真実への入り口、秘密を握る男ドドノ=ババン
3人は突然の来訪者として現れた男に目を奪われていた。
「ド…ドドノ議員!?」
正面門の監視モニタに映っていたのは恰幅のいい体を質のいいスーツに身を包み、七三分けの髪型を宿す風格のある男。
国情の実権を握る革命党2大議員の1人ドドノ=ババン議員だった。
3人は混乱に揺れる。
「ドッ、ドドノ議員!?何でコイツがこんな所に!?」
「頭自ら討伐にでも来たかい?エヴァンス、武器をよこしな!死なばもろとも、最後まで応戦するよ!」
「待て!!」
「!?」
冷静に映像を眺めるエヴァンスが2人を制止し状況を分析する。
「様子がおかしい…」
「?」
エヴァンスの言う通り、モニタに映るドドノ議員はどこか挙動不審な様子を見せていた。
しかしもっと訝しむべき点をエヴァンスは指摘する。
「…1人だ。SPを従えてない。車も自分で運転して来たみたいだ。あり得ない…」
「へ…?ほ、本当だ。一体どうしたってんだ?」
状況を掴めないエヴァンスであったが、ひとまず想定外の来訪に応答する決断を下した。
「こ、こちら看守のエヴァンスです。モニタ越しに失礼致します。革命党のドドノ議員とお見受け致しますが、ご用件は…?」
エヴァンスの声に反応したドドノ議員はカメラに向かってどこかせかすように喋り掛けた。
「中で話す。取り合えず入れてくれ!」
「お1人ですか?SPは?」
「個人的な用事で来た。スケジュールに無い行動だ。秘密裏に動きたい。急いでくれ!」
3人は互いに表情を見合わせ困惑を浮かべていたが、やがてアイコンタクトの元、互いの通わせた。
エヴァンスが応答する。
「…迎えに上がります。門を開けますので中に入ったら閉めて真っ直ぐ建物の方向に歩いて来て下さい」
そう言いエヴァンスは通信を切った。
急ぎ足で監視室を出て1人ドドノ議員を迎えに赴く。
やがて2人は建物の入り口で合流した。
「議員!」
エヴァンスの目の前に姿を見せたドドノ議員は風格こそ保ってはいたものの、やはりどこか差し迫った様な表情を見せていた。
「議員、看守のエヴァンスと申します。本日は何用でしょうか?何故貴方が1人でこんな所へ?」
「どこか落ち着ける場所はないか?」
「えぇ、監視室へ案内致します。こちらへ」
そして2人は足早に監視室へと辿り着き部屋のドアを閉めた。
中で待っていたブラックとイロヨクもその男ドドノ=ババン議員を始めて目の当たりにする。
「すみません議員、何も用意はありませんが」
「いや、構わん」
「それで、ご用件とは一体?」
「待て、この2人は何者だ?」
ドドノ議員はイロヨクとブラックを指し問い掛けた。
「看守のイロヨクと元マフィアのボス、ブラックです。この刑務所で政府の仕事を請け負ってました」
「そうか。信用出来るか?」
「えぇ…。一体何のことです?」
ドドノ議員は荒れる呼吸を整えながら用件を語り始めた。
「ここが襲撃に遭い、多くが死んだ上、数名の者が脱獄したと聞いた。本当か?間違い無いか?」
「え?えっ、えぇ」
「誰が死んだ?脱獄したのは何人だ?今もどこかで生きているのか?無事なのか?」
「ぎ、議員、落ち着いて下さい!」
「脱獄した女囚の中にオランダ系の小娘はいなかったか?18歳前後で目は青い。細身で身長は160cm程度。髪の色は黒。最近ここに収監された囚人だ!」
「…それって」
ドドノ議員の語りは止まる様子を見せない。
「出来るだけ詳しい状況を教えてくれ!脱獄した者達が何処に向かったのか、本当に心当たりはないのか?」
「え、えぇ。申し訳ありませんが、その後の消息は一切…」
「…そうか」
「しかし今回の捜査で政府本部はSHRT部隊を投入しました。彼等なら直ぐにでも見付けられるかと」
「それでは遅いのだ!それより先に見つけなければ!!」
「はぁ!?…どういうことですか?」
「捕まればまたここに戻される、そうすれば必ず殺される。いや、隊に捕まった段階で即座に暗殺されるかもしれないんだ!」
「えっ、あの…何を仰っているのですか?」
「………」
ドドノ議員は何かをためらい、強く思い詰めた様な沈黙を経てゆっくりと口を開いた。
「…君達。これから話す事は絶対に外に漏らさないでほしい」
「…?」
そして静まり返る部屋の中、ドドノ議員の口から衝撃の真実が語られ始めたのだった。