黒幕、ニルガンの登場
一向の車が政府本部前に到着すると、中から出て来たのはドドノ議員、そして黒ずくめのスーツ姿にサングラス、イヤフォンを携えSPに扮していたエヴァンス、ハッカー、そしてタッカーだった。
正面門入り口に向かって行く一向、門番と思しき軍人が声を掛けてきた。
「ドドノ議員、お疲れ様です!本日は非番では?」
「ちょっとやり残したことがあってな。直ぐに帰る」
「…後ろの3人は?」
「あぁ私営SPだ。すぐ終わる仕事なんでな。わざわざ秘書にスケジューリングをさせるのも面倒だったんだ」
「何か身分を証明出来る物は?」
「あー、必要ない。個人契約のSPなんだ」
「そうはいきません、規則です!その3人に議員が脅されてる可能性も考えなければなりませんので」
「…」
ドドノ議員の顔を使い素通りを目論んでいた4人の思惑は見事に打ち砕かれた。
そして3人は徐に腰元から手帳型の身分証明書を警備兵に差し出した。
「確認します」
警備兵が3人分の身分証明書を受け取るとタッカーとハッカーがひそひそと話し始めた。
(おい、大丈夫なんだろうな?)
(大丈夫、なはずよ)
(はず?お前が用意した偽装証明書がバレたら終わりだぞ!)
(そうならないように祈ってて!)
手元のコンピューターを操作し照合を図る警備兵。
4人は固唾を飲んでその様子を見守る。
すると警備兵は一切表情を変えないまま顔を上げ3人を見た。
(バ、バレたか?)
4人は手の平に大量の汗を握り警備兵の次のひと言を待ち構えた。
「…確認しました。それでは1日パスを作成します。お3人様はこの書類に必要事項を記入して下さい」
4人は今にも崩れ落ちそうな程ホッと肩を撫で下ろした。
そして警備兵の指示通り書類に必要事項を記入した後3人は本部内の通行パスを受け取った。
(ハッカー、よくやった)
(どうも。権力議員のアクセス権様様よ)
4人はそのまま本部内の周囲を警戒しながら一目散にコンピューター室へと歩いて行く。
すると突然ドドノ議員が立ち止まった。
「議員?どうしました?…っは!」
ドドノ議員が睨みつける先にはある男が佇んでいた。高い身長と白髪、細い体つきながらも落ち着きの物腰を見せる男、革命党2大議員にして今回の事件黒幕であるニルガン議員の姿がそこにはあった。
「…ニルガン!」
「やぁドドノ議員。本日は非番じゃなかったかね?」
(おい。このモヤシオヤジがニルガンか?)
(えぇそうよ。革命党2大議員のニルガン=ボンズよ)
ドドノは冷静な演技で言葉を返す。
「あぁ。ちょっとやり残した仕事があってな」
「ご苦労な事だな。少しは体を休めたらどうだ?」
「気遣い感謝するよ。だが心配ない。失礼するよ」
一向がニルガンの横を通り過ぎ去ろうとすると、ニルガンは振り返る声を掛ける。
「見慣れないSPだな?」
「!!」
意表を突かれ立ち止まる4人。
しかしドドノは有権政治家としての貫禄を保ったまま振り返り冷静な表情を見せていた。
「私営SPだ。何か問題が?」
「…いや。何でもない」
「では失礼する」
再び歩みを進める4人。
背を向け去って行く一行をニルガン議員は訝しい目で睨み続けていた。
「気付いたか…?」