死刑宣告
失意の表情を浮かべたまま刑務所の監視室へと戻ったエヴァンス。
その様子を察したイロヨクとブラックは声を掛けられずにいた。
思い足取りで操作台の無線を手に取りスラムに潜伏する2人に連絡を繋ぐエヴァンス。
「はい!こちらハッカー。エヴァンス?」
「エヴァンス!?」
隣に座るミトンも強く反応を示す。
「…あぁ。そちらの状況はどうだ?」
「今のところは…。どっちはどう?」
「…」
エヴァンスは低い声のまま全てを正直に告げたSHRT部隊が導入されたこと、自身が連行される寸前であること、海外逃亡への手筈を失ったこと、今の時点では一切の希望を見出せないこと。
「そんな…。もう駄目なの?」
「…残酷だが、今はひたすら逃げ隠れするしかない。今ここで捕まれば2人共国家反逆罪で即死刑台に登ることになる。そうでなくても政府の手に落ちれば闇に乗じて暗殺される可能性も極めて高い」
「…わ、私達がそのSHRTに捕まってしまう可能性は?」
「…更に高い。いや、ほぼ100%捕まるだろう。世界最高の専門部隊だ」
「…」
ハッカーは手に無線機を握ったままその腕を地面に落としてしまった。
「で、でも…まだ捕まるって決まった訳じゃ…。とにかく時間を稼げば何か希望は見付かるかもしれないんでしょ?」
ハッカーが持つ無線機から無情な声が漏れる。
「…お前達、何か言い残しておくことは無いか?」
「!!」
突然ハッカーは無線のスイッチを切った。
”これ以上聞いていたくない”そんな怒りと投げやりが織り交ざった表情を浮かべていた。
一方的に無線を切られたエヴァンス達は監視室内で絶望を極めていた。
特にエヴァンスは2人に対しその口から死刑宣告をしなければならなかった状況に身を引き裂かれる思いのまま顔を上げられずにいた。
やがてブラックが重い口を開く。
「やれやれ。今回ばっかりは詰みかもねぇ…」
イロヨクがぼやく。
「…ちっくしょぉぉ。どうしてこんなことになっちまったんだよぉ…。うぅ…うぅぅ。こんなことなら派手に女子更衣室でも覗いてパクられておくんだったぜぇ。たとえ囚人になっちまったって、ここよりはマシだろうぜぇ…」
するとイロヨクが徐に監視室を去ろうとした。
「どこへ行く?」
「殺されちまう前に楽しむのさぁ。もう外出制限なんて糞食らえだ。いい店知ってるぜ。一緒に行くか?」
「イロヨク…落ち着け」
イロヨクの温度が上がる。
「おいおい、まさか”希望を捨てるな”なんて虫唾の走る様なキレイごとは言わねぇよな?元SHRTの隊長様だってそのザマじゃねぇか」
「止めないか、見苦しいよ」
「うるせぇ!黙ってろ!ほっといてくれ!もうどうでもいいんだよ!」
すると突然、監視室に来訪者を告げるブザーが再び鳴り響いた。
3人はすぐに正面門入り口を映す監視モニタに視線を移す。
すると、
「!!!」
「えっ…?何で!!?」
「この男はぁ…。どうしてここに?」
3人は一様に目を見張った。
その監視モニタには想定を通り越したとんでもない人物が立ち映っていた。
「ド…ドドノ議員…!!?」




