生か死か、失敗か成功か
高級車に乗って現れたドドノ議員、その様子を察知したエヴァンス、ミトン、運び屋のタッカーもコテージから出て来た。
タッカーが威勢良く第一声を放つ。
「よーし!そんじゃひとつ世界の中心にトロイの木馬をブチかましてやるとするかぁ~!」
「いいか?戦闘はあくまで最悪の最終手段だ。そうなればこちらに勝ち目はほぼ無いことを忘れるな?」
「わ~かってるってぇ。俺は運び屋だ。銃ブッ放すのは本業じゃねぇからな」
そんな中、5人の中で異質な距離感を見せるミトンとドドノ。
他の3人もその空気を悟りそれぞれの様子に目配せをする。
気まずい雰囲気の中、ドドノが重い口を開く。
「ミトン……。許してくれとは言わない。だがこれが最後になるかもしれない、だから言わせてくれ。愛している」
「…」
ミトンは俯いたまま暗い表情を浮かべていた。
このまま口を閉ざしたままかと誰もが思っていた最中、ミトンは口を開いた。
「必ず生きて帰って来て!アンタには一生かけて償ってもらうから」
「!!」
ドドノ議員は驚いた様子を見せた。
縁を含め全てのものを断ち切られたと思っていたドドノにとって、娘のミトンが発した言葉はとても意外なものだった。
許された訳ではないことは分かっていた、しかしその言葉の裏には親子として共にこれからを紡ぐことを受け入れたミトンの気持ちが隠れているのが分かった
。”生きて帰って来て”、その言葉はミトンが娘として父を気遣った言葉でもあり、今はそれが精一杯の言葉でもあった。
ドドノの表情は歓喜に歪み、察した他の面々もどこか微笑ましい表情を浮かべていた。
「よし、それでは作戦開始だ!」
エヴァンスの号令を元に決意を固めた表情を見せる面々。
待機となったミトン以外のメンバー4人はドドノ議員の車に乗り込んだ。
気合いと嬉しさを混ぜた様な表情を見せるドドノがシートベルトを締めると運び屋タッカーが茶々を入れる。
「よぉ議員さん、随分と嬉しそうじゃねぇか?こりゃ何が何でも作戦を成功させねぇといけねぇよなぁ。成功報酬は弾んでくれんだろ?」
「この作戦が成功するということはつまり革命党の消滅と私の政治生命の終わりを意味する。残った結末でどれ程君達に礼を弾めるかは分からないが、誠意は見せるつもりだ」
「そうか。それなら金を用意出来ない場合はミトンちゃんを俺にくれるってのはどうだ?勿論、アンタのことは敬意を込めて”お義父さん”って呼ばせてもらうぜ?」
「タッカー君と言ったね?私が君を撃ち殺す前にその要望は取り下げた方がいい。政治家というのは辞職しても色々と人脈は利くものだからね」
「あーりゃまぁ怖い怖い。そんじゃせめてこのイカす車だけは俺が頂くからな?」
そしてドドノ議員は車のエンジンを掛けミトンの存在に後ろ髪を引かれながらも車を走り出させるのだった。