峙した。
「ドドノ、一体こんな所で何をしている?君の公務には関係の無い場所だろ?」
「ひ、秘書に頼まれたんだ。次の議会に提出する法案の概要をまとめてデータ入力していた」
「秘書が君にそんな雑務を頼むのか?それにそんなことは自室のパソコンから行えばいい話だろうが。コンピューターが苦手な君がサーバー室なんかに何の用だ?」
「そ、それは…」
「連れていたSPは何処だ?中に居るのか?」
「むぅ…」
その頃室内の3人は、はちきれそうな緊張が走る中データダウンロードの完了を今か今かと待ち望んでいた。
「急げ、とにかく急ぐんだ!」
「あと6分!!」
「おいおいおい、今のご時勢でダウンロードに10分も掛かるデータってどんな代物だよ?高画質の無料エロ動画だって5分は掛からないぜ?」
部屋の外ではドドノ議員とニルガン議員の押し問答が続いていた。
「中を見せろ!」
「何だと?無礼なことを言うな!私が何かを隠しているとでも言いたいのか?」
「あと4分!」
「やましいことが無いなら問題無いだろ?」
「お前こそ、何か私に隠れてやましい事をしているのではないか?」
「あと2分!」
「…やはり気付いていたな?貴様。時間稼ぎはそこまでだ!今すぐそこをどけドドノ!警備の者を呼ぶぞ!」
(クッソォ!!!)
ニルガン議員は返す言葉を失ったドドノ議員を押しのけコンピューター室のドアを開けた。
「完了!!」
ニルガン議員の視線が3人に届くかどうかの瀬戸際、データのダウンロードが完了したことを確認したニーラはつなげていたケーブルを抜き取りパソコンの蓋を閉じた。
「おい!!貴様等そこで何をしている?」
たった1つの出入り口に立ちはだかるニルガン議員はコンピューターを囲むエヴァンス、ハッカー、タッカーの姿を見付け3人を睨み付けた。
追い詰められ立ち尽くす3人。
「おい!政府高官専用のコンピューター室の前で何をしているのかと聞いているんだ!」
3人はその場に硬直状態となっていた。
すると突然ドドノ議員がニルガン議員に背後から声を掛けた。
「おい!」
「!?」
”バキッ”
「ぐぁっ!!!」




